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「武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50」山口 周

2024/08/28公開 更新
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「武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50」山口 周


【私の評価】★★★★☆(87点)


要約と感想レビュー

哲学をコンサルで活用

コンサルタントが、仕事で使える哲学の考え方を教えてくれる一冊です。そもそも哲学は面白くない面もあるので、著者が自分の経験から、本当に役にたったというものだけ紹介するという内容です。


例えば、経営学で、全員一致の意思決定は危険ないと言われますが、ジョン・スチュアート・ミルは、あえて難癖を付ける悪魔の代弁者の必要性を説いています。


また、コンサルタントが使う対立解消図(Conflict Resolution Diagram)は、AとBの対立する矛盾を解決するCを見出すという意味で弁証法を使っているように見えます。


労務問題でも、日本では2000年頃、成果主義を導入したために業績を悪化させる会社が多かったのですが、心理学者からは報酬=アメは、むしろ人や組織の創造性を破壊してしまうと報告されていたのです。


人に創造性を発揮させようとした場合、報酬は効果がないどころではなく、・・むしろ逆効果になる(p141)

分業体制による思考停止

組織の問題については、ナチスを分析したハンナ・アーレントを紹介しています。ハンナ・アーレントは、ナチスによるホロコーストは、官僚的な分業体制によって可能となったと分析しています。ヒトラーやスターリンや毛沢東やポル・ポトは悪事を指示しますが、そのリーダーに従うことを選んだのは、普通の凡人だったのです。


「理想の社会を目指した運動」は、悲惨な結末を迎えていますが、地獄への道は善意のように見えるもので敷き詰められているのです。自分で考えることを放棄してしまった人は、善意のように見える説明や指示を無批判に受け入れ、分業体制によって自分の役割を行うことで、システムとして悪事を実行していったのです。


悪事は、思考停止した「凡人」によってなされる(ハンナ・アーレント)(p101)

人の嫉妬や劣等感

人間の心の問題については、「弱い立場にあるものが、強者に対して抱く嫉妬、怨恨、憎悪、劣等感などのおり混ざった感情」としてルサンチマンを紹介しています。ルサンチマンを抱えた人は、劣等感に根ざした価値判断の主張にすがりついてしまうという。


例えば、聖書の「貧しい人は幸いである」やマルクスが「共産党宣言」で説いた「労働者は資本家よりも優れている」といった主張です。つまり、権威に盲従する人々は、上のものには媚びへつらい、下のものには威張るという性格を持っているというのです。こうした人間の心の弱さを利用したものに洗脳があります。


洗脳については、中国共産党が捕虜となった米兵に「共産主義にも良い点はある」というメモを書かせていたという。これだけのことで、米兵捕虜の多くが共産主義に寝返ってしまったのです。これは、事実と認知のあいだで発生する不協和音を解消させるために、認知を改める特徴を使っているという。


つまり、「共産主義にも良い点はある」と書いた事実と、反共という認知の不協和音を、認知を修正することで合理化しようとしたと理解できるのです。


人間は「合理的な生き物」なのではなく、後から「合理化する生き物」なのだ、というのがフェスティンガーの答えです(p118)

先人の知恵を学ぶ

私は理系の人間なので、こうした哲学や考え方の説明を受けると、整理していくと真理は思ったより数は少ないのかもしれないと感じました。コンサルや文系の人は、過去の人の考え方にちょっと変わった名前をつけて、自分の世代の人にわかりやすく周知していることもあるのです。


そうであれば、先人の知恵を学ばないのは損ということになります。先人の良い点を取り入れて、今の時代に活かしていきたいものです。山口 さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・サルトルは、私たちは「自分の行動」に責任があるだけでなく、この世界にも責任があると主張します・・例に挙げているのは戦争です(p98)


・ゲーム理論・・「いい奴だけど、売られたケンカは買う」という最強の戦略(p190)


・権力格差・・機長が操縦桿を握っている時の方が、はるかに墜落事故が起こりやすいことがわかっています(p196)


・行動の是正を迫るような圧力をかけたい場合、実際の監視よりも「監視されている」と本人に感じさせるような仕組みの構築が重要(p273)


▼引用は、この本からです
「武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50」山口 周
山口 周 、KADOKAWA


【私の評価】★★★★☆(87点)


目次

第1章 「人」に関するキーコンセプト
 「なぜ、この人はこんなことをするのか」を考えるために
第2章 「組織」に関するキーコンセプト
「なぜ、この組織は変われないのか」を考えるために
第3章 「社会」に関するキーコンセプト
「いま、なにが起きているのか」を理解するために
第4章 「思考」に関するキーコンセプト
よくある「思考の落とし穴」に落ちないために



著者経歴

山口周(やまぐち しゅう)・・・・1970年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科卒業、同大学院文学研究科美学美術史学専攻修士課程修了。電通、ボストン・コンサルティング・グループ等を経て、組織開発・人材育成を専門とするコーン・フェリー・ヘイグループに参画。同社のシニア・クライアント・パートナー。専門はイノベーション、組織開発、人材/リーダーシップ育成。株式会社モバイルファクトリー社外取締役。一橋大学経営管理研究科非常勤講師


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