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二宮金次郎の真の姿を学ぶ「日本人のこころの言葉」二宮康裕

2020/10/05公開 更新
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「日本人のこころの言葉」二宮康裕


【私の評価】★★★★★(90点)


要約と感想レビュー

幕藩体制は借金依存

江戸末期、天明・天保の飢饉により田畑は荒れ、貨幣経済の浸透により貧富の差が拡大し、幕藩体制は借金依存で破綻寸前でした。そうした中で「倹約」「勤勉」と「相互扶助」で田畑を開墾し、借金を返済し、皆が幸せになる改革を進めたのが二宮金次郎なのです。


その改革とは「倹約」により出血を止め、高利の借金は低利に借り換え、次男、三男による開墾を推奨し農業収入を増やしていくことでした。まず最初に藩が率先して倹約し、農業生産拡大により民を豊かにして、その民の利益を藩が配当してもらう、という考え方でした。


この考えの根底には、人が困窮・難渋している原因は、働くべきときに怠けた場合か、収入以上に支出してしまうかということです。収入の範囲内で生活するという「分度」を忘れなければ、赤字にならないのです。救済金や借財の帳消しは、その場しのぎに過ぎず、本質の改善にならないのです。


上に立つ者には率先垂範が求められる・・・小田原領曽比村の改革では、富農である地主が所有地を貧窮にあえぐ小作人に無償で提供し、小作人が耕作して収穫した作物を自己のものとする権利を認めました(p147)

自ら率先垂範

しかし、金次郎の改革は成功しては、挫折し、そこから立ち上がり、また学ぶということの繰り返しでした。42歳の時には上司からイジメられ、農民の協力を得られず、金次郎は行方不明になったこともあったという。


また、60歳頃には支援者が亡くなり、藩の反対派が盛り返すこととなり中断される改革も多かったのです。例えば、小田原藩では支援者である大久保忠真(ただざね)(老中筆頭)が死去すると、金次郎による改革事業を続けるかどうかに関して藩論は分裂し、これを廃止したという。また、烏山藩でも同様に頓挫しているのです。


こうした困難な経験から、上に立つものとして率先垂範し、周りから可哀そうと思われるくらい自己を捨てるスタイルを金次郎は確立していったようです。


金次郎が桜町領の役所における上司との対立を克服できずに、精神的に追いつめられて・・・自分では気づかなくとも、自己の存在・態度・言葉づかいなでが相手に不快感を与え、自然と敵をつくってしまうもものですが、金次郎はこのことを認識し、自己を捨てる・・・これは人のために、金銭・物資・労力を譲り、ひいては自己自身さえも譲るという思想です(p41)

民ありて藩あり

幼いころの金次郎は、13歳で父を15歳で母を失い、家畑も水害で流され伯父の家に預けられています。そうした悲しい体験を持ちながら、「民ありて藩あり」という理想を自分の時間、金、生活を捨てて社会のために活動した金次郎でした。


私にとっては二宮尊徳でさえ、現状を変えようとすれば、失敗もすればイジメにも会うのだな、とちょっと心が軽くなりました。二宮さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・金次郎は、社会的弱者を救済する場合を除いて、施与ではなく、貸与を行いました。自立をうながし、村落ごとの共助を求めたのです(p99)


・農民の苦境は単に飢饉による食糧不足だけではなく、高利の借金に苦しんでいました。そこで15~20%にも及ぶ高利の負債を無利息金に借り換えさせ・・・金次郎は農民に、自身で家屋敷や田畑を守り、子どもたちに相続していくことこそが最も大切なのだということを力説しました。田畑を失う大きな要因は高利の借財でした・・(p150)


・相手を非難するところがあると、相手に反撃されるのが世の常です。そのような気持ちを一切捨て、相手に穏和なこころで接すれば、相手から非難されるようなことはありません(p40)


・君子は金銀を得るをもって宝となさず。領地の富をもって宝となす。小人は領地の富をもって宝となさず。金銀を得るをもって宝となす(「報徳記」43)(p69)


・金次郎は村人たちを指導するとき、書簡を回し読みさせる手法を用いることがありました(p107)


・金次郎が祖先の菩提を供養するために、菩薩寺の善栄寺に50両を寄付したときのことです。金次郎は善栄寺に、その50両を当時としては極めて低利の8%で村民に貸し付けさせ、利子の4両を毎年の供養料に充ててほしいと要望します(p158)


▼引用は、この本からです
「日本人のこころの言葉」二宮康裕
二宮金次郎 、創元社


【私の評価】★★★★★(90点)


目次

1 道理に従い、徳に報いる
2 民を思い、民のために生きる
3 分を知り、将来に譲る
4 いかに改革を進めるか



著者経歴

二宮康裕(にのみや やすひろ)・・・二宮総本家当主。1947年、神奈川県生まれ。東北大学大学院。出版社編集部、公立学校教員を経て、金次郎研究に専念。


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