【書評】「稲盛和夫の経営問答 従業員をやる気にさせる7つのカギ」稲盛和夫
2025/12/10公開 更新
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【私の評価】★★★★★(98点)
要約と感想レビュー
従業員をやる気にさせるカギ
従業員をやる気にさせる7つのカギとは、何でしょうか。
1 従業員をパートナーとし、
2 自らに惚れてもらい、
3 仕事の意義を説明し、
4 高いビジョンを掲げ、
5 ミッションを示し、
6 フィロソフィを語り続け、
7 自らの心を高めることです。
ポイントは、従業員が自分と一心同体の「パートナー」として、会社の情報を提供し、事業を支えてくれるようにお願いすることです。そのためには、従業員に仕事の意義を理解してもらい、社長に惚れ込み、どこまでもついてきてくれるようになってもらうのが理想です。
しかし実際には、信頼していた人がいとも簡単に辞めていってしまうのです。経営破綻したJALでも、幹部と共に「JALフィロソフィー」を作りましたが、「50歳を過ぎた大人にそういうことを説かれても」と批判的な幹部もいたという。
それでも、事業を支えてくれる従業員を育てる必要があり、それが会社を強くし、従業員の安定した幸せにつながるのです。
常に、経営の透明性を高めてきました。「売上はいくらで、人件費がいくらで、燃料代がこれだけかかっています。それらを引いていくと利益はこうです」といった経営状況を、従業員と共有してきたのです(p145)
なぜフィロソフィーが重要なのか
社長に求められるのは、どういう目的で会社を経営していくのか、従業員のために何をしてあげられるのか、という大義名分です。その京セラとしての大義名分、たった一回しかない人生を、人間としていかに生くべきか示したのが、「京セラフィロソフィー」なのです。
セラミック製造とは、粉を混ぜ、成形して焼成するという「3K」(きつい、汚い、危険)職場です。稲盛さんは毎晩、仕事が終わると従業員を集めて、いま取り組んでいるテーマは、世界中でも最先端の研究開発であると説明していました。これが製品化されれば、人々の暮らしに大いに貢献するということを説いたわけです。
第二電電(KDDI)」の従業員にも、国民のために通信料金を安くしましょう!この事業に参画することは、皆さんの人生を意義あるものにするはずです。この改革が行われる瞬間に居合わせた幸福に感謝し、それをやり遂げましょうと訴えたのです。
「京セラフィロソフィー」・・・・松下幸之助さんから頂戴したもの、安岡正篤さんや中村天風さんから借用したものを使わせていただきました(p36)
どうアメーバ経営を使うのか
実際の経営では、フィロソフィだけでは経営できません。現状の事業がどうなっているのか、独立した部門別の数字が必要です。部門別に、電気代なら工場の電気代、オフィスの電気代と細かく分けて測定していくことになります。
経費が細かく分類されているので、「部門の水道光熱費が多いけれども何に使ったのか、今後どうするのか」と追及することができるのです。追求されるから、節約しようという意識が起こってくるわけです。
そのうえで、部門長に大きなルールだけを決めて、「この部門を守ってほしい」と任せるのです。その後は、社長として、部門の数字を毎月、追求します。この追求する仕組みが、アメーバ経営なのです。
もし、部門長にやる気がなければ、下の社員に「一緒にやろう」と社長自らが出ていって一緒に部門を改善していくことになります。もちろん数か月後には、その上の幹部社員に外れてもらい、実際に一緒にやった若い社員を部門長にしていくのです。
本当に人を育てたいと考えるならば、結果を追求しなければなりません・・・ある程度は、信賞必罰で、努力もせず、責任感を持って取り組まない人は外していくしかありません(p71)
経営者は重圧のなかで孤独である
この本の後半では、経営者からの質問に答える稲盛さんの回答を読んで、涙が出てきました。
従業員を守ることを理念としていた会社で、リストラをやった事例では、会社に残った人を守らねばならないと思うからであって、決して理念に矛盾してはいない。理念を貫こうと思っているから、泣いて辞めてもらったのだと、悩む経営者を諭しています。
経営者は孤独のなかで、出資者には迷惑はかけられないし、従業員には給料を払い続けなければならないのです。その重圧は、稲盛さんにとっても耐えられないくらいのものであり、だから朝早くから夜遅くまで必死に働いてきたという。
それでも真剣に仕事をしてくれるような従業員は、まずいません。だから、経営者は、従業員よりも働かなければならないというのです。仮に従業員が自分に頼ってきたとしても、経営者は、うちの会社に来て頑張ってくれていると喜びながら、自ら苦労していかなければならない、それが経営者の責務であるというのです。
厳しく優しい稲盛和夫の言葉に感動しました。経営者には必読の一冊でしょう。稲盛さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・(社長の)あなたが良い方法を考えて、あなたが実行するのです・・・販路や売り方を工夫してみてはどうでしょうか・・・あなたが、支店長とともに全責任を持って死に物狂いで努力しなければ、厳しい競争環境のなかでは生き残っていけないと思います(p56)
・私はいつも「10%の経常利益率を出さないようでは、会社を経営しているとはいえない」と言っています。それは、高い経常利益率のもとで内部留保を厚くして備えにまわし、どんな不況が来ようとも、会社を潰さずに耐えていけるようにしなければならないからです(p130)
・「赤字を何か月も出し続けたら、店長は務まらない」という厳しさがあって、初めて責任感も出てくるし、危機感も出てくるのだと思います(p67)
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稲盛和夫 (著)、日経BP
【私の評価】★★★★★(98点)
目次
第1章 経営の原点に立ち返る―従業員をやる気にさせる7つの要諦
第2章 経営者マインドを育てる
第3章 常に先を読み、強みを磨く
第4章 理念を貫く
第5章 人を育て、未来をつくる
第6章 自らを高め、正しきを貫く
著者経歴
稲盛和夫 (いなもり かずお)・・・1932年、鹿児島県生まれ。鹿児島大学工学部卒業。1959年、京都セラミツク株式会社(現京セラ)を設立。社長、会長を経て、1997年より名誉会長を務める。1984年には第二電電(現KDDI)を設立し、会長に就任。2001年より最高顧問。2010年には日本航空会長に就任。代表取締役会長を経て、2013年より名誉会長。このほか、1984年に稲盛財団を設立し、「京都賞」を創設。毎年、人類社会の進歩発展に功績のあった人々を顕彰している。また、若手経営者が集まる経営塾「盛和塾」の塾長として、後進の育成に心血を注ぐ。2022年8月に90歳で逝去。
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