【書評】「事実無根 私はこうして特捜に嵌められた」あきもと司
2025/10/17公開 更新

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【私の評価】★★★☆☆(71点)
要約と感想レビュー
統合型リゾート事業贈収賄事件
統合型リゾート(IR)事業を調べようといろいろ読んでいるなかで、あまり報道されなかった事件を紹介します。著者の秋元司元衆議院議員は、IR事業に関する便宜を図る見返りに760万円の賄賂を受け取った「収賄罪」で2024年有罪となっています。
賄賂の合計は760万円で、中国資本の日本法人「500ドットコム」から、現金300万円を受け取ったこと。講演料として200万円受け取ったこと。マカオのカジノ視察の旅費185万円、北海道ルスツリゾートの視察の旅費76万円を相手側に負担させたことです。
「500ドットコム」側は顧問として紺野昌彦氏、仲里勝憲氏が対応しており、いずれも贈賄を認め、有罪となっています。
面白いのは、マカオ視察に同行した自民党の白須賀貴樹議員と勝沼栄明前議員は立件されていません。
また、「500ドットコム」は、5人の国会議員、中村裕之議員、岩谷毅議員、船橋利実議員、下地幹郎議員、宮崎政久議員に100万円ずつ献金をしましたが、適法内での献金として処理されて、問題にはなっていません。
500社は私の事務所を通じ、沖縄県那覇市で行われるシンポジウムで講演を依頼してきました・・講演は2017年8月4日(p13)
秋元司元衆議院議員の反論
著者の反論としては、現金300万円を渡したとされる時刻と場所には、絶対に行くことができず、300万円は受領していないとしています。
マカオ視察の旅費については、領収書を受領し、旅費相当分の128万円が後援会の口座から出したとしています。北海道ルスツリゾート視察の旅費は、請求書が送られてこなかったので、払っていなかったとしています。
講演料については、当初50万円が200万円となったのは副大臣になったので増額されたと理解していたという。
500社顧問の紺野昌彦氏、仲里勝憲氏は、政治家に渡す名目で、500社から2650万円現金を引き出しており、残り2000万円は2人で保有していました。
今回の贈収賄事件の首謀者である2人のブローカー、紺野氏と伸里氏です・・2人のブローカーは、日本でのIR事業を目指す500社に近づき、金銭を取る計画を立てたと思われています(p12)
「証人買収罪」として立件される
著者の推理は、500社の顧問の2人は刑を軽くしてもらうために、秋元司氏に渡していない300万円を渡したと自供させられているのではないかというものです。
著者の支援者が顧問2人に面談したところ、紺野氏は「議員会館で秋元司氏と面会した記憶はないが、検察を敵に回すような証言をすることはできない」という趣旨の話をしてきたというのです。
そこで支援者のA氏は紺野氏へ、検察を敵に回して真実を証言してもらうために資金援助をしてもいいと提案し、2000万円の現金を側近のS氏に持たせました。その現金はS氏が持っているところを警察に押収されてしまうのです。
著者は「真実を証言してもらうために」証人に金を渡そうとしましたが、検察は「虚偽の証言をしてもらうために」証人に金を渡そうとしたということで、「証人買収罪」で著者を立件することになるのです。
2人にアプローチをしてしまった・・・私は収賄罪に加え「証人買収罪」という罪にも問われました・・金銭をともない、虚偽の証言を求める行為に対しての罰則(p79)
「真実はひとつ」ではない
公安警察が無理やり起訴した大川原化工機事件や、関西電力が主導した電力カルテル事件で中部・九州・中国電力が独占禁止法違反で公正取引委員会から課徴金を取られた事件などを思い出しました。
名探偵コナンなら、犯人は簡単に自供してしまうのですが、現実の世界ではどちらが正しいのか「真実はひとつ」というわけにはいかないようです。
個人的には、収賄金額の760万円で国会議員を有罪にできるという日本の素晴らしい司法制度に感嘆です。この金額で立件したのには、別の理由があるのかもしれません。情報が足りないので、もう少し統合型リゾート(IR)や司法制度について勉強してみたいともいます。
秋元さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・仲里氏は、任意で3カ月間も取り調べを受けたと聞きます。逮捕された場合では拘留、すなわち身柄拘束の期間は20日間(p52)
・M氏の話によれば仲里氏は経済的にかなり困窮していた・・・私はM氏に「真実を話してもらえれば経済的な援助はしてもいい」と伝えました(p92)
・私の携帯電話が検察に押収され・・・2016年9月~2018年1月の約1年4カ月間の発着信データ、つまり事件化された年の分のデータが消えていたのです(p131)
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あきもと司 (著)、徳間書店
【私の評価】★★★☆☆(71点)
目次
序章 検察の横暴
第1章 賄賂疑惑
第2章 講演と視察
第3章 証人買収
第4章 取り調べと勾留
第5章 主張の相違点
第6章 憤り
著者経歴
あきもと司(あきもと つかさ)・・・昭和46(1971)年、東京都生まれ。大東文化大学 経済学部卒業。平成16年7月、第20回参議院通常選挙で初当選。平成24年12月、第46回衆議院総選挙にて東京都第十五選挙区(江東区)当選。平成28年9月、衆議院内閣委員長就任。平成29年9月、国土交通副大臣、内閣府・復興副大臣就任。平成30年10月、環境副大臣、内閣府副大臣就任。令和元年12月に「IR汚職事件」で逮捕されるが一貫して無実を主張。令和3年9月に有罪判決。即日控訴し、令和4年6月現在、二審において争っている。
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