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戦略系「コンサルティングとは何か」堀 紘一

2023/01/11公開 更新
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「コンサルティングとは何か」堀 紘一


【私の評価】★★★★☆(85点)


要約と感想レビュー

元ボストンコンサルティンググループ日本代表が、日本の戦略コンサルティング業界の勃興期を振り返ります。著者が日本代表になったのが1987年なので35年前の話です。著者は三菱商事に入社し、ハーバード大学MBA留学し、ボストンコンサルティンググループへ転職します。当時は現在と違い、「なぜ三菱商事を辞めるのか?」と言われたという。当時の日本では、コンサルティング会社を使う企業はほとんどなかったのです。


著者は抜擢人事で、入社6年目で日本代表に就任します。実は、ボストンコンサルティング日本支部は業績が悪く、成果が出なければ日本から撤退するという背水の陣であったのです。その後、著者の実力なのか、時代の流れなのかボストンコンサルティンググループは、日本で最も実績を残している企業に成長しています。また、日本企業にコンサルティングが浸透し、現在では商社とともに、コンサル会社が就職人気上位となっていることに時代の変化を感じます。


・自前主義の日本企業、傭兵を雇う欧米・・・話をしていると「この人の認識は、30~40年は遅れているな」と思うことがある(p60)


印象的だったのは、コンサルティングに「答え」はない、という著者の言葉です。コンサルはヒアリングをして、問題を定義し、対策を考えます。問題のない企業は存在しないので、その中で「何が問題か」を定義することがポイントとなるのです。そして、限られた時間内で最大の結果を引き出すために「何が問題か」という「仮説」を立てながら検討していくという。


ただ、欧米であれば、データを集めて事実を積み上げ、それを元にグラフを書いて説明すれば、方向性が間違っていなければそれで終了。ところが日本では、なかなか納得してもらえないし、実行まで行かないというのです。したがって日本でのコンサルでは、顧客と一緒に検討し、顧客が自ら問題と対策に気付いたかのように導くことが、対策が実行されるためのポイントなのでしょう。


・戦略コンサルティング・ファームの仕事とは、答えを教えることではない。答えを「考える」ことであり、そこにかかる時間と労力に対して対価をいただくのである(p99)


日本代表となって苦しい時期に、ホンダ二輪部門と一緒に戦略を検討したこと。ユニ・チャームの商品と営業所を半分にして業績を立て直し、海外進出を提案し大きい成果を出したことなど、ボストンコンサルティンググループの成功事例が興味深い一冊でした。現在の日本では自社だけで検討するのではなく、外部のコンサルも入れるのが常識ですが、そうした日本の企業文化を変えてきたという自負が伺えました。


最初に井戸を掘った人を忘れないという意味で、堀さんは日本のコンサル業界で記憶されるべき人なのでしょう。堀さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・ホワイトハウスからの依頼で、日米交渉を有利に進めるためのネタ提供や論理構築の手伝いをした(p45)


・会社の各階層や各部門間での、現状認識の「ズレ」がある・・そこに多くのヒントが含まれている(p102)


・改革に反対する人・・実際にはそういう人が、組織の中で大部分を占める。感覚的には、100人のうち90人くらいは拒絶反応を示す(p131)


・コンサルティングの世界では三年でマネージャーになって現場を取り仕切る役目となり、七年でプリンシパルになって、顧客に対してプロジェクト全責任を負い、戦略の最終設計を行うようになる(p172)


▼引用は、この本からです
「コンサルティングとは何か」堀 紘一
堀 紘一、PHP研究所


【私の評価】★★★★☆(85点)


目次

はじめに 「何が問題か」が最大の問題である
第1章 経営戦略コンサルティングの誕生
第2章 なぜ、コンサルティングが必要なのか?
第3章 コンサルタントは、生半可な能力では務まらない―求められるスキルとマインド
第4章 コンサルタントは「プロフェッショナル」である―その仕事の流儀と覚悟
第5章 コンサルティング・ファームを使いこなせる企業が勝つ
終章 これからのコンサルティング―コンサルティングを超えて



著者経歴

堀紘一(ほり こういち)・・・ドリームインキュベータ代表取締役会長。1945年、兵庫県生まれ。東京大学法学部卒業後、読売新聞経済部を経て、1973年から三菱商事に勤務。ハーバード・ビジネススクールでMBA with High Distinction(Baker Scholar)を取得後、ボストンコンサルティンググループで国内外の一流企業の経営戦略策定を支援する。1989年より同社代表取締役社長。2000年6月、ベンチャー企業の支援・コンサルティングを行なうドリームインキュベータを設立、代表取締役社長に就任


外資系コンサル関係書籍

「コンサルを超える 問題解決と価値創造の全技法」名和 高司
「外資系コンサルの仕事を片づける技術」吉澤 準特
「外資系コンサルが教える「勝ち方」の教科書」笛木 克純
「コンサルティングとは何か」堀 紘一
「コンサル・コード―プロフェッショナルの行動規範48」中村健太郎


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