「破天荒ドクター 常識の枠を超え、突き抜ける! Dr. Balaの56の流儀」大村和弘
2024/07/17公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★★(92点)
要約と感想レビュー
内視鏡を使った鼻腔手術のエキスパート
世の中には、波風立てず従来通り淡々と仕事を進める人と、あるべき姿を追い求めてより良い未来を作ろうと、周囲から何と言われようと仕事を進める人がいます。この本の著者は、破天荒ドクターというくらいですから後者のようです。
著者は最高難度といわれる内視鏡を使った鼻腔腫瘍の手術のエキスパートです。手術時間は6時間から10時間、最長でも13時間に及ぶという。その一方、ボランティアでアジアの医師たちと共同で医療活動を続けています。夏休みに1週間、自費でアジアに出かけ、現地の医師と情報交換することは、心躍る楽しい「趣味」のようなものだという。
著者は人生は舞台であり、他人からどう評価されるのではなく、自分で自分の人生を描くことを推奨しているのです。
人生は舞台である・・・「自分の人生の舞台をどんな物語にしたいか?」と物語を描くのだ(p31)
お金を払って講義を受けたいと思われる医師になる
著者が医療技術を上げたいと思ったのは、アジアで医療講習をしたときに、現地の医師がまったく聞いてくれなかった経験からです。国際協力とはいっても、アジアでは現地の医師に時給を払って講習を聞いてもらうということも行われていました。
著者はそうした風潮をよしとせず、「金は払わない。価値のある講演をする」と決めていましたが、現実には、価値ある講演と思ってもらえず、ろくに聞いてもらえなかったのです。普通の人はそこで心が折れてしまい、国際協力なんてやめてしまうかもしれません。
しかし著者は逆に、「お金を払って手術の講義を受けたいと思われる医師になること」を目標に頑張ることにしたのです。
僕の目標は・・日本中の他施設からお金を払って手術のレクチャーを受けたいと思われる医師になること(p119)
必ず否定されたり批判される
何か新しいことをすると、必ず壁にぶつかります。
例えば、新しい手術の方法を考案して周囲の医師に相談をすると、「伝統的にゆるされない」「前にやってうまくいかなかった」などと必ず否定されたり、批判されたという。ついには「大村は勝手なことをするから目を離すな」と言われたこともあるというのです。
また、著者が国際協力で現地で手術をしていると、日本のNGO団体の医師から、「手術するだけでは現地の医療レベルは上がらない。意味がない。邪道だよ」と叱責されたという。
ミャンマーで医療ボランティアをしていたときには、チームが語学学校に行っているときに、自分だけ現地のカフェで語学の勉強をしていたので、看護婦から「先生だけ遊んでいる」と村八分にされたという。
ただ、著者は自分で決めたことだからなのか、自分の性格なのか、より良い未来をイメージしているからなのか、決してめげることがないのです。
吉岡先生が講演で言っていた「いろいろなことが起こる。それでもやり続ける覚悟」という言葉を改めて思い出していた(p78)
「過酷」な仕事
著者は研修医時代は36時間働いて12時間休むような生活をしていたという。
また、医師となってからも月1回は学会に出席し、臨床の技術を磨くため病院に寝泊まりして、腕を磨いたというのです。そして、大きな手術の後は、麻酔から患者さんが目を覚ます朝方までは病院に残っているという。また、病理で検査の切り出しや、放射線治療の計画にも必ず同席するというのです。
このように基本的なことを妥協せずに行い、本当に「過酷」な仕事をしているのです。その根底には、「お金を払って手術の講義を受けたいと思われる医師になる」という目標があるように感じました。
人間はやり続けると慣れる・・・今の僕は"仕事の負荷"で「やるか、やらないか」を決めないようにしている(p50)
やっているうちに慣れる
どうしてそこまでできるんだ、という疑問があるかもしれません。著者は、飛び込んでみたからこそわかることがある。やっているうちに慣れると表現しています。つまり、やってみないとわからない。人の行きたがらないところへ行って、他の人の嫌がることをやってみると見える景色があるというのです。
慣れてくると、苦しいときに余裕をもって耐えられる。笑える。麻酔や機械や薬がなくてもなんとかなるのです。
著者は知覧の特攻平和会館で、少年兵と同じくらの覚悟をもって僕は人生を生きているだろうかと考えたと回想しています。いや、いや。あなたなら特攻ではなく、「私は正確に爆弾を落とせるので特攻は必要ありません」と主張するだろうと思いました。大村さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・平澤興先生の言葉「人生はにこにこ顔の命がけ」というものがある(p237)
・現地で揉めるのは現地の人とではなく日本人同士だ。その次に揉めるのは日本にいる事務局と現地の日本人(p78)
・人間は辛くなると誰か1人を攻撃して、その他でまとまる習性があると言われる(p77)
・リーダーはチームを円滑に回し、目的を実現するためであれば嫌われることを恐れてはいけない・・1人ででもやり続ける覚悟をもつ心が残る(p80)
【私の評価】★★★★★(92点)
目次
第1章 夢を描いて動く
第2章 動いて感じる
第3章 突き抜ける
第4章 挑戦を続ける
第5章 個の力を高める
第6章 人を笑顔にする
著者経歴
大村 和弘(おおむら かずひろ)・・・東京慈恵会医科大学 耳鼻咽喉科学教室 講師/ NPO Knot Asia 代表。内視鏡を使用した鼻副鼻腔腫瘍の手術を専門とする。自身で開発し世界に発表している術式は多数。日本国内では鼻副鼻腔腫瘍で困っている患者の最後の砦。趣味は国際医療協力と講演会。
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