「イドコロをつくる: 乱世で正気を失わないための暮らし方」伊藤 洋志
2022/08/09公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★★(92点)
要約と感想レビュー
現代社会の中で正気を失わずに暮らすためにイドコロをつくろう!という一冊です。かっこよくいえば、サードプレイスでしょうか。確かに私も大学時代、東京に住んでいましたが、大学の勉強も面白くなく、サークル活動をやるくらいで、何に打ち込めばいいのかわからず、今思えば精神的にちょっとおかしくなっていたかもしれません。
著者は過剰なプレッシャーを無効化できるふらっと行って受け入れてもらえる場所を作ることをお勧めしています。それは喫茶店でもいいし、銭湯でもいい。公園でもいいし、いつもの散歩ルートでもいい。オモウマイ定食屋があったら最高でしょう。特に用事もなくお茶を飲みながら、世間話ができる友人が10人もいれば、十分といえるのではないでしょうか。
・東京でいえば、入場料が必要な公園も年間パスを買えばほぼ無料に近い価格で自分の庭にできる(p62)
著者は毎年「モンゴル武者修行」と称して、モンゴルの草原にゲルで1週間ほど合宿して、遊牧技術を習得する活動をしています。「タイ武者修行」と称して、タイ東北部の山岳地帯に住んでいるアカ族と交流し、バンブーハウスの建て方を習う「竹で家をつくる会」も運営しているという。
その他にも香川県出身の著者が中心となって讃岐式の打ち方でうどんを打って食べるだけの「うどんを手打ちする会」、定期的にブリ1尾や、生ハム1本など「丸ごと食べる会」、ブロック塀ハンマー解体協会など、やっている会がぶっ飛んでいるのです。シェアオフィスも自分で作ってしまうくらいですから、著者は現代の遊牧民、ノマド生活を送っている人だと思いました。
・「働く人のための現代アートコレクションを学ぶ会」・・・美術が専門外の人が5万円程度の美術作品を買う集まりだ(p89)
そういえば日本には、昔から俳句を詠む句会や、茶道、華道、書道、武術、能などの教室が整備されています。また、伊勢講といってお金をみんなで出し合って、代表を伊勢参りに行ってもらうという仕組みもありました。退職後にイドコロを探すのではなく、いつでもイドコロを持っていることが大事なのでしょう。そうすれば暇つぶしにもなるし、心も安らぐのです。
私たちはいつでも、どこでも「おもしろきこともなき世をおもしろく」することができるのです。それを教えてくれる一冊でした。★5とします。伊藤さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・イドコロになるお店をつくる・・自分に合う個人の店を探すこと・・通って支えること・・なければつくること(p101)
・子供の預かり合い・・・近隣に住んでいる人たちで子供の預かり講のようなものを結成する(p44)
・シェアオフィス・・・せいぜい年に1回大掃除と忘年会をするくらいである・・・直接的なアクションがなくても他人と空間を共有するのは得られることが多い(p147)
・趣味の集まりが続くには合宿も一つのコツである・・・長く続いているサークルは合宿にしても、穴場の施設を押さえていて夏など決まった時期に合宿をやる(p57)
・ボランティア団体を偽装して勧誘してくるカルト集団もいて、油断がならない状況である(p15)
【私の評価】★★★★★(92点)
目次
序「イドコロ」の必要性
第1章「イドコロ」とは何か
第2章「イドコロ」をどのようにつくったらよいか
第3章「イドコロ」の息吹(実践例)
第4章「イドコロ」は思考の免疫系を構成する
著者経歴
伊藤 洋志(いとう ひろし)・・・1979年生まれ。香川県丸亀市出身。京都大学にて農学・環境科学を専攻し修士号(農学)取得後、零細企業の創業に従事し肌荒れで退職。以後、養生期間を経て自営業。大資本を必要としない仕事と活動をナリワイ(生業)と定義し実践に取り組む。実践したナリワイは衣食住・教育・娯楽と分野を超えて10個超。半農家を増やす「遊撃農家」、床を通じて住の自給力を高める「全国床張り協会」、エネルギー自給が基本の環境調和生活を遊牧民に見習う「モンゴル武者修行」、ユーザーとつくる野良着メーカー「SAGYO」などが代表的なナリワイ。本書は、活動の土台となる思考の健康さを保つ様々な場とその働きを「思考の免疫系」として構想したものである。
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