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「稲盛和夫の実践アメーバ経営 全社員が自ら採算をつくる」稲盛 和夫

2018/01/22公開 更新
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稲盛和夫の実践アメーバ経営 全社員が自ら採算をつくる


【私の評価】★★★★★(90点)


要約と感想レビュー

 京セラ、KDDIを育てた稲盛さんは、経営破たんした日本航空の再建にも成功しました。稲盛さんのアメーバ経営が、あらゆる企業の経営に有効であることが証明されたと言えるでしょう。


 稲盛さんが強調するのは、組織や経営管理の手法だけでなく経営者の熱意と考え方が重要であるということです。いかにアメーバ経営によって部門別の収支が見える化されても、一人ひとりの従業員が動かなければ何も変わらないからです。


・意図したわけではないが、そうした無私の姿勢で懸命に再建に取り組む私の姿を見て、多くの社員たちが「自分の父親や祖父にあたるような年齢の稲盛さんが何の対価も求めずに、何の関係もない日本航空の再建のために必死になってくれている。ならば自分たちはそれ以上に全力を尽くさなければならない」と考えてくれたようである(p51)


 アメーバ経営の要諦は、どこが儲かっているのか、損失を出しているのかリアルタイムで明確にすること。そのために、現実に即した原価償却をするし、材料を購入したら即、経費化し、毎月採算表を作る。そして経営者は、そのアメーバの採算についてそのアメーバのリーダーに説明を求めるのです。


 つまり、すべてのアメーバにはリーダーという経営者が存在し、その活動と数字に責任を持っているのです。リーダーは細かい経費に至るまで、数字の根拠と理由を把握し、問題があればどう対処するのか考えていなければならないのです。


・部門別・科目別に前月の実績と当月の予定がびっしりと記された採算俵をもとに、私が疑問に思う数字を見つけては、たとえそれが交通費や光熱費などの細かい経費項目であっても「なぜこのような数字になるのか」と徹底して追及していった(p49)


 さらに、アメーバ経営で問題となるのはアメーバ同士の対立です。社内から買うより、外部から買ったほうが安いということもあるでしょう。この値段では、製造できない、この値段では、売れないと製造と販売での対立もあるでしょう。


 そうした対立こそが、会社全体最適を考えることができるリーダーを育てるチャンスなのです。アメーバ経営を導入すると、それまで政治力だけで出世してきた人が辞めていくと聞きました。仕方がないことなのでしょう。


 稲盛さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・日本航空に着任してすぐ「現在の経営実績はどうなっているのですか」と質問したが、なかなか数字が出てこない。やっと出てきたのは数カ月前の実績データで、しかもきわめてマクロ的なものだった。また、いったい誰がどの数字に責任を持っているのか、責任体制も明確でない(p47)


・どこが儲かっていてどこが儲かっていないのかがわかる部門別採算管理をおこなうために、アメーバ経営では収入やその収入に対する経費がはっきりわかる単位に組織を分けるようにしている(p27)


・私が説くフィロソフィに対して違和感を覚えていたようだった。「なぜ、そんな当たり前のことをいまさら学ばなければならないのか」・・「そんな幼稚なことを、と軽蔑するようなまさにそのことを、皆さんは知っているかもしれないが決して身につけていませんし、ましてや実行にも移していません・・そのことが、日本航空を破綻に陥れたのです(p44)


・「社長の考え方をわれわれに強制するのはおかしいのではないか」と返ってくる。特にインテリの従業員ほど強く反発してきた。「確かにどのような考え方をしようと自由だ。しかし、うちの会社はこういう考え方で経営をしていくつもりだから、うちの会社で一緒にやっていこうと思うのなら、ぜひそれを理解してもらいたい。理解できない人は自分の考えを理解してもらえる会社に行ってもらってよい」(p21)


・「旅客運輸サービスでは何を単位にして採算を見ていくべきか」・・「1便ごとの路線・路線別採算を見ていくべきだ」との結論にいたった(p80)


・必ず部門間の対立が起きるのである。・・少しでも高く売りたい製造部門と、なるべく安く買いたい営業部門の利害はお互いに反する・・そこで、注文をもらって生産する受注生産については、日本の大手商社がとっている「コミッション制」を参考にした(p27)


・小さなユニットであってもその経営を任されることで、リーダーは「自分も経営者のひとりだ」という意識を持つようになる・・「一定時間を働けば、一定の報酬がもらえる」という立場から180度変わって、今度はメンバーの報酬を払うために自らが稼ぐ立場になる(p24)


・研究部門の活動は短期的には収益に直結しづらい。また、多くの場合、個別の製品と研究成果を紐づけてとらえるのは難しい・・このため、研究部門は非採算部門とし、全社共通費としてそのコストを賄う(p69)


・社内売買価格は、どのようにして決まるのだろうか。それは、アメーバのリーダー同士の交渉で決まる・・このように当事者間で値決めを行うことが、リーダーが経営者感覚を身につける重要なプロセスのひとつとなる・・リーダーは、自分たちさえよければよいという部分最適ではなく事業部門全体がいかにあるべきかという全体最適を考えなければならない(p127)


・原材料を購入した場合、一般的な企業ではすぐに経費とせず、いったん在庫として計上し、それを使うときに経費計上しているのではないだろうか。これに対しアメーバ経営では、購入時点で即座に経費計上する・・必要なものを必要なときに必要な量だけ購入する「当座買い」」が徹底される(p140)


・在庫販売方式では・・営業部門が製造部門に発注し、社内取引として商品を買い取るのである(p118)


・経営を伸ばせるかどうかはトップの熱意と考え方にかかっている。創業期の零細企業であれば経営者の情熱で組織を牽引できるが、そこから中小企業へと成長していくと、社員たちの心をまとめるために「哲学」が必要となる(p170)


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【私の評価】★★★★★(90点)



目次

第1章 哲学の共有が欠かせない
第2章 日本航空を再建した全員参加経営
第3章 まずは機能ありき――組織づくりの要諦
第4章 採算管理でやる気を引き出す――運用ルールの構築
第5章 全社員が自らの意志で採算をつくる


著者経歴

 稲盛 和夫(いなもり かずお)・・・1932年生まれ。鹿児島大学工学部卒業。1959年京都セラミックス(現京セラ)を設立。66年社長。1985年会長。1984年に第二電電(現KDDI)を設立。1987年セルラー電話会社を設立し、会長に就任。京セラ名誉会長。


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