「イギリスはおいしい」林 望
2013/05/06公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(76点)
要約と感想レビュー
以前読んだことがあった本ですが、再読。イギリスの料理はまずいというのが通説ですが、期待を裏切らないようです。イギリス人には料理のセンスがないのではなく、単に料理に興味がないのかもしれません。
だから林先生のお付き合いのあった先生たちは、料理を前にしても料理の話をするのではなく、アカデミックな専門の議論をしていくことが普通だったというのです。専門家の集まりでは、料理なんかに興味はないという雰囲気がイギリスにはあるということなのでしょう。
・朝食ならば、たいていバターを塗ったトーストの上に、マーマレードをのせる(薄く付けるのじゃないのだ。一かたまりずつのっけて食べるのである)。(p91)
料理はひどいとしても、大英帝国です。イギリス人は人間関係を大切にします。そして教養も。イギリス人は、親しさの度合いによって付き合いを変えるそうです。まずあまり親しくない人はDrinkといって、午後の一、二時間ほど、簡単なスナック類をつまみながら軽く飲んで会話してみる。もう少し親しくなると、Teaすなわちお茶を一緒に飲む。かなり親しくなると、ようやく食事に招くらしいのです。
ですから、料理よりも、食事をしながらの会話を楽しむのがレディース・アンド・ジェントルマンなのでしょう。料理はまずくても、イギリス人の特徴がそうさせているのです。その国というものを理解するのは、やはり実際に住んでみなくてはわからないのでしょう。また旅をしたくなってきました。
林さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・「野菜は茹でる」というのが、多くのイギリス人が素朴に信奉している料理の方法で・・・どの野菜も、延々と、呆れるほど長い時間をかけて(時には重曹入りの湯で)茹でる。(p18)
・イギリス留学に志すものは、すべからく、男女を問わず、みずから料理することを学んでからにしたほうがよい。(p33)
・イギリス中どこの町へ行っても必ずあるもの、それがこのフィッシュ・アンド・チップスと中華料理屋である(p74)
・スコンというイギリス独特のお菓子について・・・しいていえば、ケンタッキー・フライドチキンで売られている「ケンタッキー・なんとかビスケット」というものが大体イギリスのスコンに近いかと思われる(p132)
・イギリスには日本のようには病虫害が発生しないとみえて、庭のリンゴの木には一向に農薬なども撒かないようであるが、自然に花が咲き、実が熟して、風に吹かれては柔らかな芝生の上に落ちる。イギリス人たちは、これらの果実をとって、台所の隅の棚の上や、キャビネットの中に入れて、もうしばらく熟成を待つのである(p39)
・パブの支払いのやり方であるが、これは原則としてワリカンである・・・四人がパブにやってきたとする。この場合、仮にまずAが残りの三人の希望を聞き、四人を代表してカウンターの所まで買いに行ったとする。その場合、彼は四人分の代金をまとめて払ってしまうのである。すると、次にBが同じようにして四人分買ってくる。次にCが・・(p173)
【私の評価】★★★☆☆(76点)
目次
1 塩はふるふる野菜は茄でる
2 ワーズワースの林檎倉
3 魚よ、お前もか!
4 いもか、はたまたパンか
5 釣魚大全荘の昼下がり
6 いざ行け、パブへ!
7 料理をする人たち
著者経歴
林 望(はやし のぞむ)・・・1949年生まれ。作家・書誌学者。慶應義塾大学大学院博士課程満期退学。ケンブリッジ大学客員教授、東京藝術大学助教授などを歴任。
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