【書評】「仕組み化がすべて「最強企業」で学んだチームで成果を出すためのマネジメントの本質」岩田圭弘
2025/08/28公開 更新

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【私の評価】★★★★☆(84点)
要約と感想レビュー
キーエンスではルールを重視
社員の平均年収が2200万円、営業利益率55%の株式会社キーエンスで事業部営業ランキング1位だった著者に、キーエンスの仕組み(ルール)を教えてもらいましょう。ここで言うルールとは、営業であれば、訪問先の選定基準、アポイントの取り方、商談の進め方、見積りの作成方法などがルール化されているという。
これらのルールは、日々のモニタリングや結果の振り返りによって、「成果につながらないルール」は廃止し、「成果の出るルール」だけが残るようになっています。特に新しいルールが作られたときは、キャンペーンとしてルールの運用状況や成果を毎日ランキングを発表するなどして、リアルタイムで可視化しています。
このようにキーエンスではルール(仕組み)によるベストプラクティスの水平展開を重視しており、結果して、「トッププレーヤーはいらない」という社風であるというのです。
実際、著者が個人で成果を出しまくっていた時期には、チーム全体のモチベーションが低下したという。個人の成績が大きくアップするより、チーム全体で底上げしたほうが、全体では大きな成果が上がるということなのです。
「成果につながらないルール」をなくし、「成果の出るルール」を増やす・・定期的な振り返りによって、ルールが適正に機能しているかを確認し、改善(p167)
キーエンス営業部門のルール
キーエンスでは、半年に一度、営業監査があります。ルールが本当に守られているかどうか、また、そのルールが本当に成果を出せているかどうか、第三者の視点でチェックするのです。そのチェックされる営業関係のルール(仕組み)の改善を見てみましょう。
営業では見込み客を訪問して面談することが、成果につながるとわかっています。では、訪問して面談する数を効率的に増やすためにどうするか。
この本ではキーエンスでの事例として、外出日と社内日を設定し、社内日には電話でアポ取りに集中することがルールとなっている説明しています。
また、1件あたり1時間の面談時間を、45分でも問題ないのであれば、面談時間を45分に統一ルールにして、生産性を3割向上させるという例も説明されています。
それ以外にも、キーエンスでは、始業時間は朝8時半ですが、9時まで席を立たないルールだという。したがって、社員は始業前にトイレを済ませておく必要があるのです。
マーケッティング施策を実施した後は、必ず一定期間後に振り返りを行います・・・振り返りは、起案者と承認者によって行われます(p152)
キーエンス営業部門以外のルール
バックオフィス系の業務では、仕事の締切り(デッドライン)を設定しているという。つまり、何の仕事は何日以内に仕上げるというルールを作っているのです。
新商品や新サービスの開発であれば、毎月5件のシーズを提出し、報告会で発表することを義務づけます。量を出すことで、品質も上がるのです。
人事部門であれば、内定者に入社を了解しもらう採用クロージングでは、メールと電話で内定承諾率を測定します。電話の内定承諾率が高いとわかれば、部門として電話でクロージングすることをルールとして横展します。
展示会でも、良い場所ほど早く埋まってしまうという課題がある場合、過去の同テーマの展示会の費用対効果が1以上かつ次期予算内なら、担当者がその場で発注できるルールを作ります。
在庫数を減らす・・営業企画や販売促進部から当月の販売予測を提供してもらい、予測精度を高める(p279)
QC(品質管理)活動と類似
キーエンスでは、成果を上げている人の行動と成果の因果関係を分析し、最低限必要な行動を仕組みとして組織内で共有していることがわかりました。データを重視するQC(品質管理)活動に近い考え方だと思いました。QCはどこの会社でもやっていることだと思いますが、徹底度が違うのでしょうか。
キーエンスは営業利益率50%以上と数字で結果を出していますので、経験者の話は説得力があります。岩田さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・キーエンスでは、自分が担当しているクライアントの他の部門の情報を得た時に、その部署を担当している・・同僚に紹介して成果が出れば、紹介した自分にインセンティブが付与される(p55)
・製品ごとに生産のリードタイムが異なることを考慮し、一定の在庫水準を下回った時点で販売予測の提出を求めるような仕組みも有効でしょう。たとえば、3ヶ月分の在庫を切ったらアラートが飛び、予測の提出が必要になる(p282)
・キーエンスでは、ある施策を実行しようと決めたら、毎日のように実績が掲示されます。面談件数のランキングなども日々更新(p131)
▼引用は、この本からです
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岩田圭弘 (著)、SBクリエイティブ
【私の評価】★★★★☆(84点)
目次
はじめに なぜキーエンスは「圧倒的成果を出す組織」になれたのか?
序 章 "キーエンスの仕組み化"とは何か?
第1章 標準化――全員の行動を一緒にする
第2章 浸透――全員に"実際に"行動してもらう
第3章 振り返り――ルールを見直し、「成果の再現性」を高める
第4章 責任と権限――自分がいなくても、回るようにする
終 章 "キーエンスの仕組み化" 実践編
著者経歴
岩田圭弘(いわた よしひろ)・・・アスエネ株式会社 共同創業者 兼 取締役COO。慶應義塾大学経済学部卒業後、2009年にキーエンスに新卒入社。マイクロスコープ事業部の営業を担当。2010年新人ランキング1位を獲得。その後、2012年下期から3期連続で事業部営業ランキング1位を獲得し、マネージャーに就任。その後本社販売促進グループへ異動、営業戦略立案・販売促進業務を担当。
2015年、三菱UFJリサーチ&コンサルティングに転職。小売、医薬、建設業界の戦略策定、新規事業戦略策定に従事。2016年にキーエンスに戻り新規事業の立上げに携わる。2020年アスエネに参画。
キーエンス関連書籍
「仕組み化がすべて「最強企業」で学んだチームで成果を出すためのマネジメントの本質」岩田圭弘
「誰でも売れる「プロセス思考」営業術―元キーエンスのトップセールスが教える」藤岡 晋
「キーエンス流 性弱説経営 人は善でも悪でもなく弱いものだと考えてみる」高杉 康成
「数値化の魔力 「最強企業」で学んだ「仕事ができる人」になる自己成長メソッド」岩田圭弘
「キーエンス解剖 最強企業のメカニズム」西岡 杏
「キーエンス 高付加価値経営の論理 顧客利益最大化のイノベーション」延岡健太郎
「付加価値のつくりかた」田尻 望
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