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「思考力の磨き方」日下 公人

2013/05/17公開 更新
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思考力の磨き方


【私の評価】★★★★☆(89点)


要約と感想レビュー

 「常識に囚われず、自分で考えよう!」という一冊でした。著者から問いかけられるのは、国会議員の数をどうやって削減するのか・・・地盤が弱い浦安に団地と学校を作るならどうするか・・・さて、あなたならどう考えますか?


・ある人は「国会議員の数が多すぎる・・」という・・現職議員に「この定数削減法案に賛成してください。その代わり、この次の総選挙に落選した現職には三億円の退職金をあげます」といえばよい。(p12)


 私が度胆を抜かれたのは、「イランがホルムズ海峡を封鎖するかも・・・」という情報に対して、「日本が津軽海峡を封鎖したら・・・」と思考が拡散していくことです。こうした自由な発想転換は、著者の膨大な知識の引出しと、いい(良い)加減さの中から生まれているように感じました。


・アメリカはいま、敵対するイランが中東産油国の輸送ルートであるホルムズ海峡を封鎖するのではないか、と考えている・・・「日本も津軽海峡を封鎖したらどうなるか」と考えるのが「拡散思考」である。(p178)


 税収を増やしたいとき、ヒト科の動物は増税をして、税収を減らします。ロシアのプーチンは、税収を増やすために、税率を一律個人13%、企業20%に減税しました。こうした思考のできる人が、社会を変えていくのでしょう。日下さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・TPPをめぐる国内の議論を見ていると、「TPPは日本を収奪しようというアメリカの陰謀だ」という意見も多い。だが国際的な常識からいえば、自国の利益のために他国に策略を仕掛けるのは当然で、それを「腹黒い」と感じる日本人がナイーブすぎる(p157)


・日本は貿易立国だと思っている人が多いようだが、実際はGDPに占める輸出額は低く、11.4%(2009年、以下同)にすぎない。アメリカは7.4%で、さらに低い。一方、ドイツは33.6%、製造業が壊滅したといわれるイギリスでさえ、16.3%である(p78)


・ある人は「財政赤字が大変だ」という。ならば三年間ほど、公共事業をやらなければよい。また、政府が抱えている道路やインフラを民間に売れば済む話・・・(p12)


・アメリカは日本にとって最もカントリーリスクの高い輸出先である。これまでも日本企業は何かと難癖をつけられ、訴えられては莫大な賠償金を絞り取られてきた・・輸出先として、こんな危ない国はない(p79)


・日本人のように「オレオレ詐欺」にひっかかるほど他人を信用する社会は、相手を疑わないから訴訟や喧嘩が少なく、弁護士や裁判所の世話になるようなことがほかの国よりもずっと少ない。アメリカやヨーロッパの人たちは、そういう平和な国づくりの秘密を知りたがっている(p11)


・日本に総合情報機関が必要なことは確かだが、そこで問題は、日本の役人が情報をすべて上にあげるか、ということである。日本の役人は情報を抱え込み、都合のいい情報だけ上に伝え、気に入った相手にしか流さない。(p153)


・一つの国について考えるとき、私は上に立つ指導層と庶民とを分けて考える・・・庶民はどうかという目で見ていくと、これは中長期の予測になる。庶民は急に変わらないからである(p94)


・「仮定の話にはお答えできません」痛いところを突かれてこう答えるのは、たいていお偉方か学者である。(p168)


▼引用は下記の書籍からです。
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【私の評価】★★★★☆(89点)



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目次

第1章 「脱・新聞」の考え方
第2章 アイデアの湧く頭のつくり方
第3章 「アナリシス」より「アナロジー」の時代
第4章 「中流」を見れば世界が分かる
第5章 「優位戦」を戦うために
第6章 思考実験としての「核」論


著者経歴

 日下 公人(くさか きみんど)・・・1930年生まれ。日本長期信用銀行取締役を経て、ソフト化経済センター専務理事。多摩大学教授、東京財団会長などを歴任。


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