「新・孫子の兵法~誰もが「起業家」でないと生き抜けない時代のビジネス戦略」田口 佳史
2022/03/01公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(78点)
要約と感想レビュー
著者は東陽思想研究をベースにしたタオマネジメントという経営思想を教えています。この本では、孫氏の兵法をビジネスに応用するポイントを教えてもらいます。孫氏の兵法は戦いの書ですので、どんなに頭の良い相手でも、どんなに汚い手を使う相手でもどんなに強い相手でも、勝てはしないかもしれませんが、負けない方法はあるように感じました。
例えば、新規ビジネスをはじめるときには、希望的観測ではなく最悪でも耐えられることを確認してから動くこと。短期決戦で勝ちを確定させること。短期に投資を回収すること。場合によっては、あえて投資をせず、売上やシェア拡大を目指さないという判断も必要ということです。戦争なら死ななければ、いつか勝つ戦いができるかもしれません。ビジネスなら倒産しなければ、いつかチャンスが来るかもしれないのです。
・太平洋戦争における日本軍は、「戦争とは財政なり」をまったく理解していませんでした・・・エビデンスではなく、ポピュリズムで動いてしまったのです(p37)
ウクライナとロシアの戦争中でもあり、「敵が攻めてこないことを期待するのではなく、いつ攻めてきてもいいだけの備えを頼みとしなさい」と書いてあるように、やはり孫氏の兵法は戦いの本なのだと実感しました。戦争においても、ビジネスにおいてもいかなる状況、いかなる相手でも最後には勝たなければなりません。それは不可能なことなのではなく、事前の準備も考えれば、打つ手はかならずあるのです。
問題は、そうした課題への事前の準備は短期的にはマイナスのことが多いので、対策を実行しようとする人を批判する人は多いし、それで失脚してしまう人も多いということでしょう。国家レベルでは安保法制や憲法改正など批判を覚悟で国の安全のためにやるべきをやるという人が必要ということです。同じようにビジネスでも、戦える収益性・安定性の高い会社にするための対策をやれる人は、経営者以外にいない思うのです。
東洋思想を切り口にビジネスでアドバイスするというのは、一つの説得力のあるフレームワークとしておもしろいものだと思いました。田口さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・会社に面倒をみてもらうという意識ではなく、個人事業主として会社とエージェント契約をしているような感覚でいなければ、何年、何十年先まで働き抜いていくことはできないでしょう(p3)
・「ライバルたちがどんなに汚い策を弄しても、簡単には騙されない、したたかな体質」を養いましょう(p30)
・あまりお人好しの外交をしていると、舐められ、攻め込まれる一方です。むしろ「怒らせたら怖い国だ」と思わせたほうが、平和を保てるのです(p49)
・「敵より先に戦地に行き、待ち受けろ」・・・会社訪問や工場見学の場合も、早めに到着して周囲を見て歩くようにしています(p84)
【私の評価】★★★☆☆(78点)
目次
1章 計篇 フィロソフィーを持っているか。軽んじてはないか
2章 作戦篇 拡大を「善し」とすることに、正確な根拠はあるか
3章 謀攻篇 確実に勝てない限り戦わない、と割り切れるか
4章 形篇 「戦う前から勝っている」状態まで準備しているか
5章 勢篇 「自社にとってのチャンスは何か」に即答できるか
6章 虚実篇 変化することを恐れてはいないか
7章 軍争篇 危機というチャンスを待ちわびているか
8章 九変篇 セオリーを外れたときに最善策を打てるか
9章 行軍篇 ビジネスと組織経営を秤にかけていないか
10章 地形篇 ほころびはないか、内外に目を向けているか
11章 九地篇 状況に応じた戦い方を用意しているか
12章 火攻篇 大企業と戦える先端分野を生かしているか
13章 用間篇 情報力の時代に人間力を磨いているか
著者経歴
田口佳史(たぐち よしふみ)・・・1942年東京生まれ。東洋思想研究者。日本大学芸術学部卒業後、日本映画新社入社。記録映画監督として活躍中、25歳のときにタイ国で重傷を負い、生死の境で「老子」と出会う。以後、中国古典思想研究に従事。1972年株式会社イメージプラン創業。東洋リーダーシップ論を核に置き、2000社にわたる企業変革指導を行なう。2009年から慶応丸の内シティキャンパスで担当している「論語」「老子」講義などが人気となる。
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