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【書評】「二宮金次郎の幸福論」中桐 万里子

2025/08/27公開 更新
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【私の評価】★★★☆☆(79点)


要約と感想レビュー


菜種を蒔けば油が手に入る

二宮金次郎(尊徳)の7代目子孫である万里子さんが、尊徳の考え方を解説します。


尊徳さんは農家の指導方針は、やるべきことを成し、確実に成果を摘み取っていくということです。鍬で大地を掘り起こすこと、春に苗を植えること、草取りをすること、実りを収穫すること。当たり前の作業を積み上げるのです。


新潟で石油が採掘されるのを羨ましがる人に対して、尊徳さんは菜種を育てればナタネ油が確実に手に入ると主張しています。つまり、稲を植えれば米が手に入り、菜種を植えれば油が手に入るのです。尊徳さんの言った「積小為大(せきしょういだい)」は、まさにこのことなのです。


石油を掘り当てなくても、菜種を蒔けば油が手に入る・・・あまりにもシンプルすぎる事実(p54)

遠くをはかるものは富む

そしてその行動は、心からはじまります。心からはじまる行動次第で、農地は荒れ地ともなり、米を収穫できる田んぼにもなるのです。


そして長期的視点も必要です。遠くをはかるものは富み、近くをはかるものは貧すのです。


例えば、米は初冬にだけ実り、人々はその米で12ヶ月間食いつなぎます。それは、人々がそう決めて、行動しているからです。もし、その米で24ヶ月間食いつなぐと決めれば、次の年が飢饉となっても生き延びることができるのです。


同じように、一粒の米を食べてしまえば、たたの一粒ですが、もしこれを春にまき、秋に収穫すれば、百粒以上に増えるのです。


初冬の一カ月にだけ実って、12ヶ月間米を食うのは、人々がそう決定して、そう注意するからだ(p124)

入るから出るを考える

しかし、現実にはうまくいかない人が存在するのも事実です。尊徳さんはうまくいかない人に、どう言って聞かせているのでしょうか。


まず、うまくいかない人がいる一方で、うまくいく人もいます。つまり、うまくいく人は、米を蒔いて米を収穫し、うまくいかない人は麦を蒔いて米が採れないと嘆いているのではないかと言っています。


例えば、村長に土地が痩せているので、尊徳が「腐葉土を他の村から入れるがいい」と助言しましたが、村長は「とてもできません」と言ったという。尊徳は、「お前は赤穂(兵庫県)の食塩を使っているではないか」と叱責したという。


また同じように大便や小便を集めて、来年の肥料にすることを、多くの人がきたないと言ってやらないけれども、来年の収穫を増やすためには、大便や小便を集めるほかにはないとしています。


金がないという人には、入ったものから「出る」を考えることを教え、そうすれば金がないということはないわけです。


実りは無限、貧しさは有限(p25)

与える者が与えられる

尊徳さんは成功哲学においても、高いレベルにあります。


有名なのは「たらいの水」の話。たらいの水は、自分の方へとかき集めようとすると逃げてゆくが、相手の方へ推しやろうとすればするほど不思議なほど自らにかえってきてしまう。「与える者が、与えられる」というのは成功哲学の基本です。


また、「父母も その父母も 我身なり われを愛せよ 我を敬せよ」という尊徳の歌は、自分を生んでくれた父母、祖先への畏敬の念を示しています。やはり尊徳先生は、松下幸之助レベルで深く学ぶ価値があるように感じました。中桐さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言


・書物は、多くは空言である・・・私の場合はそうではない。荒地を開墾し、廃家を復興してから後にこれを書き、衰村を取り直し、廃国を復興してから後にこれをしるす(p85)


・金次郎という人物、若いうちからお伊勢参りをはじめとする観光旅行をしたり、当時は贅沢だった銭湯通いが大好きだったり、なんだかんだとお金を使うことが上手な人でもあったのです(p89)


・はじめの一鍬を入れた先人のかっこよさ(p108)


・大きな田んぼと・・小さな田んぼ・・・絶対に小さな田んぼから耕さなければならない(p69)


▼引用は、この本からです
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中桐 万里子 (著)、致知出版社


【私の評価】★★★☆☆(79点)


目次


第1章 立ちふさがる壁を乗り越える
第2章 得意げに笑う金次郎の底力
第3章 金次郎の仕事の流儀
第4章 いまここに生きる奇跡
第5章 命を楽しむ
第6章 世界を、人を信じる力


著者経歴


中桐万里子(なかぎり まりこ)・・・1974年東京都生まれ。神奈川県で育つ。二宮金次郎(尊徳)の7代目子孫。慶應義塾大学環境情報学部卒業。その後、京都大学大学院教育学研究科に進学し、臨床教育学を学ぶ。2005同大学院博士課程修了。2007年より「親子をつなぐ学びのスペース『リレイト』」を主宰。国際二宮尊徳思想学会常務理事、聖和大学専任講師を経て関西学院大学講師


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