【書評】「人生の経営戦略―自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20」山口 周
2025/05/16公開 更新

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【私の評価】★★★★☆(87点)
要約と感想レビュー
自分の人生をマネジメントしよう
企業の経営戦略のフレームワークで、自分の人生をマネジメントしようという一冊です。自分の人生において4つの資本に注目しています。時間資本、人的資本、社会資本、金融資本です。時間資本は、時間のこと。人的資本とは、自分の知識・スキルです。社会資本は、信頼や人脈です。そして金融資本は、お金のことです。
まず、20代で社会に出たとき、私たちは時間資本しか持っていません。この時間資本を、学習や仕事に配分して、知識・経験・スキルといった人的資本に転換するのです。人的資本が積み上がって、実際によい仕事をしていると「あの人に仕事を頼みたい」と思われるようになれば、社会資本を作ったことになります。
この社会資本ができれば、仕事が自然と集まってくるようになり、金融資本を生み出してくれます。著者が強調するのは、時間資本を使って、いきなり金融資本を作ろうとしても難しいということです。もちろん、簡単に稼げる仕事があるかもしれませんが、簡単に稼げる仕事は、すぐにだめになるのです。
金融資本を生み出すのは信用・評判・ネットワークといった社会資本であり、社会資本の裏打ちのないままに直接的に金融資本を増やそうとするのは非常に効率が悪い(p57)
自分にとって大事なものを大事にする
そして自分の人生の目標は、「自分らしいと思える人生と、経済的・社会的にも安定した人生を両立すること」だとしています。つまり、仕事も大切だし、自分らしさも大切ということです。
なぜかといえば、著者は仕事においては、設定した目標をことごとく実現してきました。ところが本人は、全くハッピーではなかったというのです。著者は今にして思えば、当時、自分が設定した目標は、自分自身が心から望んだものではなく、周囲の人が成功と羨望するようなものであったと分析しているのです。
そんな時、著者は、ふと「海のそばに住む」ことを思いつき、神奈川県の葉山に引っ越してしまいます。仕事の時間も減らし、家族との時間を増やしていったという。著者が言いたいことは、「自分にとって本当に大事なもの」「自分が本当に実現したいこと」を意識するということです。しかし、これが難しいのです。
「正しい戦略」は「正しい目標」が大前提(p50)
自分への投資が一番の投資
著者は自分の人生の意思決定において、論理的に考え抜くことを推奨しています。その一方で、短期的な視点で考えると不合理に見えるのに、長期的に考えると合理的なことがあるとも言っています。
例えば、建築家の安藤忠雄は、プロボクサーとして挫折した後、世界中の歴史的な名建築を見て回っています。短期的に見れば、ボクサー崩れが世界旅行をして何の意味があるのかと言いたくなる人もいるでしょう。しかし、長期的には、素人の建築家として差別化するためにも、世界のベストプラクティスを見るという長期的に価値さることだったのです。
何も持っていない20代は、お金を貯めるよりも自分へ投資するほうが長期的に大きいリターンが期待できます。また、20代は敢えて的を絞らずに、いろんなことをやってみるのも、長期的には投資として合理的な戦略なのです。
「短期の合理の罠」に陥っているのは、「普通の生き方」にとらわれてしまっている私たち大多数の方なのかもしれません(p89)
楽しめるものを仕事として選ぼう
40代になった著者は、ボストン・コンサルティングで働きながら、自分の時間を切り売りするというビジネスモデルに限界を感じていたという。そこで、著者が考えたのは、「自分以外の何かに働いてもらう」こと。そこでコンサルの時間を半分にして、著作やコンテンツ制作に時間を投資したというのです。
著者は才能より「長く続けられるかどうか」が大事であり、楽しめるものを仕事として選ぼうと提案していますので、コンテンツ制作が著者に合っていたのでしょう。
合理的な判断も大事ですが、自分の好き嫌いで判断することも大事だと感じました。山口さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・「打率は気にせず、とにかく打席に立って振ることが重要だ」ということを指摘してきましたが、実は「失敗し続ける」ことは、意外と難しい(p232)
・「成功したから多くを生み出した」のではなく「多く生み出したから成功した」(p224)
・ベンチマーキング・・行き詰まったら素直に真似てみる(p288)
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山口 周 (著)、ダイヤモンド社
【私の評価】★★★★☆(87点)
目次
第0章 なぜ、いま「人生の経営戦略」なのか?
第1章 目標設定について
第2章 長期計画について
第3章 職業選択について
第4章 選択と意思決定について
第5章 学習と成長について
著者経歴
山口周(やまぐち しゅう)・・・1970年東京都生まれ。独立研究者、著作家、パブリックスピーカー。ライプニッツ代表。 慶應義塾大学文学部哲学科卒業、同大学院文学研究科修了。電通、ボストン・コンサルティング・グループ等で戦略策定、文化政策、組織開発などに従事。
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