キーエンス流「付加価値のつくりかた」田尻 望
2023/07/11公開 更新

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【私の評価】★★★★☆(84点)
要約と感想レビュー
キーエンスはメーカーであり市場調査会社でもある
著者は「キーエンス」で技術営業として働いた後、コンサルタントとして独立しました。キーエンスの営業の特徴は、顧客のニーズに合わせた新商品企画・開発が行われているところです。 キーエンスでは工場に常駐しているのではないかというくらい顧客に密着し、顧客のニーズや課題を把握し、それに対する解決策を提示するのです。
商品化に前には、「こんなものを作ったとしたら、買っていただけますか?」と、本当に売れるのかどうかお客様に直接聞き、最低限の売上の確信を持ったうえで、商品開発をスタートさせるというのです。商品化の投資をする前に、ある程度の利益の見込みができているわけで、キーエンス自体が市場調査会社のようなものなのでしょう。
・価値とはお客様(相手)が感じる(決める)ものである(p48)
業界の人は業界に詳しくない
興味深かったのは、「業界の人は業界に詳しくない」という著者の言葉です。つまり、普通の会社では、自社の成功体験をシェアしていますが、他社の成功事例を知ることは難しいのです。 キーエンスでは業界の多くの現場に営業が入り込んでいますので、そこでの成功事例を情報提供できる立場にあるのです。経営コンサルタントの稼ぎ方に近いのでしょう。
そうした情報提供を可能とする秘密は、キーエンスの営業と技術にも詳しいことにある、と感じました。基本的なことであれば、営業は自分で説明できるので、営業をバックアップする技術営業の人数が極端に少ないというのです。つまり、キーエンスの営業は技術もわかるので、営業が技術者を連れてゾロゾロ大人数でお客様のところに説明に行くことはないのです。それだけ、現場の情報がスピード感を持ってキーエンス内で共有されているのでしょう。
・キーエンスでは、営業と技術営業の守備範囲がかなり重複している(p118)
キーエンスの営業は何でも屋
キーエンスの特徴は、営業は営業だけ、技術は技術だけ、マーケティングはマーケティングだけという仕事の縦割りが少ないことだと感じました。つまり、現場の営業は技術営業並の知識があるし、マーケティング部門かのように顧客のニーズを聞き出し、新商品を提案しているのです。
営業マンというと顧客との接点としてだけの役割で、何も付加価値を生まない企業が多いのですが、キーエンスの営業は何でも屋であり、給料が高いのは当然だと感じました。ただ自社製品を売るのではなく、顧客の問題解決を売るというキーエンスの秘密は、言うは易し、行うは難しの典型なのでしょう。田尻さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・付加価値はニーズが源泉である(p56)
・キーエンスでは、この「お客様も気づいていない潜在ニーズ」を、徹底的かつ的確に探り・・(p67)
・キーエンスにとって世界初・業界初は当たり前なのです(p108)
・お客様のニーズ・・実際に現場に行って、お客様と同じ光景を見る、観察する、体験する(p187)
【私の評価】★★★★☆(84点)
目次
第1章 付加価値における「価値」の話
第2章 それは付加価値か、ムダか?
第3章 付加価値創造企業「キーエンス」
第4章 法人顧客を攻略するための6つの価値
第5章 ニーズの見つけ方と付加価値の伝え方
第6章 つくった付加価値をいかに広げていくか
著者経歴
田尻 望(たじり のぞむ)・・・株式会社カクシン 代表取締役社長CEO。京都府京都市生まれ。大阪大学基礎工学部情報科学科を2008年卒業後、株式会社キーエンスにてコンサルティングエンジニアとして、年30社をサポートする。その後、企業向け研修会社の立ち上げに参画し、独立。年商10億円~2,000億円規模の経営戦略コンサルティングなどを行い、月1億、年10億円超の利益改善を行う。
キーエンス関連書籍
「キーエンス解剖 最強企業のメカニズム」西岡 杏
「今と未来の利益を増やす社長のための経営戦略の本」椢原 浩一
「付加価値のつくりかた」田尻 望
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