【書評】「武器としての行動経済学:「売れる」のウラ教えます」弓削徹
2025/04/23公開 更新

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【私の評価】★★★★★(90点)
要約と感想レビュー
物を売るための心理学
この本は、「平凡な木造アパートの借り手を、営業マンのあなたは、どうやって探しますか?」という問いからはじまります。この問いにピンと来ない人は、この本で商売のコツを勉強しましょう。
世の中の商売では、物を売るために心理学を使った手法や仕組みがが使われています。例えば、ハンバーガー店のレジで「ポテトもいかがですか?」と言われるのも、スーパーのレジ周辺に商品が置かれているのも、ガソリンスタンドで洗車カードの購入を提案されるのも、一つの確立された手法なのです。
買い物をしてホッとした瞬間に、笑顔で「〇〇はいかがですか?」と言われると、おもわずYES!と言ってしまうというわけです。
アップセル(単価向上)・・ガソリンをスタンドで給油したあとに、比較的安価な洗車サービスやカーケア商品を提案すると、受け入れてくれるお客様が多い(p38)
限定されると思わず買ってしまう
テレビの通販番組を見ていると、「この低価格で購入できるのは今日だけ!」「限定20台のご案内でしたが、在庫はあと3台です!」と限定品であることを強調していることがあります。このように限定・希少性を強調されると、思わず購入してしまう人が多いから、毎回同じ表現で煽っているのです。
ネットで宿泊ホテルを探していると、「あと3部屋」「今週20人が予約」などの表示がされるのも同じこと。スーパーのPOPに「お1人様12個まで」と掲示したら、「何個でもどうぞ」に比べて約2倍売れた!というデータもあるという。
テレビの通販番組で、無料サンプルを提供したり、初回限定で安くするのには理由があるのです。
複合機を入れたいと思ったとき・・「おすすめの機種は在庫がないらしく、発注順で・・」・・「じゃあ、いま注文するよ!」と思わず電話口で告げてしまいました(p244)
販売促進の事例
個人的には知らない事例が多く、興味深く読みました。例えば、中古ベッドの売上げを倍増させたPOPは、「どんな高級ホテルも、ベッドはすべて中古です」。
「レモン50個分のビタミンC」というキャッチフレーズについては、実は、ビタミンCはアセロラやイチゴのほうが含有率は高いとか。また、三重県の苗木販売店「花ひろばオンライン」では、顧客のほとんどが店が主催する「部活動」に参加しているという。
販売促進のテクニックは誰でも学んでいると思いますが、最後は、このような事例の引き出しで差が出るんだなと感心しました。
キャッチコピーを変更し、「このあとどうなったかというと・・」と最後まで書かない表現に変えたところ、クリック数が2.4倍に増加した(p122)
売れているのには理由がある
売れているのには理由がある!ということがわかりました。
なぜ割高なワンストップでの業務受託をウリにする企業の業績が好調なのか。なぜカミソリのジレットは、カミソリのホルダーを無料で配布しているのか。なぜ火災保険の広告には、この安心が1日あたり缶コーヒー1杯分(約120円)と書かれてあるのか。
他の会社が試行錯誤した結果、最も効果の高い手法を教えてくれているのです。行動経済学は心理学であるため、絶対の正解はありません。その時代や顧客層などで反応は変わりますので、テストして反応を見ながら試行錯誤するしかないのです。
そうした仮説を考えるためにも事例が多くわかりやすい一冊でした。弓削さん,良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・なぜかサブスクは解約しづらい(p170)
・ある外壁塗装業者は、お客様からもらった評価を、「表彰状」風のデザインに入れ込み、何十棟分もウェブサイトに掲載(p108)
・メディアでの紹介・掲載は、・・・純粋な広告掲載に換算すると3倍以上の費用対効果がある(p229)
・キーエンスでは、顧客との接触時間を増やすことがKPIとなっています(p22)
▼引用は、この本からです
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弓削徹 (著)、あさ出版
【私の評価】★★★★★(90点)
目次
プロローグ 個人にも!会社にも!「行動経済学」は役に立つ
第1章 売り方/商談 売り方の視点を変えると売上は激伸びする!
第2章 広告表現 「それなら欲しい!」と言わせる表現を探せ
第3章 価格決定 値札のつけ方一つで利益は大きく変わる!
第4章 ブランド化 長く愛される商品を育てるにはココに注目する!
著者経歴
弓削徹(ゆげ とおる)・・・製造業マーケティングコンサルタント。日本工業大学大学院 技術経営研究科教授。復興庁 有識者会議委員。中小機構 震災復興アドバイザー。中小製造業を支えるマーケティングコンサルタントとして活動。「ノートパソコン」の命名者。全国の商工会議所、経済団体、企業で800回の講師を務める。テーマは販売促進、展示会の活用法、キャッチコピー作成など。
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