「新版・実践経営問答 こうして会社を強くする」稲盛 和夫
2018/11/27公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★★(95点)
要約と感想レビュー
破綻したJALを再建した稲盛和夫さんが主催する経営者の勉強会「盛和塾」での対話をまとめた一冊です。経営者は孤独です。会社の成果に責任を持つ立場で仕事を従業員にやってもらわねばなりません。稲盛さんは経営者は現場について誰よりも精通していなければならないと断言しています。
「従業員がダメだ」という経営者を叱っています。業績を従業員の責任にするのは問題外であり、まず自分が現場に行ってすべてを把握し、どうやって成果を出していくのか持論を持っていなくてはならないのです。その上で、従業員にどうやって自主的に考えてもらうのか、どういった状態を目指すのか議論し、計画し、実行を見てあげるのです。
つまり、経営者は、まず率先垂範し「誰にも負けない努力」をしなくてはいけないという。「あの人が一番頑張っておるではないか」と、だれもが自然に支えてくれるまで頑張るのです。そして、従業員を集めて話をする時は、心を打つような話ができなければならないという。言行一致ということです。
・貴方は、・・・「成果はそこに配置した社員に負うところが大きい」とも述べておられる。実は、ここがとんでもない誤りなのです。成果を得るためには、従業員ではなく、まず貴方自身がそこに行ってすべてを把握しなければなりません・・誰よりも現場に精通していなければならないトップが、事務所にこもっている。このことが問題です(p56)
経営者は何を目指すのか、どういう道を進むのか、どういう到達地点に至りたいかを、議論しなければならないという。目標設定があって、どのような数字を把握していくのか決めるのです。また、自分の会社の状況を把握していない経営者が多いのです。稲盛さんは、事業ごと、店舗ごとの独立採算を提唱しています。
たとえば、新規事業があれば、その事業の現状を把握するために事業を独立した企業のように収支を計算させる。どの事業・部門が赤字で、どの部門が黒字なのか見える化するのです。このような見える化が行われていないと経営者はどこから手をつければよいのかわからないということになってしいます。
だから店舗を独立採算にして、売上、粗利、人件費、経費を全部出して、収支、損益を比較するのです。つまり、新規部門が、売上だけでなく利益も伸びており、採算が合っているということを、数字で証明するのです。科学的に説明しなければ、他の部門の人への判断材料にならないのです。
・頂戴した資料から判断すると、貴方の会社の収益性は非常に悪いと思います。しかし、トップである貴方にその自覚が足りない・・では、貴方の場合どうするべきかというと、何においても一店舗ごとの独立採算、ユニットオペレーションを確立することです(p29)
久しぶりに、読みながら姿勢が正される本に会いました。経営者とは組織を導く役割であり部下から一挙手一投足を見られているたいへんな仕事です。すべての結果は、自分の行動、姿勢しだいなのです。
こうした勉強会があれば、苦難で悩んでいる経営者でも救われることが多いと思います。稲盛さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・トップというものは、誰よりも働き、誰よりも厳しい存在でなければなりません・・・しかし、そういった厳しい要求を従業員に対して行うと、人間関係がぎすぎすしてくるのです。その時初めて、「なぜこんなに厳しくするのか、なぜこんなに高い要求を重要員にするのか」について、理由が必要となるのです。つまり理念や社風です(p58)
・貴方は、「世間はしがないペンキ屋と言うでしょう。しかし、世間が言うしがないペンキ屋とは、こういう価値のある仕事をしているのです」と、従業員たちに切々と訴えていく必要があります(p99)
・高すぎてもだめ。安すぎれば売れはしますけれども、利益が出ないのです・・・値決めはトップが決めなければなりません。「値決めは経営」なのです。また、売らんがための安易な値下げも、部下に任せてはなりません(p63)
・私の場合は、何回も試行錯誤を経たあと・・・若手の模擬役員会をつくりました・・・私は若手の人に、「あなたたちをあてにして、あなたたちと一緒に将来仕事をしていきたい」と話し、一緒に勉強しながら幹部を育てていきました(p112)
・ナンバー2には、部下に対する思いやりと、トップである貴方に対する思いやりの両方がベースに要りますから、「仁」「義」「誠実」そういうものがある人が選ばれるべきです。もし、実は才能面で物足りないのだがという場合でも、敢えてその人物を選ぶべきだと思います(p119)
・頭もよく、気も利いていいる・・将来は幹部と思った人は、目先が利くので地味な仕事はしない。させれば不満を言って、会社を去っていくわけです。一方、傍らで一見頼りなさそうな人がコツコツ頑張って、地味な仕事をものにして、さらに創意工夫を重ねて、現在のハイテク京セラを支えていったのです。結局、頭の良さではなく、精神構造の善い人の方が長丁場では進歩するのです(p130)
・私は社内では、仕事の話を何かのついでに報告したり、廊下ですれ違いざまに報告しようとする人を厳しく叱ります。というのは、私は別の目的があって行動しているわけですから、そういう注意が散漫になっている状態で話を聞き、判断するのは非常に危険だと考えているからです(p48)
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【私の評価】★★★★★(95点)
目次
第1章 判断力を磨き上げる
第2章 業容拡大を実現させる
第3章 社員のモチベーションを高める
第4章 事業を引き継ぎ発展させる
第5章 新規事業に挑戦し成功させる
第6章 強い組織をつくる(ドキュメント盛和塾)
著者経歴
稲盛 和夫(いなもり かずお)・・・1932年生まれ。鹿児島大学工学部卒業。1959年京都セラミックス(現京セラ)を設立。66年社長。1985年会長。1984年に第二電電(現KDDI)を設立。1987年セルラー電話会社を設立し、会長に就任。京セラ名誉会長。
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