【書評】「誰でも売れる「プロセス思考」営業術―元キーエンスのトップセールスが教える」藤岡 晋
2025/07/31公開 更新

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【私の評価】★★★★★(95点)
要約と感想レビュー
30年前のキーエンス
著者は、30年前のキーエンスで工場や研究施設にセンサーを売ってトップ営業マンでした。著者がトップ営業マンになった秘訣は、既存顧客への対応とキーマン(見込み客)を増やすことのバランスを常に考えていたからです。
つまり、普通に営業していると、既存顧客にばかり対応して、キーマン(見込み客)を増やすことに時間をかけない営業が多いというのです。営業としては、既存のお客さんと面談して、課題を聞いてセンサーの用途提案を行い、センサーが売れたのだから十分ではないかと言い訳します。
しかし、既存のお客さん対応だけでは売上を増やしていくことは難しいのです。著者の経験では、キーマンリストを3000人のまで増やせれば、売上は自然と伸びていったという。
では営業は、どうすれば空いた時間を作ることができるのでしょうか。それは、面談の質を上げることです。つまり、売れないお客さんと面談しないことなのです。
「売れない顧客」は、ある程度訪問する前に見極めをつける(p123)
売れない顧客と面談しない
具体的には、キーマン(見込み客)へのアプローチの計画段階で、キーマンを予算・ニーズ・決定権などで選別して、電話、メール、DMなどの方法に割り振ります。すべての見込み客に対し、面談や電話をするのは不可能だからです。
そして、最も見込みのありそうな顧客に電話をして、商品のニーズや課題や類似品の使用実績をヒアリングして、売れない顧客と面談しないように注意します。つまり、顧客は必要性があれば、買ってくれるのですから、必要性のない顧客とは面談するだけ無駄なのです。
このようにして面談の質を高めたうえで、売上高◯億円を達成するために必要な面談◯◯件を行うことを計画し、同時に見込み客を増やす取り組みも計画していくのです。いかに既存顧客への対応を効率化しながら、新規の見込み客を増やす活動を取り入れるのかということが難しいのです。
行動計画を立ててください・・売上げとプロセスをリンクさせることが目標達成の第一歩です(p186)
新しい見込み客を探す
新しい見込み客を探す具体的な方法は、次のとおりです。
担当エリア内にどのような企業の本社・工場・研究所や公的研究機関が存在するのか把握し、規模と業種と製品で整理します。公開されているデータを購入してもよいでしょう。その中から、商品が売れそうな企業・事業所・部署を抽出して、電話をかけたり、DMを送るのです。
著者はゼネコンにセンサーが売れるのではないかとの仮説を立て、年商上位50社をピックアップして代表電話に電話して営業したところ、1年間で6社と取引できたという。また、「大学院募集要項」をもとに、その研究テーマからセンサーが売れそうな大学の先生へ営業を行い、科研費でセンサーを買ってもらったこともあるという。
このように既存の顧客対応に満足せず、予算を持っている人、ニーズのある人を探す活動を行う余裕を作るのです。
同じ担当者ばかり訪問していないか?・・案件をつくれるような訪問がどのくらいあったのか?・・事前準備はきちんとできていたか?・・アプローチ数(電話件数)などうだったか?などを検証します(p180)
キーエンスの強さの理由
著者が説明するキーエンスの強さは、営業プロセスの効果測定を行い、共有化してきたことだという。
DM、メール、FAXの告知がわかりやすく興味を引く内容になっているだろうか?お客さんの仕事に合わせた提案になっているか?実機でデモンストレーションを行っているか?実績などPRができているか?など細かい取り組みとその効果を見てきたというのです。
つまり、売上げを伸ばすこととは、営業活動プロセスの確率を上げるゲームのようなものだと著者は言っています。
内容としては当たり前のことかもしれませんが、当たり前を共有して全員ができるようにするのは難しいのでしょう。
キーエンスは現在、売上の半分が海外ですので、海外での取り組みも調べてみたいですね。藤岡さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・「アプローチ」ではお客さんを吟味・選定する・・「予算」「ニーズ」「選定権および決定権」といった切り口でターゲッティングを行っていました(p99)
・ヒアリング・・「アポイントをとる前」であり、電話で行う・・・PRしたい商品のニーズを探る・・課題を聞く・・・使用実績を確認する(p47)
・情報を収集・・・業務内容・・事業所全体の組織・・使用実績・・課題・・導入の可能性・・業界動向・・購入ルート・・社内決裁ルート(p45)
・売りげの内容を2つの切り口で分けます・・・「既存担当者」からなのか「新規担当者」なのか・・「・・PRがきっかけで売れたもの」なのか?「・・受動的な売上げ」なのか?(p153)
▼引用は、この本からです
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藤岡 晋 (著)、日本実業出版社
【私の評価】★★★★★(95点)
目次
序章 結果よりも「プロセス」が大事
第1章 間違いだらけの法人営業の常識
第2章 みずから顧客開拓する営業が成功する
第3章 誰でも成果を上げられる「営業確率論」
第4章 「売上げの4象限」で売れる顧客を確実に探す
第5章 「売っている」を「売れている」へ変える、究極の営業術
第6章 売上目標を細分化してプロセス思考の「行動計画」を立てる
第7章 「決めたこと」ができる人はすぐにでも売れるようになる
著者経歴
藤岡晋(ふじおか すすむ)・・・株式会社ファーストコンサルト 代表取締役社長。1962年生まれ。兵庫県立星陵高校、福岡大学経済学部経済学科卒業。1985年 和光証券株式会社(現みずほ証券)入社。営業に携わる。その後1988年株式会社キーエンス入社。全社営業マンランキング1位を2度受賞。中部日本エリアマネージャー時代はマネージャーランキング1位受賞。2000年に退社し、ファーストコンサルトを設立。生産財メーカーを中心に目標立案・営業戦略立案などのテーマでコンサルならびに企業内研修を行なう。
キーエンス関連書籍
「誰でも売れる「プロセス思考」営業術―元キーエンスのトップセールスが教える」藤岡 晋
「キーエンス流 性弱説経営 人は善でも悪でもなく弱いものだと考えてみる」高杉 康成
「数値化の魔力 「最強企業」で学んだ「仕事ができる人」になる自己成長メソッド」岩田圭弘
「キーエンス解剖 最強企業のメカニズム」西岡 杏
「キーエンス 高付加価値経営の論理 顧客利益最大化のイノベーション」延岡健太郎
「付加価値のつくりかた」田尻 望
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