「勝てる野球の統計学―セイバーメトリクス」鳥越 規央
2017/05/17公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(86点)
要約と感想レビュー
無死満塁が最も多くの得点が期待できる
コンピュータがプロ棋士に勝ってしまう・・AI、ビッグデータ解析が人の感覚を超えてしまう時代になりました。この本では、野球のデータ分析から多くの定説が修正の必要があるとしています。
まず、「"無死満塁"からは得点が入りにくい」という通説がありますが、データからは"無死満塁"が最も多くの得点が期待できるという。だから、二三塁から敬遠して満塁策を取ることがありますが、これは確率からすると得点期待値が上がり、敬遠の意味がないのです。満塁策は、次の打者の打率、出塁率が低い場合のみ有効な作戦なのです。
得点期待値は「あるアウトカウント、走者状況が出現した後、イニングが終了するまでに何点入ったか」(p4)
送りバントは、得点期待値を下げる
同じように、送りバントは、得点期待値を下げることから、あまり意味がないとしています。送りバントで進塁させるよりも普通に打ったほうが、得点期待値が高いのです。送りバントが意味を持つのは、次の1点で勝敗が決まるという場合のみです。
得点との相関の強い指標については、データ分析の結果から打率よりも出塁率のほうが得点との相関が強いという。レギュラーを決める場合、打率よりも出塁率を重視する監督が増えているというのです。
"無死一塁"(0.821)から"1死二塁"(0.687)、"1死一塁"(0.499)から"2死二塁"(0.321)・・どの状況をみても、送りバントを成功させた後の得点期待値が下がっており、アウトカウントを増やすことは攻撃側にとってリスクである・・(p7)
データ分析が野球を変える
数値で評価しにくい投手や野手もデータで評価しようとする執念に感動しました。特に生活がかかっているプロならば、事実が反映された数字で評価されたいはずですね。これからは画像処理も含めてどんどん野球のデータ分析が進歩して野球を変えていくのでしょう。
アメリカでは打率よりも「得点能力」を評価する指標OPS(On-base Plus Slugging)=(出塁率)+(長打率)が重要視されているようですので、今後は三冠王(打率、本塁打、打点)の指標も変わっていくのかもしれませんね。鳥越さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・得点期待値からプレーの得点価値を算出・・打席前"無死一塁"(0.821)⇒二塁打後"無死二三塁"(1.974)・・差分は1.974-0.821=1.153(p11)
・フィールド内に飛んだ打球が安打になるかどうかは、多分に運の要素や守備力、球場の形状などが絡んでいるとされている(p51)
・ゾーンデータを用いて「守備範囲」の算出・・ゾーンデータとは「どのような打球がどの位置に飛び、それがどのように処理されたか」を詳細に表したものである(p65)
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【私の評価】★★★★☆(86点)
目次
1 "無死満塁"は点が入りにくいのか?―野球のセオリーを検証する
2 ホームランバッターか三割打者か?―「全員イチロー」vs「全員バレンティン」
3 防御率だけでは見えない名投手の条件―失点に占める投手の責任の割合
4 イメージ先行で語られがちな「守備の達人」―失策が多くても守備範囲は広かった
5 真のMVPは誰か?―勝利への貢献度を数字で表す
著者経歴
鳥越規央(とりごえのりお)・・・1969年生まれ。統計学者。江戸川大学社会学部経営社会学科客員教授。筑波大学大学院数学研究科修了。博士(理学)
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