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「稲盛和夫に、叱られた! 38人の学びと喜び」出版文化社

2023/01/12公開 更新
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「稲盛和夫に、叱られた! 38人の学びと喜び」出版文化社


【私の評価】★★★★☆(87点)


要約と感想レビュー

 2022年8月に京セラ創業者の稲盛 和夫氏が亡くなりました。この本では、直接稲盛氏から指導を受けた38人の経営者の思い出を収録しています。稲盛 和夫氏の経営はアメーバ経営、フィロソフィー経営、利他の心などと表現されますが、こうした言葉だけでは真の稲盛和夫を理解することはできません。


 例えば、毎日深夜まで残業しながら会社を上場させようと考えていた社長に稲盛和夫氏は「あんたの経営には愛がない。遅くまで働いてくれている社員に対し、頑張ってくれている女性社員を見て、よく頑張ってくれていると甘えているようでは、本当の経営者ではありません」と叱っています。


 京都青年会議所の夕方18時からのセミナー講師として登壇したときは、「こんな時間に会社を抜け出して勉強会とはなにごとかだ。そんな暇があるなら会社に戻って仕事をしろ!帰れ!」と言って、自分も帰ろうとしたという。本田宗一郎も同じようなエピソードがあることを思い出しました。


・「あの人は、いつ見てもかわいそうなぐらい頑張っているから、みんなで応援してあげようかしら」と思われるぐらい頑張れば社員はついてくる(p28)


 また、家族経営で父親が会長、息子が社長の会社で、父親と息子の意見が対立する状況についてアドバイスを求められたとき、稲盛和夫氏は、「生意気言うんじゃねえ!」とすさまじい迫力で、怒鳴ったという。血みどろの努力をしてここまで会社を大きくした両親に対し、苦労もせずその土台にただ座っている息子が何を言っているのだ、ということです。


 この本を読むと、稲盛和夫氏は近い人には、徹底して本気で叱り、一方で勇気づけていたことがわかります。家族で父親が息子に対するように真剣ということなのです。そうすることが、相手のためであるから叱るのであって、それが「利他の心」であるというのです。こうした人の心を大切にしながら、一方ではアメーバ経営で会社の状態をガラス張りにして、部下に数字の達成を求める厳しさのバランスの中で会社の経営がよくなっていくように感じました。


・自分は優しいつもりかもしれないが、それはなれ合いや。優しく褒めることもできないし、厳しく叱ることもできないリーダー・・優しいばかりでも、厳しいばかりでも経営はできない(p87)


 理系の稲盛和夫氏は、何事に対しても「何のためにやるのか」の問いがあり、加えて、理解できないことがあれば「何でや」と聞いていたという。稲盛和夫氏は、経営者としてなぜ叱るのか、なぜ褒めるのか、なぜ人は自分事として動くのか、ということを考え続けてきたのでしょう。


 書籍を読んで姿勢を正したくなるのは松下幸之助と稲盛和夫氏くらいのものです。姿勢を正して読みましょう。稲盛さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・距離の近い私のような者を叱ることで、間接的に中途採用の人たちにも教えていたのです・・・最後には「お前を頼りにしているんだからな。頑張れよ」と言われます(p312)


・お前の一所懸命さは認める。だけど、志が低い。もっと高い山を目指せ。一つのことに徹すれば必ず立派な経営者になれる(p273)


・機内で販売する商品は自分たちで選定して、自分たちで仕入れすべきだ。そして在庫管理も自分でやりなさい。その代わりに売上は実際に販売している客室本部に立ててやりなさい(p24)


・今は装置1台で細々やっているが、うまく行ったら何十台もの装置がずらーっと並び、次々製品がでていく様子を想像しろ・・総天然色の絵が見えてきたら、うまく行く(p304)


▼引用は、この本からです
「稲盛和夫に、叱られた! 38人の学びと喜び」出版文化社
出版文化社


【私の評価】★★★★☆(87点)


目次

「お前、大概にせい」/竹中 勇(㈱タケナカコーポレーション 代表取締役)
「誰や、山田さんの饅まん頭じゆうを取ったのは!」/山田 百合子(㈱ワイツー/ワイワイカンパニー㈱ 代表取締役)
叱られながら追い続けた背中/渡部 隆夫(元ワタベウェディング㈱ 会長・㈱寿光 代表取締役会長)
男心に男が惚ほ れて男泣きする会社/福井 誠(元盛和塾顧問)
塾長自身が悩んで到達した境地「任せて任せず」/小林 徹(オプテックスグループ㈱ 取締役相談役)
「利益を上げていない経営者は社会の悪である」でガツン/本 昌康(㈱ぶどうの木 代表取締役会長)
「米粒みたいなもんじゃ、目の前のことをやれ!」/笠間 力(㈱カサマ 代表取締役社長)
やること、なすこと全てダメで夫婦が心酔/栗山 敏昭(㈱栗山米菓 代表取締役社長)
「現状から脱出できん。会社の発展・成長には厳しく当たりなさい」/十河 孝男(徳武産業㈱ 代表取締役会長)
「理念が身に付けば、理念先行の人ができるわけがない」/梶村 一成(㈱システック 代表取締役社長)
「さすが稲盛さんや、よう言うてくれはったわ」と社員が明るくなった/中村 雄一(大阪エンジニアリング㈱ 代表取締役)
「今の仕事で利益を出し、会社を伸ばしなさい」/飯田 泰敬(㈱LOOPLACE 代表取締役)
「こんなに一生懸命になれるなら、そのエネルギーを経営に生かせ!」/小原 繁(㈱オハラ 相談役)
「あなたの会社は最も原始的な資本主義の形態やな」/井関 新吾(㈱井関総合経営センター 代表取締役社長)
「この山を登り切ったら安心というのは一生あり得ない」/平野 義和(ヒラノ商事㈱ 代表取締役)
「自分の好みで仕事しているのなら、趣味でやっているのと同じでは?」/張 麗玲(㈱大富 取締役社長)
「危なっかしい経営をしている。本当の理解が足りない」/山岸 暢(㈱タナット 代表取締役)
「ちゃんと教えてもらった通りにやりなさい」/高橋 克実(㈱イボキン 代表取締役社長)
振り返ったら、がれきの山や蛇の道を走ってきた/石櫃 鴻吉(京セラ㈱ 元常勤監査役)
最後の「お前を頼りにしているんだからな。頑張れよ」でやる気みなぎる/明石 靖夫(京セラ㈱ 元常勤監査役)
「叱られた? いえ、励まされたんです」/塩見 忠義(京セラオプテック㈱ 元常務取締役)
「お前、一回でも神様に祈ったことはあるか?」/近藤 徹(京セラコミュニケーションシステム㈱ 元専務取締役)
「分かりました」と答えても「分かっていない」と怒鳴られた/宮前 武彦(㈱タイトー 元代表取締役専務)
「来期もうまく行くとは限らないぞ」/右成 勝一(京セラ㈱ 元取締役)



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