【書評】「1メッセージ 究極にシンプルな伝え方」杉野幹人
2025/09/01公開 更新

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【私の評価】★★★★☆(84点)
要約と感想レビュー
1メッセージとは
著者はA.T.カーニーに転職して、戦略コンサルとして修行中に、上司から「1メッセージにしろ」と言われて、ショックで吐き気がしたという。1メッセージとは、お客様の一番大事な論点に対して自分の答えを1つに絞って言葉にしたものです。
1メッセージの反対は、「それにはリスクがある」というような0メッセージです。なぜ、0メッセージかといえば、リスクがあるのは当然なので「それにはリスクがある」は、なんの意味もないからです。
例えば、「トランプを1枚引くと、1から13までのどれかが出る」は当たりまえなので、当たり前すぎて意味がないのと同じことです。
「1メッセージにしろ」これは、戦略コンサルで、新人たちがもっとも受かるダメ出しである(p2)
0メッセージとは
ところが、普通の会社では、そうした0メッセージがまかり通っています。なぜでしょうか?
理由はいろいろあるでしょう。「あのとき自分は言ったのに」という予防線を張りたいから。発言することで目立ちたいから。イライラしてたから。面倒で、興味がないから。
著者が「それにはリスクがある」という人に「では、あなたは反対なの?」と問いかけると、「いや、反対しているわけではなく、気になった点を共有したくて・・」と返答したりするという。
私の経験でも、後で「自分の言ったとおりだ」としたり顔で評論したいのか、できない理由を羅列するのが得意な人が多いのです。しかし、それでは戦略コンサルはだめなのです。
「それにはリスクがある」・・0メッセージの多くは、評論や感想だ(p25)
1メッセージの作り方
では、戦略コンサルはお客様への1メッセージを作るのでしょうか。
それは当たり前のようですが、相手の立場になって、相手の一番大事な論点を考えること。まずは相手の話を聞くこと、つまり「傾聴」することなのです。
ただ、お客様自身が大事な論点をわかっているとは限りません。だからこそ、戦略コンサルは仮説を「疑問文」で提示して感触を確かめるのです。
例えば、今日の論点は「若手社員の研修として必要なものは何か?」でしょうか。それとも「若手社員の成長のために何をしたらよいか?」でしょうかと聞けばよいのです。
極端に言えば、就職の面接でも面接官に何を一番知りたいのかを質問すればよいのです。
ニーズはどこまでいっても完璧にわからない・・・顧客やユーザー自身にもわからない(p139)
最高戦略責任者の仕事とは
著者はCSO(最高戦略責任者)時代、戦略という言葉を使っているとき、それが何を指すものかを問いかけるのが仕事だったという。つまり、「戦略」を使った意見には、ほとんどに内容がないので、もっともらしくする装飾であることが多いのです。
同じように、「本質」や「センス」や「教養」といった言葉にも定義がないので、それっぽく聞こえる都合のよい単語です。そうした言葉を使った意見は、相手のための意見ではなく、自分のための意見でしかないと著者は断じるのです。
普通の会社で相手に「1メッセージにしろ」と伝えるのは工夫が必要かもしれませんが、戦略コンサルを仕事とするなら必須のようです。杉野さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・メッセージを伝えることは、「誰かがとりあえず試しにやってみること」を後押しする(p31)
・頭の中で具体と抽象をいったりきたりして考えるにしても、伝えるときは具体で伝えきろう・・相手が具体をイメージできる生々しい言葉にする(p200)
・数字で伝えることで生々しくなり、相手が具体的にイメージしやすくなる(p209)
・「いつやるか?今でしょ!」という1メッセージ・・一番大事な論点に向けて1つに絞ってメッセージを届けている(p105)
▼引用は、この本からです
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杉野幹人 (著)、ダイヤモンド社
【私の評価】★★★★☆(84点)
目次
序章 1メッセージとは何か? 究極にシンプルな伝え方
第1章 1メッセージの技術1「焦点化」-論点を絞り込む
第2章 1メッセージの技術2「先鋭化」―答えを尖らせる
第3章 1メッセージの技術3「結晶化」-生々しい言葉を使う
第4章 1メッセージの応用 ―プレゼンと会議
著者経歴
杉野幹人(すぎの みきと)・・・武蔵野大学大学院言語文化研究科 教授。株式会社ユーザーベース News Picks専門役員 CEO特別補佐。東京工業大学工学部卒。INSEAD MBA修了。早稲田大学大学院商学研究科博士後期課程修了。博士(商学)。大学卒業後、NTTドコモに就職。INSEADでMBAを修了後にグローバル経営コンサルティングファームのA.T.カーニーに参画。経営コンサルティングプロジェクトを14年に渡って手掛けた。その後、経済メディアのNewsPicksに参画し、執行役員CSO(最高戦略責任者)などを経て現職。また、武蔵野大学の言語文化の大学院で、「ビジネス×日本語」の教育研究に携わる。A.T. カーニーのCMTアドバイザー。
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