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「中国人と日本人」邱永漢

2021/10/22公開 更新
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「中国人と日本人」邱永漢


【私の評価】★★★★☆(80点)


要約と感想レビュー

中国人は国とを信じていない

日本人は職人であり、中国人とは商人と言われますが、中国と日本でビジネスをしてきた邱永漢さんが、経験を含めて中国人というものを教えてくれる一冊です。1993年の本なので1997年に香港が中国に返還されることになっていたのですが、「一国二制度で50年間資本主義維持」を信用している中国人は少なかったという。


なぜなら中国人は、国というものを信じていないからです。中国人にとって国のイメージは軍閥が勢力争いをして、勝ち残った勢力が支配者として君臨しているにすぎないのです。そして支配者の対抗勢力は粛清されたり、一族郎党抹殺されることもあり、こうした社会の中で中国人は生き抜いてきたのです。


中国側は「一国二制度」を採用することによって、以後五十年間、香港で資本主義体制を維持することを英国に保証している・・・香港住民で中国政府の言うことを額面どおり信用する人はあまりいない(p94)

自分の血縁や人脈を大切にする

つまり、中国とは官僚社会という壁があり中国人でさえ生きにくい社会なのです。だからこそ利己主義の中国人は、自分の血縁や人脈を非常に大切にするわけです。役人は法律を利用してワイロを要求するし、商売人はうまくやって役人から法律の抜け穴を教えてもらおうとする社会なのです。


中国の社会はすべてが人間関係でつながっており、中国人はこれを「関係(クワンシイ)」と呼ぶという。。関係がよければ、何でも通るし、関係がなければ何も進まないのです。


そこにお金と技術と誠意を持った日本人が、ろくに言葉もわからずに中国ビジネスに参入しても苦労することは目に見えているのでしょう。著者のお勧めは、中国人と日本人の間に台湾人のような仲介者を入れることです。中国人と日本人の特性を知っている人が間に入ることで、トラブルがだいぶ減るわけです。


東南アジアに行くと、どこの国でも小役人から警察官まで平気でワイロを取る・・・こんな悪い癖を東南アジア中に教え込んだのは、たいがいが華僑である(p100)

法律はワイロをもらうためにある

法律を守ろうとする日本人と、法律は言いがかりをつけてワイロをもらうためにあると思っている中国人とで話が合うはずがないのでしょう。これはインフラプロジェクトでも契約をすればその契約をなんとか守ろうとする日本の企業と、契約してしまえば、後で予算がなくなったとか工期に間に合わないと言い出す中国企業の差となっている気がしました。


ともそも、中国の組織は役所にしても会社にしても、バラバラの個人によって成り立っており、上と下の連帯感がないという。そして、どうやったら金持ちになれるか、いつも考えており、チャンスと思えば、いつでも裏切る準備ができているというのです。


中国人は、法律や規制は公益のためにあるとはあまり思っておらず、役人が商売人に言いがかりをつけてお金をゆするためにあると思っている(p201)

日本人と中国人はまったく違う

日本人は批判を聞きたがるが、中国人は自画自賛ばかりだという。日本人は学歴や規格品を重視しますが、中国人に学歴や規格はあまり関係がないというのです。


日本人と中国人は外見は変わりませんが、これだけ歴史的にも文化的にも差異のある民族はないのではないでしょうか。邱さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・権力者にとり入ろうとする時は、本人よりもその息子とか娘とか弟・妹、はては奥さんの兄弟にまで手をのばす(p120)


・中国人ほどおべんちゃらのうまい国民をほかに知らない・・・しかし、よく考えてみると、人にお世辞を言う人は、人にお世辞を言ってもらいたい人である(p136)


・中国人のように組織を無視して、実力だけで勝負する人たちにとって学歴はどうでもいいのである・・・日本人は商品をつくるように人間も規格品をつくろうとする(p106)


・日本人は第三者の批判を聞きたがるのに対して、中国人の話は徹頭徹尾、自画自賛で終わる。中国人が経済や社会の面で日本人に後れをとったのは決して偶然ではないように思う(p142)


▼引用は、この本からです
「中国人と日本人」邱永漢


【私の評価】★★★★☆(80点)


目次

こんなにも違う中国人と日本人
社会主義市場経済をバカにするな
過去にこだわって未来を見誤るな



著者経歴

邱 永漢(きゅう えいかん)・・・実業家。1924年生まれ。東京大学経済学部卒業。台湾より香港へ亡命し、直木賞受賞作家となる。その後、株の神様、お金の神様といわれながら、事業活動を行い、現在も年間120回飛行機に乗って、東京、台北、上海を飛び回る。著作は約400冊にのぼる。


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