【書評】「DXで経営戦略を仕組み化する技術 AI・デジタル時代の成長ロードマップ 」田村 昇平
2026/02/16公開 更新
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【私の評価】★★★★☆(89点)
要約と感想レビュー
DXの失敗パターン
ITやDX,AI経営戦略を助言するコンサルタントは、企業にどのようなアドバイスをしているのでしょうか?
著者は、企業のDXプロジェクトを外部PMO(プロジェクト事務局)として支えてきました。著者が経験した失敗パターンを見ていきましょう。
まず、社内だけでDX戦略を考えると、無難でやさしい改善だけの内容になってしまう傾向があります。一方、社外からIT部門長を採用してみると、業務への理解が浅いために、大方針だけ決めて、具体案には現場に丸投げとなり、現場との協力関係がくずれることがあるという。
次に、DXプロジェクトを進めていくと、現場部門のプロジェクトマネジャーがポンコツでうまくいかないことがあるという。つまり、DXに本気でない各部門は、「エース」を出さないのです。
こうした失敗を回避するためにも、DX戦略は、経営者とIT部門長と社外コンサルタントで作らなくてはならないと著者は提言しています。つまり、DX戦略はボトムアップではなく、「経営者の意思」として人も金も経営戦略の中心として作られなくてはならないのです。
DeNAの南場智子会長・・DeNAはAIにオールインします・・現在3000人で運営している事業を、AIの活用によって1500人で回せるようにし、浮いた1500人をすべて新規事業の創出に振り向ける(p124)
DX戦略を作る
DX戦略を実際に作ってみましょう。
まず、過去のDX戦略を振り返ります。どのような成果があったのか?失敗した場合は、どこでつまづいたのか?この評価が、現時点での実力です。
そして現在の業務システムの現状を、一枚の紙にまとめます。取引先とシステム、ExcelやAccessのようなソフト、クラウドサービス、手入力、メール、FAX、電話確認など、一連の業務を見える化するのです。全体図を眺めると、次々と改善アイデアが浮かんでくるという。
こうしたアイデアをブレインストーミングで出し切ります。案A,案B,案Cなど解決策を「複数」出して、期待効果、コスト、実行容易性、リスク、持続性などの評価軸を決めて、絞り込んでいくのです。
例えば、営業部門などまったくデジタル化されていないのであれば、営業支援システム(SFA)を導入するだけでも大きな一歩となるでしょう。
こうした複数の案の中から、大きな改革を伴う案が選ばれた場合、必ず「抵抗勢力」が現れます。えば、FAXを使っている場合、アプリで入力してもらえばいいのに、FAXで受信した紙をOCRで読み取ればいいじゃないかと「抵抗勢力」は主張するのです。
ソフトウエアはあくまでも道具であり、全体最適の「未来」をイメージして、そこから逆算してどんな道具を導入するのか決めるバックキャスト思考が大切だと著者は強調するのです。
個別最適・・各部門でそれぞれシステムが導入され、運用も確立されると、その業務と組織が「聖域化」され、下手に変えることもできなくなってしまいます(p27)
DX戦略を実行する
DX戦略を実行しようとしたときに、問題となるのは人材の不足です。現在のIT部門は現状のシステムの維持で手一杯という企業が多いのです。そうした中で、新たに社長の方針によりDX戦略を実施していくとしても、抵抗が大きいのは当然でしょう。
著者の提案は「攻めのIT」としてDX業務にIT部門の人をシフトさせます。ただ、「守りのIT」として引き続き保守や運営を任せる人もIT部門に残すのです。
ただし、「守りのIT」として残った人は、マニュアル化して標準化と省力化を進め、残った人だけで回る仕組みを作ってもらいます。実質的な人員削減をDX戦略の中で強制することで、IT部門のマニュアル化、効率化が実現できるわけです。
DX戦略の実行にあたっては、プロジェクトマネジャーは現場部門から出してもらい、IT部門は「PMO(プロジェクト事務局)」としてサポートします。やはり現場を知っているのは、現場部門だからです。
ちなみに著者は、外部PMOはDXを断行するための「汚れ役」を担えると必要性をPRしています。
外務PMO(プロジェクト事務局)とともに働くこと自体が、若手社員にとって最高のOJTになります(p301)
ベストプラクティスを目指す
日本では情報を郵送したりファックスしたり、工程表をエクセルで作っているような組織が、まだたくさんあるようです。オンラインに置き換えたり、パッケージ・ソフトウェアを採用すれば、すぐにベストプラクティスに近づくことができるのです。
具体例も多くIT部門をどうにかしたいと思っている人には最良の一冊ではないでしょうか。田村さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・アマゾンのDX・・見えないDX・販売予測や在庫配置、配送ルートの最適化などをデータに基づいて判断・・購買・取引先管理の自動化・・倉庫オペレーションの自動化(p145)
・ソフトバンクグループでは2023年から「生成AI活用コンテスト」を開催しています・・優勝賞金だけで、なと「1000万円」です(p42)
・生成AI・・メインでは「ChatGPT」と「Gemini」を使い分け、最新のトレンドやリアルな口コミを拾うには、Xを参照する「Grok」を利用・・長文執筆のときには「Claude」が欠かせず、大量の資料を読み込む際には「NotebookLM」を活用しています(p39)
・ノーコードツール・・・現場のユーザーは、システム開発をしたいわけではない・・・「チーム」として機能させる・・必要に応じて、実装をIT部門や外部エンジニアが担うことも(p199)
▼引用は、この本からです

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田村 昇平 (著)、技術評論社
【私の評価】★★★★☆(89点】
目次
第1章 DX戦略こそ最強の経営戦略
第2章 DX戦略の策定
第3章 DXグランドデザイン
第4章 DX戦略の組織設計
第5章 DXで成長を仕組み化する
著者経歴
田村 昇平(たむら しょうへい)・・・情シスコンサルティング株式会社 代表取締役。情報システム部門(情シス)を起点に、経営戦略とDXを統合するコンサルタント。システム開発を10年、ユーザー側のITプロジェクト支援を13年。ベンダーとユーザー、双方の立場を経て独立。これまで30社以上、100を超えるプロジェクトに携わる。近年は、現場主導のDXが行き詰まる企業が多い現実を踏まえ、「経営主導」への転換を提唱。トップダウンでDX戦略を策定し、実行可能な形で「仕組み化」する支援を行っている。
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