【書評】「NHK日本的メディアの内幕」立岩 陽一郎
2025/08/29公開 更新

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【私の評価】★★★☆☆(78点)
要約と感想レビュー
NHKは普通の忖度する組織
公共放送であるNHKの内側は、どうなっているんだろうと、手にした一冊です。著者に言わせると、NHKは会長や政治家や官僚に忖度して自分の出世だけを気にする人間ばかりの普通の組織だというのです。
まず、NHK会長への忖度です。紅白歌合戦の担当者による使い込みが発覚した時,海老沢勝二会長が国会で追及される 光景が中継されることのないようNHKに関する国会の予算審議が、慣例を破って中継しませんでした。
当時,NHKの労働組合の執行役員だった著者は、マスコミのあるべき姿と違うと感じ、NHK職員によるシンポジウムの開催を 計画したのです。NHKの社会部長からはシンポジウムに参加できないように地震の現場に行くように命令されましたが、著者は拒否しました。
社会部長は、「気持ちはわかるが,そんなことでは何も変わらない。焦らずにこれまでどおり,しっかりと仕事をしていけば状況は変わる」と著者を説得しましたが、著者は断り、シンポジウムを開催し、NHKを辞することになるのです。
提案したのは,NHK職員によるシンポジウムの開催だった・・・私は当時,NHKの労働組合である日放労で記者を代表する執行役員だった(p13)
NHKの政治家や官僚への忖度
次は、政治家や官僚への忖度です。これは、マスコミと政治家・官僚が持ちつ持たれつの関係であることに原因があります。つまり、政治部の記者は権力の監視ではなく,権力からいかに情報をとるか、いかに近い関係になって情報をもらえるかで仕事の評価が変わるからです。
2000年の森喜朗首相の「神の国」発言の時には、釈明会見の前日、首相官邸記者室で首相宛ての「指南書」が見つかり、記者が釈明会見のアドバイスをしているのではないかと騒ぎになりました。
社会部でも、警察という権力の監視ではなく警察からいかに情報を取るかが重要な仕事になるのです。
実際、著者も沖縄県警を担当しているとき,ほぼ毎晩,日付が変わる頃に飲み屋で捜査員と飲んでいたという。この捜査員が、著者がオウム真理教被害者へのインタビューを実現してくれたというのです。
こうした関係性は読売新聞の渡辺恒雄主筆のインタビュー番組で、渡辺氏が「(政治家に)それ間違っているから,こっちのほうやりなさいとか言って忠告すると,言うこと聞くわね」といっているように、昔も今もかわらないのです。
社会部は妙に,この警察官僚出身の政治家に配慮するところがあった・・その構図を端的に表現するならば,「社会部:自民党=社会部:警察官僚」となる(p69)
著者の調査報道
しかしながら、著者が理想とするのは、欧米で評価の高い調査報道です。政府にとって不都合な事実を調査によって明らかにすることです。実際2006年には、著者は環境省が過去に発注した事業の資料を情報公開請求で入手して,そのほとんどで会計法が定めた一般競争入札が行われておらず,役所が発注先を決める随意契約が行われていたことを明らかにしています。
また、2012年には大阪の印刷会社で従業員が胆管癌を発症して相次いで死亡するケースがあり,原因となる化学物質が規制されずに使われている実態を報道しました。
ただ、NHKの中では、当時の「ニュース7」の責任者だった社会部の先輩が、印刷会社の報道を政府が認定していない内容を報じることは問題だとして止めたという。ちなみにその人物は、前田会長の代で理事にまで出世したという。
NHKでは真実を追い求めると孤立し、政府に忖度する人が出世するようなのです。
その報道を止めようとした人物がいる。その人物はであり,。その人物は前田体制で理事となり,その「改革」を推し進めた人物と内部で指摘されている・・その人物が言い放ったのは,だというものだった(p103)
NHKスペシャルとクローズアップ現代
NHKといえば、NHKスペシャル「JAPANデビュー」で台湾における日本の非道を捏造したり、天皇を強姦罪で有罪を宣告する「国際戦犯女性法廷」を放送したりと、公共放送らしからぬイメージがあります。
そのヒントとしては、著者がイラクで自衛隊を取材して帰国したとき、「お前の報道は自衛隊の宣伝でしかなかった」と酷評した人がいたということでしょう。
また、NHK「クローズアップ現代」は安保法制をめぐって当時官房長官だった菅義偉元首相に国谷アナが安保法制反対の立場から質問しています。今のウクライナ戦争を見れば、安保法制は日本がウクライナにならないために必要な法律であったわけです。
このように、NHKの内部には、会長に忖度する人、政治家や官僚に忖度する人、調査報道が好きな人、反自衛隊・反天皇の反日の人がいるとわかりました。
私は、マスコミという権力が、日本を国際的に孤立させ、自衛力を弱体化し、国民の一体感を破壊しようとする勢力に利用されることが一番心配です。そうした国家の危機を避けるために、マスコミという権力には政治的中立性が求められていると思うのです。
著者は、「時の政権が間違ったことをしたとき,NHKはどうすべきか」と問うていますが、NHKが間違ったことをしたとき、私たちは何をすればいいのでしょうか。調査は続きます。
立岩さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・裏コンというのがあるんですよ。その参加メンバーを決めるのは多くのケースでNHKの記者なんです・・・総理大臣と各社政治部記者との懇談・・・懇談で各社一緒に取材するという形式になった・・ところが,これはあくまで表の話だ(p44)
・NHKと読売と共同は「御三家」と言われていて,とことん政治家に密着する(p73)
・社会部デスクは,時の検察トップである検事総長との近しい関係が知られていた(p90)
▼引用は、この本からです
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立岩 陽一郎 (著)、地平社
【私の評価】★★★☆☆(78点)
目次
第1章 「指南書」問題
第2章 NHK政治部とは何か
第3章 NHKという組織、記者という集団
第4章 NHK理事とは何か
第5章 経営委員会とは何か
第6章 セイバンという職種
第7章 NHKにとって「クローズアップ現代」とは
第8章 記者クラブがある巨大メディア
第9章 佐戸未和さんの過労死
著者経歴
立岩 陽一郎(たていわ よういちろう)・・・ジャーナリスト。大阪芸術大学短期大学部教授。ネットメディアInFact編集長として、ファクトチェックや調査報道に取り組む。1991年一橋大学卒業。放送大学大学院修士課程修了。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクに従事し、政府が随意契約を恣意的に使っている実態を暴き随意契約原則禁止のきっかけを作ったほか、大阪の印刷会社で化学物質を原因とした胆管癌被害が発生していることをスクープ。「パナマ文書」取材に関わった後にNHKを退職。
メディア関連書籍
「NHK日本的メディアの内幕」立岩 陽一郎
「利権のトライアングル」髙橋洋一、原英史
「テレビの裏側がとにかく分かる「メディアリテラシー」の教科書」長谷川 豊
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