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「2017年 世界最終戦争の正体」馬渕 睦夫

2017/07/26公開 更新
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2017年 世界最終戦争の正体


【私の評価】★★★☆☆(75点)


要約と感想レビュー

 日本の元外交官が2016年10月のトランプ大統領決定前に、国際情勢について書いた一冊です。国際社会では、ナショナリズムとグローバリズムが勢力争いをしているという。グローバリズムとは、世界を一つの市場にしようという考え方であり、国際銀行家たちの世界ネットワークが目指しているのです。


 トランプはナショナリズムであり、中国はアメリカの脅威として認識しています。一方の民主党クリントンはグローバリズムを支持しており、中国はアメリカがグローバル化の中で取り込むものと考えているのです。トランプは現実主義、クリントンは理想主義ともいえるのでしょう。


・リビア内戦時に反体制派を援助したアメリカは,カダフィ大佐が暗殺された後,彼らに供与した武器を回収して,シリアの反体制派に送る作戦を行いました。現地でこの作戦の指揮を執っていたアメリカのスティーブンス大使が,2012年9月11日リビアの東部の都市ベンガジで過激派の襲撃にあって殺害されたのです・・この作戦の指示を出していたのが,ヒラリー・クリントン国務長官・・彼女はスティーブンス大使に対する指示を私用メールを使って行っていたのです(p116)


 グローバリズムを志向する勢力は、世界単一市場を目指すために、具体的に行動しています。東欧のカラー革命やアラブの春のような政変を起こし、独裁国家から民主国家へ移行させ、世界市場に取り込もうとしているのです。そのためにマスコミによる情報戦や政治的手段だけでなく、デモや武力も行使しています。


 ロシアのプーチン大統領は、そうした動きに対抗しているために、攻撃を受けているという面があるのでしょう。EUはロシアのガスを輸入することで世界単一市場の中に取り込もうとしていますが、ロシアはクリミア侵攻でそれに抵抗しているのです。


・2013年11月,ウクライナとEUとの連合協定への署名をヤヌコビッチ大統領が土壇場で拒否したことに端を発した新欧米派による反政府デモは,2014年2月になってヤヌコビッチ大統領を力で追放するという事実上のクーデターにまで発展しました・・世界のメディアはなぜかこの非合法の政権転覆であった点について沈黙を守り続けたのです(p18)


 こうした戦いが世界で行われている中、「平和のために憲法9条を守ろう」とか「集団的自衛権は戦争に繋がる」などと真面目に議論している状況は、日本はおめでたい国家であるとしています。もちろんその原因として、そうした考え方を広めようという共産勢力も活動しているわけです。


 すでにグローバリズムの一角に取り込まれている日本が、戦争も辞さないグローバリストの動きにどう対応していくのか。共産化を目指す勢力の工作活動にどう対処するのか。こうした課題に注力すべき日本の総理大臣が、森友学園や獣医学部問題などという国内問題に悩まされているのは、まことに残念に感じました。


 馬渕さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・昨年の安保法制国会審議を巡って野党や反日メディアが繰り広げてきたお花畑的な安全保障議論は,このような世界の厳しい現実から隔絶した異次元の空論に終始しました。彼らはおめでたいことに,憲法9条さえ擁護すればわが国は平和だと一方的に信じている・・(p7)


・誤解を恐れずに言えば,外国の侵略に対し抵抗しない日本人を養成するのが,日教組の平和教育・・・もし,彼らが意図的に無抵抗教育を行っているとすれば,彼らは外国勢力のエージェントと見做されても仕方がないでしょう。その意味で,9条平和主義者も彼らを持て囃すメディアや知識人も結果的に外国のエージェントになっていないか,猛省を促したいと思います(p67)


・わが国において反日的な歴史認識が一向に改まらない理由は,大学にマルクス主義者や変種マルクス主義たるフランクフルト学派を信奉する学者が依然として幅を利かせていることからも容易に窺うことができます(p69)


・共産党が入った人民戦線が一時期政権を奪取した国々では,反対派や市民に対する過酷な弾圧政策のため,かえって国民の反発を招き内戦を招来する結果となりました。例えばスペインでは,人民戦線政府とフランコ将軍率いる勢力の間で過酷な内戦が行われ,最終的にフランコ側が勝利しました(p68)


・共産党の民族解放闘争というのは,現在のイスラム過激派によるテロ闘争と類似しているのです。民族解放闘争というのは暴力による政権奪取であり,中国の毛沢東が中華人民共和国を樹立した戦法やかつてのベトコン,カンボディアのポルポトなどと基本的に変わることはありません(p118)


・国後・択捉二島の日本への帰属について・・恐らく最後まで残る問題は、ロシアが施政権を日本に返還した後も軍事戦略の観点から、国後島と択捉島の間の海域における潜水艦の自由航行を確保することを強く要求してくる・・場合によっては施政権返還後もわが国がロシア海軍が国後島と択捉島に一定期間駐留することを認めることが必要になるかもしれません。この点も沖縄と同じ方式です(p220)


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【私の評価】★★★☆☆(75点)


目次

第1部 世界で起きた地殻変動
第2部 誰が世界に戦争を仕掛けているのか
第3部 21世紀を破滅から救え



著者経歴

 馬渕睦夫(まぶち むつお)・・・1946年生まれ。吉備国際大学客員教授。1968年(昭和43年)に外務省入省。外務本省では、国際連合局社会協力課長(1984年-1986年)、大臣官房文化交流部文化第一課長、東京都外務長(1995年-1997年)などを歴任。在タイ日本大使館特命全権公使(1997年-2000年)。2000年(平成13年)に特命全権大使キューバ国駐箚に就任。2003年(平成15年)5月には財団法人国際開発高等教育機構専務理事に就任、2005年(平成17年)より駐ウクライナ兼モルドバ大使を3年間務め、2008年(平成20年)11月、外務省退官。同月防衛大学校教授に就任し、2011年(平成23年)3月、定年退職。日本文化チャンネル桜などの政治系テレビ番組にコメンテーター・論客として出演し始める。2014年より現職。


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