【書評】「「経済成長」とは何か-日本人の給料が25年上がらない理由 」田村 秀男
2025/12/30公開 更新
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【私の評価】★★★★☆(81点)
要約と感想レビュー
財務省には逆らえない
著者は日本経済新聞の東京本社編集委員を経て、現在、産経新聞編集委員兼論説委員となっています。いわゆるオールドメディアの記者であった著者の目から見ると、日本においては財務省の意向に逆らうのは難しいという。
財務省は一般会計と特別会計、合わせてGDPの50%をコントロールし、政治家は地元への予算獲得に汲々としているという。
経財界は法人税減税をお願いし、大学は研究予算の査定を気にし、学者は「財政均衡化」を唱えて経済諮問委員の座を狙い、経済記者は財務官僚の説明なしに記事を書けないというのです。
つまり、日本人は財務省に逆らえないのです。
「書きたいことが書けない」のは経済誌の宿命・・財務省の権威に頼らざるを得ないとか、メガバンクを揺るがすようなスクープを打つと社会に悪影響があるとか、いずれにしても取材源なので、記者はそっぽを向かれたくない。政治部の記者も時の政権に弱いということがあります(p288)
バブルを潰す日本・デフレを潰す米国
日本を支配する財務省は、日本のバブル景気ときに何をしたのでしょうか。
日銀が金融の引き締めを始めたのは1988年です。株価が下がりはじめた1990年には、大蔵省が土地融資の総量規制を行いました。さらに1991年には地価税を導入し、不動産と株価を叩いたのです。
著者は不動産価格が下がることが、いかに信用メカニズムを委縮させるかについての考察が足りなかったと批判しています。
反対にアメリカはリーマン・ショックでFRBはどんどんドルを刷って、紙ずず同然になった債権類をい上げ、危機に陥っていた金融機関を救済しました。
バブル崩壊後の経済停滞やデフレ不況に対し日本は消費税増税を行い、アメリカはリーマン・ショックに短期間にマネー供給量を増やして危機を脱出したのです。
株価や不動産価格が適度に上がっているのに、バブルだからといって押さえつけるのは、むしろ経済をおかしくする・・不動産価格が適度に上がるということは目くじら立てる話ではありません。むしろ下がるほうが恐ろしい(p105)
増税で出世できる財務省
2013年、第2次安倍政権のアベノミクス初年度では、金融緩和と財政出動と円安効果で景気は上昇に向かいました。
企業がやっと前向きになりはじめたとき、2014年に消費税率を8%へ引き上げたのです。著者は民間のお金を奪って、国債の償還に回すということで、国内需要を蒸発させたと批判するのです。
当時、多数派の学者が皆「消費税の増税をやらなきゃいけない」の大合唱。財務省の考えに近い学者が主流になり、メディアを使って均衡財政論を主張し、財務省がそれに乗るという構図です。日銀の黒田東彦総裁は消費税率を来春に引き上げても「成長が続く」と財務省の消費税増税を支援していました。
黒田氏は財務官だった2002年、日本国債の格付けが下げられたとき、「自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」「日本は世界最大の貯蓄超過国」「日本は世界最大の経常黒字国、債権国であり、外貨準備も世界最高」と、日本財政の健全性を主張しており、まさに二枚舌と著者は批判するのです。
財務省では増税して成功すれば、必ず後世まで褒め称えられます・・結局、官僚は出世が第一です・・「減税すべきだ」「歳出を増やすべきだ」と主張する官僚が財務省にいたら、まず出世できません(p52)
著者の主張は減税と財政出動
著者の主張は、減税と財政出動です。
1997年に消費税増税が3%から5%となり、2014年に8%、2019年に10%となりました。消費税収は10.6兆円増え、GDPは2兆円減、家計消費は正味で10.7兆円減ったという。だから逆をやれば、家計消費が10兆円増え、GDPが増えるということです。
私個人としては、減税は賛成。財政出動には反対です。官僚がお金を使うと、天下り先と利権が増えるだけだからです。減税のほうが、補助金やこども家庭庁より効果的という仮説です。
いずれにしろ、日本のGDPの半分を財務省がコントロールし続けているとすれば、今の日本の状況について責任を持つべきは、正論では総理大臣ですが、実質は財務省なのでしょう。
田村さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・経済成長をさせることが、政治家の最大の使命と言えます。経済を成長させられない政権は失格です・・ここ30年間、ずっと失格だった。その間の平均経済成長率を見ると、0.7%です(p50)
・自国通貨建ての国債は、中央銀行がしっかりと買い支えられるので暴落しない(p56)
・中国は必要とする外貨を香港市場でいくらでも調達できます・・・習近平を封じ込めるためには最早、香港ドルとアメリカドルの交換停止をやるしかない(p204)
・「中英共同声明」では返還後の香港における中国の法律や制度はそのまま適用されず、特別行政区となり「一国二制度」の政策を50年間維持すると約束されています・・中国は、こうして定められた香港の高度な自治を、ことごとく奪おうとしています(p199)
▼引用は、この本からです

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田村 秀男 (著)、ワニブックス
【私の評価】★★★★☆(81点)
目次
第1章 経済とは?
第2章 経済成長とは?
第3章 経済成長と歴史
第4章 経済成長と世界
第5章 中国という怪物
第6章 日本の問題
著者経歴
田村秀男(たむら ひでお)・・・産経新聞特別記者・編集委員兼論説委員。昭和21(1946)年、高知県生まれ。早稲田大学政治経済学部経済学科卒後、日本経済新聞入社。 ワシントン特派員、経済部次長・編集委員、米アシ゛ア財団(サンフランシスコ)上級フェロー、香港支局長、東京本社編集委員、日本経済研究センター欧米研究会座長(兼任)を経て、平成 (2006)年に産経新聞社に移籍、現在に至る。
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