二千日回峰行とは「一日一生」酒井雄哉
2023/04/04公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(84点)
要約と感想レビュー
二千日回峰行
著者は七年かけて比叡山中を1000日間、4万キロ歩く千日回峰行を2回行ったという。著者は歩くことで教えてもらうことが多いから、歩き続けるのだというのです。例えば、山道を歩いていると、朝露で服がずぶぬれになってしまうので、いやだなあ、と思いながら歩いていたという。ある時、小川の水を飲んだとき、この水はあの朝露の水と同じだと気づいて朝露に濡れるのがいやではなくなったというのです。
また、山を歩いているとき、東から朝日が上り、西の空に月が見えたという。これは日光菩薩と、月光菩薩だなあと感激して、仏さんがこんな素晴らしい風景を見せてくれた。で、仏さんは日光と月光の真ん中にいるはずだ。だとしたら自分のいるところではないのか。実は仏さんは、自分の中にいる、と実感したというのです。7年間も自然の山の中をあるき続ける千日回峰行だからこそ、神秘的な風景と出会い、考え続け、新しい発見があるのだと思いました。
・なるほどそうか、仏さんなんて探したっていないんだな、自分の心の中にあるんだな(p110)
一日一生
どうすれば7年間も厳しい修行を続けることができるのかといえば、ただ、一日一日、同じことを繰り返しているだけだというのです。くるっくる、くるっくる、と繰り返しているという。一日20キロも歩いていれば、草履は一日でぼろぼろになってしまいます。草履のように、今日の自分は今日でおしまい。明日はまた新しい自分なのだから、一日一日を繰り返しているだけだというのです。自分の与えられた人生を大事に、こつこつと繰り返すことが大事ではないだろうかと、問いかけてくるのです。
そんなにすごいことをする必要はないのです。人生で大事なのは、人からすごいと言われることではないのです。今の自分の姿を自然にありのままにとらえて、命の限り、本当の自分の人生を生きることが大事ではないのかと著者はいうのです。ただ、どうしても修行していれば疲れることもあるから、そうしたときには、「足は疲れてるから、今度は肩、頼むぞ」と違うところに心を集中させてみるという。そうしているうちに、なんとかなるのだという。本当なのでしょうか。
・人間のすることで、何が偉くて、何が偉くないということはないんじゃないかな・・(p16)
修行とは時間をかけて考えること
90日間、立ちっぱなしでお経を唱えながらぐるぐる歩き回る「常業三昧」という修行があるという。立ちっぱなしだから、寝る時も柱に渡した木の棒にもたれて少し休むくらい。そんな厳しい修行の中で、ここで死んだら、自分はこの山の土になるんだなあと思ったら、そこの生き物たちの養分になれるから幸せでうれしいような気がしたという。極限の状況では、人は自然と一体化してしまうのでしょうか。
著者は二千日回峰行しても自分はそんなに偉くないと言っています。そして自分の過去を振り返り、無駄だったことが無駄じゃない。どんなひどい目にあっても、時間がたてば必ず、結果的にはよかったって時がくるというのです。だから、あせることもないし、自分はだめだと思う必要もないという。
修行とは時間をかけて考えることなのだと思いました。そして考えるとは答えを得るためではなく、考え続けることが大事なのだということです。ふかいですね。酒井さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・何をやるにしても「何のために、何をもって」と考える・・自分の人生として、こうふうにやるべきだと考えて、やればいい。「一隅を照らす」とはそのことなんだよ(p81)
・肝心なのは答えを得ることじゃなく、考え続けることなんだな(p84)
・仏さんはいつも心の中にいる。自分の心の中の仏さんを見て、歩いていくことなんだな(p110)
【私の評価】★★★★☆(84点)
目次
第1章 一日一生
第2章 道
第3章 行
第4章 命
第5章 調和
著者経歴
酒井雄哉(さかい ゆうさい)・・・1926年(大正15年)9月5日 - 2013年(平成25年)9月23日 ) 天台宗の僧侶。大阪府生まれ。太平洋戦争時、予科線へ志願し特攻隊基地・鹿屋で終戦。戦後職を転々とするがうまくいかず、縁あって小寺文頴師に師事し、40歳で得度。約7年かけて約4万キロを歩くなどの荒行「千日回峰行」を80年、87年の2度満行。天台宗北嶺大行満大阿闍梨、大僧正、比叡山一山 飯室不動堂長寿院住職を務めた。
千日回峰行関連書籍
「一日一生」酒井雄哉
「人生生涯小僧のこころ―大峯千日回峰行者が超人的修行の末につかんだ世界」塩沼 亮潤
「比叡山大阿闍梨 心を掃除する」光永圓道
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