「再建屋の元祖―新説・二宮尊徳」邱永漢

【私の評価】★★★★★（93点）

要約と感想レビュー

二宮尊徳はマイクロクレジット

普通の二宮尊徳のイメージは、薪を背負いながら本を読み、夜も菜種油で本を読む勤勉家でしょう。しかし、邱さんから見た二宮尊徳は、勤勉な人間というよりは、金にうるさい庶民金融家です。

借金のある人を集めて、仲間内で金を出資させ、低利で貸し付けたのです。現代でいうマイクロクレジットといわれるものと同じ仕組みなのです。

二宮尊徳自身はといえば、稼いだお金で田畑を買い、課税の対象になる田畑はすべて小作に出して、自分は小作料をもらっていました。小田原藩の家老の邸へ下男奉公に出た給金は非課税でした。二宮尊徳自身は、税金を支払っていなかったのです。

金次郎のうまさは、金の取立てが上手だというだけではなくて、貸した金の回収ができるように相手の経理内容にまでやかましく立ち入ることであった。（ｐ365）

農業生産の向上

尊徳は基本的に農民ですので、低利の資金調達と合わせて、農業生産の向上を目指しています。そのために、農民のやる気を出させるために優秀者を表彰したり、村を歩きまわり、倹約と勤勉を説いて廻ったのです。

また、領主に新田の年貢免除を了解させ、年貢のない新田の開発を推進したのです。仮に一反の新田を開いたら、50％は自分のもので、50％を翌年の開田料として繰り返せば、収入は増え続けることになるのです。

彼はまず三カ村の土地調査から開始した・・・なによりも生産の絶対数量をふやすのが第一である・・着任の年は、まず例の無利息金融や農具の貸与からはじめたが、翌年からは荒田の開発に着手した。（ｐ301）

藩の支出抑制

尊徳の藩政改革は、１　藩の支出抑制、２　藩の借金整理（債権放棄）、３　年貢の免除による荒田開発、４　農民への無利息金融と農具貸与、５　農民への指導や表彰による意欲高揚から構成されていました。

これらは、全面的な領主の協力がなければ、完遂することはできません。ところが、役人はまったく協力しようとしませんし、たとえ財政がよくなってきたとしても、役人はすぐに増税しようとするからです。

藩の支出抑制は、使用人を減らすとか、衣服の新調をひかえるなどですが、それは格式上やれるものではないというわけです。サムライは百姓を苦しめ、サムライも　格式に振りまわされ、金に首を絞められているのです

財源をふやそうと思えば、個人を富ませる以外に方法はない。個人を富ませるためには、個人の労働意欲を高揚するよりほかはないし、そのためには汗水を垂らして作り出したものが自らの収入になるという道を講じておかなければならない。今日のことばでいえば、増税をやめるか、あるいは逆に減税を断行して、財源は自然増収をまつというやり方である（ｐ337）

年貢の納めどき

「年貢の納めどき」という言葉があるように、いちばん楽な身分は税金で暮らしている階級だと思いました。そして、いつの世も、役人の世界は仕事が遅いのと、財政赤字になるのは避けられないようです。

現代に二宮尊徳がいたのなら、消費税増税はしないのではないかと思いました。邱さん、良い本をありがとうございました。

無料メルマガ「1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』」（独自配信） 3万人が読んでいる定番書評メルマガ（独自配信）です。「空メール購読」ボタンから空メールを送信してください。「空メール」がうまくいかない人は、「こちら」から登録してください。 空メール購読 空メール解除

この本で私が共感した名言

・資本家の搾取によって大衆はますます貧乏のどん底に突き落とされると考える代わりに、金次郎は、人間は自分の体を動かしさえすれば、太陽は恵みを与え、大地は養分を与え、りっぱに作物にして人間に返してくれるものだと、信じたのである（ｐ225）

・千二百石取りといえば、表向き、一年に千二百俵の実収入があることになっている。しかし、江戸時代も中期から末期になると、禄高はもはや単なる名目にすぎなくなって、実際は減俸につぐ減俸を強いられ、服部家でもせいぜい四百俵、つまり三分の一の実質収入しかなかったのである（ｐ236）

・同じナスを作るにも、ただ植えておくのと、肥料をやるのとでは、収穫がだいぶ違います。学問というのは人間の肥料のようなもので、学問のない人間はできのよくないナスと同じようなものです（ｐ222）

▼引用は下記の書籍からです。

【私の評価】★★★★★（93点）

目次

第一章　生い立ち
第二章　千手観音
第三章　サムライと百姓
第四章　最初の武家奉公
第五章　金と女
第六章　月賦販売の元祖
第七章　桜町陣屋
第八章　二宮金融
第九章　派閥争い
第十章　救いの神
第11章　黄金時代
第12章　小田原藩
第13章　現世とソロバン
あとがき　尊徳と現代

著者経歴

邱永漢（きゅう　えいかん）・・・大正13（1924）年3月台湾生まれ。東京大学経済学部卒業。作家、経済評論家。経営コンサルタント。投資、税金に強く「金儲けの神様」と呼ばれている。数多くの会社を経営している。

楽天ポイントを集めている方はこちら

読んでいただきありがとうございました!

この記事が参考になった方は、クリックをお願いいたします。
↓　↓　↓　
人気ブログランキングに投票する

メルマガ「１分間書評！『一日一冊：人生の智恵』」 50,000名が読んでいる定番書評メルマガです。購読して読書好きになった人が続出中。 ＞＞バックナンバー

もちろん登録は無料！！ 　　　　　　　　配信には『まぐまぐ』を使用しております。