「論語と老子の言葉「うまくいかない」を抜け出す2つの思考法」田口 佳史
2023/04/05公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(81点)
要約と感想レビュー
上り坂の儒家、下り坂の老荘
「論語」といえば、「仁、義、礼、智」を説きながら、組織のリーダーのあり方を孔子が解説したものです。「論語」が多くのビジネスマンに読まれているのは、普遍的な成功法則が書いてあるからでしょう。一方、「老子」といえば、「足るを知る」というように、自然体を重視したもので、形の成功よりも心の満足を重視した教えです。
著者は、「上り坂の儒家、下り坂の老荘」という言葉を紹介し、「競争の時代」である人生の前半は、「論語」を適用するのがよく、「無競争の時代」である人生の後半は、「老子」が合うとしています。組織や人間関係、経営やリーダーシップで悩む社会人は「論語」を参考にして、肩書や組織内の地位が失われる退職後が見えてくる50歳以降は「老子」を読むとよいのでしょう。
論語は、往々にして、物事の基本や大前提を教えてくれます・・ただし、その先には基本に縛られない自由な世界が広がっています(p44)
「好む」というのは「楽しむ」には及ばない
「論語」では、地位が得られないことを悩むのではなく、どうしたら地位が得られるのかを考えたほうがいいと書いてあるように、現代の成功哲学に近いものを感じます。「論語」では義理人情や道徳を重視しており、日本の倫理観に大きな影響を与えているように思います。
また、一日一日「自分が知らなかったこと」「わからなかったこと」を確認するとよいと「論語」に書いてあるように、学校教育とも人材育成の点でも「論語」が現代社会にぴったり合うのです。私が「論語」で一番好きなのは、「知っている」というのは「好む」には及ばない。「好む」というのは「楽しむ」には及ばない、という言葉です。
君子は義に喩(さと)り、小人は利に喩る・・「利」そのものを否定しているわけではありません(論語)(p51)
足るを知る
56歳の私には、「老子」の「目に見えるもの」を満たそうとするのではなく、「心」を満たそうとすることこそ大事という考え方がしっくりくるように思います。老子の「足るを知る」「満たされるほど不自由になる」という中庸の勧めが、心を軽くしてくれるのです。
著者が論語の「君子は坦として蕩蕩たり」を引用して坦として、蕩蕩としているのが「豊かな人だ」と言うように、自分の好きなことをやりながら、他人の言葉に右往左往せず、ゆったりと生きることができれば、幸せな生活といえるのではないでしょうか。
二十年間、毎朝二時間、東洋の古典を読み続け、それが楽しくて仕方がないという著者の東洋の思想への思いが伝わってきました。田口さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・吉田松陰の「松下村塾」・・・前回の講義の振り返りがあり、実践報告から入ります・・「何を実践したのか」をシェア(p25)
・江戸時代には「皮膚の理解」「肉の理解」「骨の理解」「髄の理解」というおもしろい表現がありました(p26)
・形のないものは、隙間がない、どんなところにも入っていける(老子)(p12)
・リーダーと言えば、大胆で勇猛果敢なイメージがあるかもしれないが、実施には、超がつくほど慎重だと老子は語っている(p215)
【私の評価】★★★★☆(81点)
目次
1章 学びとは
2章 欲望とは
3章 競争社会とは
4章 休息とは
5章 豊かさとは
6章 成功とは
7章 女性の活躍とは
8章 リーダーシップとは
9章 老いとは
10章 人間関係とは
著者経歴
田口佳史(たぐち よしふみ)・・・一九四二年東京生まれ。東洋思想研究家。イメージプラン代表取締役会長。新進の映画監督としてバンコク郊外で撮影中、水牛二頭に襲われ瀕死の重傷を負い入院。生死の狭間で「老子」と運命的に出会い、「天命」を確信する。「東洋思想」を基盤とする経営思想体系「タオ・マネジメント」を構築・実践。東洋と西洋の叡智を融合させ「人類に真の調和」をもたらすべく精力的に活動中。
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