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「Nの肖像 ― 統一教会で過ごした日々の記憶」仲正 昌樹

2017/04/02公開 更新
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Nの肖像 ― 統一教会で過ごした日々の記憶


【私の評価】★★★☆☆(72点)


要約と感想レビュー

統一教会から脱会

統一教会から脱会した仲正 昌樹さんの一冊です。仲正さんは大学で統一教会に誘われ、入会しました。人見知りの自分の言うことを聞いてくれるのがうれしかったのです。そうしたまじめで、人付き合いが苦手な人の居場所を提供するといった、人の心の弱点を狙っていくのが常套手段なのです。


例えば大学生であった著者の場合は、どんな相談を持ちかけても嫌な顔をせずに、「それには意味がある」と承認してくれたり、それまでまともに認められたことがなかった著者にとっては、自分の居場所を見つけたような気持ちだったのかもしれません。そうやって素直で無知な学生を勧誘するのが基本パターンです。


彼はアンケートの最後に、「宗教と科学の統一について関心があれば、話を聞きたいと思いませんか」といって私を原研のホームに誘った。ホームとは、各大学の原研のメンバーが寝起きする場所であり、伝道(勧誘)や各種の学内活動の拠点にしている場所である(p56)

教祖とセックスすると堕落から救われる

宗教なので自由に教義を決めることができるとはいえ、やっていることがエロい。教祖の祝福(セックス)を受けると堕落から救われる。日本(エバ)は韓国(アダム)に従わなくてはならない。こんな都合のよい教義を定め、それを信じこませる技術はすごいと思いました。


また、信者は労働力として、物品を販売してお金儲けする活動に動員されます。本や壺や印鑑などの高額商品を販売すること自体は、サタンに奪われた物や金を神に取りもどすことであり、まったく悪いことだとは思っていなかったというのですから、暗示というか洗脳のテクニックが素晴らしい。さらに、統一教会を辞めると地獄に落ちると脅されているのですから、逃げることもできないのです。


教義のうえでは、「祝福」を受けた者が統一教会をやめ、真の父母様を裏切れば、サタンに激しく讒訴(ざんそ)される。さらに、死んでからは、サタンよりも低い霊界に落ちるとされていた(p178)

洗脳の技術

さらに著者が洗脳されているときは、「他人に迷惑をかけているわけではないのに、統一教会を批判するマスコミはサタンだ」と思うようになっていたという。そして、統一教会が組織を強くしているのは、アベル(=先輩、上司)がカイン(=後輩、部下)に決まった訓練メニューを教える形となっており、そうした上下関係からアベル(=先輩、上司)のポジションに上がりたいという上昇志向も活用しているというのです。


この洗脳の技術を良いことに活用したいと思いました。逆に言えば、これだけ人を洗脳することを組織的に行っていることにも、怒りを覚えました。仲正さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・再降臨のメシアとして想定されているのは文教祖である・・キリスト教を「救いの歴史」として明確に位置づけているものの、イエスの救いが不完全だとし、それを完成させるもうひとりのメシアが来るという考え方は、当然、普通のクリスチャンには受け入れがたい(p19)


・創価学会にとっての日蓮正宗に相当するのが、統一教会にとってのキリスト教だ。正式名称が「世界基督教統一神霊協会」であることからもわかるように、統一教会がキリスト教の本来の精神を復興させる運動を名乗ることで、みずからの勢力を拡大しようとしてきたのは確かである(p206)


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【私の評価】★★★☆☆(72点)


目次

序章 消せない記憶
第一章 広島県呉市
第二章 統一教会との出会い
第三章 原理研究会と左翼
第四章 信仰の日々
第五章 疑念のはじまり
第五章 脱会
第六章 宗教を考える
第七章 体験としての統一教会



著者経歴

仲正昌樹 (なかまさ まさき)・・・1963年広島生まれ。東京大学総合文化研究科地域文化研究博士課程修了(学術博士)。現在、金沢大学法学類教授。専攻は、政治思想史、比較文学。『ポスト・モダンの左旋回』(世界書院)、『「不自由」論』(ちくま新書)、『集中講義! 日本の現代思想』(NHKブックス)、『<宗教化>する現代思想』(光文社新書)、『今こそアーレントを読み直す』(講談社現代新書)など多数。


統一教会関連書籍

「Nの肖像 ― 統一教会で過ごした日々の記憶」仲正 昌樹
統一教会の内幕―なぜ若者たちは新宗教に走るのか」エール出版社
統一教会とは何か―追いこまれた原理運動」有田 芳生
統一教会 日本宣教の戦略と韓日祝福」櫻井 義秀, 中西 尋子


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