「盛和塾」実学・経営問答「人を生かす稲盛和夫の経営塾」稲盛和夫
2022/10/18公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(88点)
要約と感想レビュー
京セラの稲盛さんが、若手経営者のための経営塾「盛和塾」で行われていた経営問答をまとめた一冊です。若手経営者ですからほとんどの会社は中小企業です。中小企業はお金もなければ人も技術もないのです。社長が社員を惚れ込ませることができなければ、中小企業は、まず成功しないと稲盛さんはいうのです。
例えば、若くして二代目社長となった人には、現場がわからないなら、あなたが現場に行きなさいと諭しています。利益率が少ないなら、車を売ってトラックを買い、あなたが安い材料を遠くからでも買ってきなさいというのです。それくらいして、現場の人たちが、社長が現場にきていろいろ聞いてまわって仕事の邪魔だし、社長自ら動いて改善してまわるのでたまらん、というくらい現場に精通しなさいというのです。
・あなたが現場に行くのです・・乗用車に乗っているのなら、それを売ってトラックにする・・社長自身が走り回って、どこよりも安く仕入れてこなければ、利益など出ません(p50)
また、社内の状況を把握することも大切です。どこをどうがんばればいいのか。ここの経費を削減すれば、利益はこれだけ出るということを、社長あなたがわかるだけでなく、すべての社員がわかるようにする。
また、現場のこの社員の性格はどうか、この社員の能力はどうか、責任者にするには誰がよいか、社員の性格から特性を知らなくてなりません。営業に対しては、当社にはこういう素晴らしい商品があることを教え、この商品をだれに対して売り込むのか教えなければ、売れるはずがないのです。
結局は、人は感情の動物であり、社長は人間性も、仕事への取り組みからも、社員から「今の社長はすばらしい」と言われるようでなければ、組織はまとまらないのです。
・人間はみな感情の動物です。ですから、経営者というのはすばらしい心理学者でなければならないのです(p43)
なぜか読んでいて、涙が出てきました。稲盛さんは、成長を目指す社長に対し、あなたの言葉の中に「社員をしあわせにします」ということが一つも書かれていないと厳しく指摘しています。中小企業の社員にしてみれば、この程度の給料だったら、転職しようかと思ってしまうわけです。自分のことよりもまず先に社員をよくしてあげようという気持ちを持つことが大事だと、稲盛さんは諭すのです。
実は稲盛さんも起業した当初は、「自分の技術を市場に問う」ために起業したのです。しかし、すぐに新入社員が給料ベースアップを要求してきて、社員の人生まで自分が保障しなければならないという現実に大きく悩んだのです。それだけ社長の責任は重く、給料に見合うものではないのでしょう。しかし、だれかがその責任をまっとうして多くの社員の幸せを達成しなければ、社員も困るし、日本という国家も困るわけです。
社長という職業は崇高でかつ厳しいものであり、なぜ稲盛さんが激務の中で、「盛和塾」に時間を取ったのかがわかりました。稲盛さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・あなたが毎日現場に出て、大ベテランになるのです。現場に行って、社員が「もううるさくてかなわん」というぐらいにならないといけません(p53)
・ただ命令するのではなく、なぜ、今これをやってもらわなければならないのかということを、あなたが諄々と説かなければなりません(p27)
・心血を注いで社員を見ていくことが大切です・・・一緒にコンパで飲んで、その社員の言動を聞き・・(p44)
・不平不満は社内の雰囲気をガタガタにしてしまいます。ですから、どんなに賢い人を雇うにしても人間性のよい人を雇うことです。絶対に能力だけで採用してはなりません(p143)
・人格を高め、人柄をよくしていくには、二つの方法があります。一つは先人の教えを学ぶことです・・もう一つはやはり善きことをなす、つまり「利他の行為」です(p210)
【私の評価】★★★★☆(88点)
目次
第1章 活力ある社風をつくる―見えざる部分が競争力に差をつける
第2章 社員のやる気を引き出す―夢を描き、心に火をつける
第3章 幹部を育てる―共同経営者をつくる
第4章 自らを高める―尊敬されるリーダーとなる
終章 リーダーの役割10カ条
著者経歴
稲盛和夫(いなもり かずお)・・・1932年鹿児島県生まれ。1959年京都セラミック(現京セラ)を設立。社長、会長を経て、1997年より名誉会長を務める。1984年には第二電電(現KDDI)を設立、会長を経て2001年より最高顧問。2010年2月、日本航空会長就任。若手経営者のための経営塾「盛和塾」の塾長として、後進の育成にも心血を注ぐ
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