「小商いのはじめかた:身の丈にあった小さな商いを自分ではじめるための本」伊藤 洋志、風来堂
2022/08/18公開 更新本のソムリエ [PR]
Tweet
【私の評価】★★★☆☆(79点)
要約と感想レビュー
個人でやれる小商いをやっている人たちを、18人紹介している一冊です。小商いとは、小さい元手で、自分のやりたいことや思いつきのアイデアを商売になるのかどうか試行錯誤しているもの。
この本で紹介しているのは、土釜パン屋さん、壺焼きやきいも屋さん、弁当箱専門店、多肉植物販売、移動本屋さん、移動ケーキ販売など今時の小商いが紹介されています。趣味の延長から発展したものもあるし、昔から行われてきた仕事に新しい視点を加えて今時の商売にしたものもある。そういえば、農家の出稼ぎも小商いなのかもしれないと思いました。
・私は6月だけ梅を収穫しながら、作業の様子をレポートし、梅をネット販売しています(p101)
興味深かったのは、趣味の延長から商売になった人たちです。
多肉植物が趣味で栽培していたら、増えすぎたので、売ることにした人。旅が好きで個人旅行をしていたので、自分の経験とネット活用のノウハウを活用して個人旅行のプランニングをしている人。好きな料理とラップが好きだったので、HIPHOPのライブで料理教室をしている人。フランス人が日本を紹介するブログをやっていて、弁当箱を売ってみたら爆売れして商売になってしまった人。
とにかく行動している人たちだな、という印象でした。
・パンを焼く土釜を自分で造って材料の9割を自給し、自分が食べたいパンを作っています(p204)
インターネットの時代になって、告知も決済もネット上でできるようになって小商いがやりやすい環境になってきたのだと思います。それが意味するのは、なにより本人が「面白い!」と思ったことを、資金がなくても商売になるのかどうか試行錯誤することができるということ。世の中に必要なら売れるし、世の中に必要ないなら売れないのです。
元手をかけているわけではないし、趣味の延長でやっているから、修正も簡単だし、撤退しても問題ない。地域文化を継承してゆくことを経済的に支える仕組みとしても面白いものがあります。よい時代になってきたと思います。伊藤さん、風来堂さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・日本ではほんの40~50年前まで、季節ごとに生業を変えたり、複数の仕事を組み合わせて生活を構築・・・出稼ぎというスタイルも小商い的発想といえる(p208)
・面白いのは、壺焼きのやきいもが廃れた理由が、現代においては逆に特徴になる、というところです(p141)
・弁当箱専門店・・・実店舗ができたことで、通販サイトの売り上げも上がったという。「通販のみだとメディアの取材対処にもなりづらく、お客さんに知ってもらうまでが難しい(p162)
・クラウドファンディングで制作資金を集めて、完成したら投資額に応じて完成品をお返し・・・制作に参加している感じが面白い(p58)
伊藤 洋志、風来堂、東京書籍
【私の評価】★★★☆☆(79点)
目次
第1章 自分がほしいものをおすそわけ―シンプルで強力なおすそわけ的小商い
第2章 ものづくりを進化させる―小商い的ものづくりとは
第3章 遊び心が仕事を生む―「役に立つ」だけではない商いの考え方
第4章 既存のモノに価値を見出す―価値提案型の小商いの勘所とは
第5章 地域のなかに役割を見つける―地の利を活かせば商いを生み出しやすい
第6章 小商い便利帳
著者経歴
伊藤洋志(いとう ひろし)・・・1979年生まれ。香川県丸亀市出身。京都大学大学院農学研究科森林科学専攻修士課程修了。仕事づくりレーベル「ナリワイ」代表。会社員を退職後、ライターをしながら2007年より、ナリワイづくりを開始。現在、シェアオフィスの運営や、「モンゴル武者修行ツアー」、「熊野暮らし方デザインスクール」の企画、収穫・販売だけを担当する農家業「遊撃農家」などのナリワイの傍ら、床張りだけができるセミプロ大工集団「全国床張り協会」といった、ナリワイのギルド的団体運営等の活動も行う
風来堂(ふうらいどう)・・・旅・歴史・サブカルチャーなどを得意分野として、書籍・雑誌・ムックなどを企画・編集している。本書では、編集、取材、原稿執筆、撮影などを担当。
この記事が参考になったと思った方は、クリックをお願いいたします。
↓ ↓ ↓
メルマガ[1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』] 3万人が読んでいる定番書評メルマガです。 >>バックナンバー |
|
この記事が気に入ったらいいね!
コメントする