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「新版 敬天愛人 ゼロからの挑戦」稲盛 和夫

2019/06/03公開 更新
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新版 敬天愛人 ゼロからの挑戦 (PHPビジネス新書)


【私の評価】★★★★☆(85点)


要約と感想レビュー

 倒産したJALを再生させた京セラの稲盛 和夫さんの、これまでの経営者人生の総決算の書です。京セラは創業1959年から赤字なし、常に経常利益率10%程度を確保してきました。どのような経営環境においても、安定して経常利益を出し続けていることは驚異的です。


 社内には小さな事業体が作られ、個別に付加価値を管理するアメーバ経営で収支管理を徹底しているからだと思われます。同時に、常に新しい事業展開を模索し、全体で負えるリスクの範囲内で新規事業に挑戦してきたこともわかります。


 JALにおいても、事業の収益源である各路線の採算をリアルタイムで分かるような管理会計システムを導入しています。すべての路便別の収支が、翌朝には分かるような仕組みをつくり、路線別の経営責任者を明確に定め、権限と責任を明確化したのです。これはアメーバ経営といわれるもので、企業内に中小企業と同じような組織体をつくり、経営者と同じような経営感覚を持ったリーダーを社内に育成していくものなのです。


・京セラを1959年に創業してから・・・初年度の売り上げは約2600万円でしかなかったが、2012年3月期には1兆2000臆円に迫る。その間、通期で一度の赤字も計上することがなかっただけでなく、利益率は・・・10%ほどを確保している(p3)


 仕事の結果は、「考え方」×「熱意」×「能力」と言っているように、誰にも負けない努力を続けることが、成功の秘訣であるとしています。成功に安易な近道はないということです。また、信用こそが商売の基本であり、お客様に信用されるだけの実験を積み上げていくことを意識してきたという。


 そして信用の上に、さらに「徳」が求められるのではないだろうかと、問いかけています。なぜなら、経営者は成功していく中で、どうしても傲慢になってしまうからです。だからこそ、「人として何が正しいのか」ということを常に考え、自分にとっても周囲の人にとっても正しい判断をしていかなくてはならないとしています。時に厳しく、時に優しく見えるのは、そうした稲盛 和夫さんの私心を超えた考え方にあるのでしょう。


・事業を成功に導くことができる人というのは、やり手で闘魂もあり、競合会社など潰すくらいの気力を持っている。しかし、そういう激しい気質の持ち主だけに、得てして傲岸不遜に陥り、傍若無人に走り、それが失敗の原因となってしまうのである・・・そういう激しい経営者であればこそ、「人間として何が正しいのか」ということを常に自分に問い、正しいことを正しいままに貫いていくことで、その成功を長く持続するようにしなければならない(p192)


 松下幸之助がダム式経営と言ったように、稲盛氏もリスクに耐えうるだけの財務内容を備えることを企業経営の前提としてきたとしています。1984年に第二電電(DDI)を創業したときも、京セラでは1000臆円以上の内部留保があり、通信事業で失敗したとしても耐えられるだけの余裕があったのです。


 企業の姿とは、経営者の人格の投影されたものであるとしています。そして事業を行うにあたっては、「世のため人のため」という大義に尽くす姿勢がなければならないというのです。したがって「人生を面白おかしく、楽に生きていきたい」というような人は、経営者になってはいけない、激しい闘志を持っていない人が、経営者になることは、当人にとってかわいそうなことであり、従業員をはじめ、その企業を取り巻く関係者にとって不幸なことであると断言しています。従業員を雇用している責任については、企業経営者に課された責任は重いのです。経営者の責任の大きさを再確認しました。


 稲盛さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・西枝(一江)氏は私に「お金に使われてはいけない。また、従業員がオーナーでなければいけない」ということを諄々と説かれた。そして、資金も持たず株式の意味も知らない私に、技術出資という形で設立当初から株を持たせてくださり、いわゆるオーナー経営者としての道を歩ませてくださった(p32)


・私は「開発者は、手の切れるような製品をつくらなければならない・・まずは、採算を一切度外視して、最高の品質の製品を一個でもいいからつくり上げる。その後、コストを考慮に入れ、どのように量産するかということを検討していく。このような手法をとるべきだと思うのである(p66)


・私の経験では日本には強固な市場秩序ができ上がっていたため、海外に対してだけでなく、日本の新規参入企業に対しても閉鎖的であり、系列企業からしか買わないという体質があった・・私は英語も話せず、貿易の知識もないのに、創業間もない1962年に米国市場の開拓に乗り出していった(p51)


・新しい事業にチャレンジし続けた・・守りに入ったときには、企業は衰退の芽を吹き始めているという・・社員も、果敢な事業展開を行なう企業であってこそ鼓舞され、努力するはずである(p72)


・「とりあえずやってみよう」・・という程度では、絶対に新規事業の成功はあり得ない。どんな困難に出合っても、決して諦めない、必ず実現させるという強烈な思いがなければ、新規事業の成功も、企業の多角化も、およそ不可能なのである(p76)


・苦しんで苦しんで切羽詰まった状況で、今まで見過ごしていた現象を見つけ、一挙に問題解決が進む場合がある。神のささやく啓示とも呼ぶべきこの瞬間こそ、真の創造に至る道であろう(p81)


・会社に対して高い貢献をしたとしても、ボーナスや報奨金を与えるといったことはない。金品で人の心を操ることができたとしても、一時的なものでしかない(p95)


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【私の評価】★★★★☆(85点)


目次

第1部 「フィロソフィ」をベースにする
第2部 「フィロソフィ」の根底にあるもの1
第3部 「フィロソフィ」の根底にあるもの2



著者経歴

 稲盛 和夫(いなもり かずお)・・・1932年生まれ。鹿児島大学工学部卒業。1959年京都セラミックス(現京セラ)を設立。66年社長。1985年会長。1984年に第二電電(現KDDI)を設立。1987年セルラー電話会社を設立し、会長に就任。京セラ名誉会長。


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