5日本を考えるの最近のブログ記事

希望を捨てる勇気―停滞と成長の経済学
池田 信夫
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 1335

【私の評価】★★★★★(96点)


■「地獄への道は善意で舗装されている」と言われますが、
 その人を助けようと思っていたのに、
 結果は、逆にその人が不幸になってしまったという事例を
 ズバッと指摘する一冊です。


■まず、指摘するのは姉歯元建築士から大問題になった
 耐震強度計算の擬装です。

 姉歯の設計したマンションを取り壊したり、
 耐震強度をちゃんと計算しようとしましたが、
 チェック強化により建物着工ができず業界が大不況となりました。


・姉歯元建築士の設計した建物は「震度5で倒壊する」とされて
 取り壊されたが、同じ論法でいけば、1981年の建築基準法
 改正以前の建物は、みんな取り壊されなければならない。
 しかし役所もメディアも、それは問題にしない。震度5で
 コンクリートの建物が倒壊した事件はほとんどないからだ。(p32)


■そして、グレーゾーン金利にいたっては、
 それまで問題ないとされていた金利が違法となり、
 過去の金利を返済しなくてはならなくなりました。

 そのため、消費者金融業界は崩壊。

 消費者金融を利用していた人は、
 より高利の闇金融を利用するしかない
 状況になっているのです。


・グレーゾーン金利が、裁判所によって事後的に違法とされ、
 過去に遡及して訴訟が続発していることは、法治国家としての
 日本の信頼を傷つける。シティグループは日本の消費者金融から
 撤退するとき、記者会見で
 「ルールのない国でビジネスはできない」とのべた(p28)


■派遣労働についても、禁止や規制強化がなされれば、
 派遣労働者が幸せになるわけではなく、
 派遣労働者の仕事がなくなるだけに終わる可能性があるのです。


・不況の最中に46万人といわれる製造業の派遣労働を禁止したら、
 規制強化を口実にしてクビを切るか、契約社員やアルバイトに
 切り替えるだろう。(p47)


■これ以外にも、不動産の入居者の権利が強すぎる件、
 医者の手術失敗が刑事罰に問われる件、
 地方を無理に活性化させようとしている件など
 よく考えるとそうかもしれないという
 目からウロコがたくさんでした。


・問題は産婦人科医の不足ではなく、手術の失敗に刑事罰を科すなど、
 人命のためには他のすべてを犠牲にする司法のバイアスである。
 それは結果的には、多くの人命を失う結果をもたらしている。(p29)


■書籍のタイトルが今一ですが、
 内容は最高に充実しています。

 問題というものは、表面的な対応だけでは
 根本的な解決にならないこともわかりました。

 池田さん、よい本をありがとうございました。


━━━━━━━━━━━

■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・硬直的な人事制度のおかげで、日本のサラリーマンのほとんどは、
 年をとると何もすることがなくなる。・・・特に管理職になると
 地方勤務が多くなり、単身赴任という世界に類を見ない生活形態が
 増える(p55)


・奴隷は彼らの鎖の中ですべてを失ってしまう。
 そこから逃れたいという欲望までも。
 (ジャン・ジャック・ルソー)(p59)


・需要の変動に対応して雇用調整を行うメカニズムが、
 解雇(50年代)、配置転換(60年代)、出向(70年代)、
 非正社員(90年代)と変化してきたのである。(p67)


・店子の権利が非常に強く・・・立ち退かせにくい家族を
 入居させず、独身向けワンルーム・マンションを建てる。
 その結果、日本の賃貸住宅の質は低く、家賃は高い。(p26)


・地方はもっと(経済の自然な流れにそって)衰退しても
 おかしくない。・・・これからは都市国家の時代だ。(p136)


・比較優位・・・「アインシュタインが秘書よりタイピングが
 うまくても、彼がタイプしてはいけない」のだ(p185)


・「世界一速いコンピュータ」・・・時代錯誤の戦艦大和のような
 「大艦巨砲コンピュータ」に多くの優秀なエンジニアを
 投入することは、IT産業をミスリーディングし、
 税金よりもはるかに重大な人材の浪費になるだろう(p194)


・新聞社には気の毒だが、この流れはもう変わらないだろう。
 ・・・デジタル情報の限界費用(複製費用)はゼロなので、
 その価格がゼロになることは避けられない。(p207)


希望を捨てる勇気―停滞と成長の経済学
池田 信夫
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 1335
おすすめ度の平均: 4.5
5 若者よ、これを読んで選挙に行こう
5 斜陽=成熟社会という幻想
3 絶望後の"希望"が疑問も、やはりここからしか始まらないようだ・・・
4 絶望から、はじめよう。
4 日本の構造的問題を的確に分析

【私の評価】★★★★★(96点)


■著者紹介・・・池田 信夫

 1953年生まれ。
 大学卒業後、NHK入社。
 1993年退職後、国際大学GLOCOM教授。
 経済産業研究所等を経て、
 現在は上武大学大学院教授。


■関連書評■

a. 「国破れて霞が関あり」若林 亜紀
【私の評価】★★★★☆

b. 「官僚とメディア」魚住 昭
【私の評価】★★★☆☆


c. 「日本の真実」大前 研一
【私の評価】★★★★☆


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産廃コネクション―産廃Gメンが告発!不法投棄ビジネスの真相
【私の評価】★★★★★(92点)


■仕事で産業廃棄物の処理について勉強するために
 産廃関係の本を8冊ほど購入。

 今日届いた5冊を一気に読んでみましたが、
 この本が一番でした。

 表面的な事務や法律を解説した本とは全く異なり、
 産廃業界におけるそれぞれの業者のポジション、
 儲けるコツ、不正をしてしまう理由まで
 裏の裏まで教えてくれるのです。


■著者によると、2002年の時点で、
 最終処分された5000万トンと同じくらいの
 4000万トンが不法処分されたと推定されるそうです。

 もし、不法処分がなくなれば、 
 最終処分場はとうの昔に満杯になって
 しまっているはず、というのです。

 では、どうして不法処分が行われるのか。


  ・マニュフェストなしの産廃もマニュフェストありの
   産廃と混合され、マニュフェストありの
   産廃として保積(積替保管場)を出ていく。(p88)


■それは最終処分場が少ないという
 物理的な理由と、
 不法処分することにより簡単に儲かるという
 金銭的な理由があるようです。

 産廃を目一杯受け入れて、
 結局オーバーフローしてしまい、
 仕方がなく不法投棄をすると、
 簡単に儲かってしまう。

 これでは、不法投棄はなくならないでしょう。


  ・中間処理施設は、取引先にマニュフェストを回付するため、
   最終処分場との契約がどうしても必要だ。
   オーバーフローした産廃を不法投棄現場に流出させているからこそ、
   辻褄を合わせるため、一定量の産廃は
   正規の最終処分場に処分しておかなければならない(p162)


■産廃Gメン(公務員)がここまで書けるとは
 驚きました。

 具体的なマニュアルとしては、
 「不法投棄はこうしてなくす」石渡 正佳

 が具体的でわかりやすいものとなっています。
 仕事で使う方は、セットで購入するべきです。

 ちょっと古い本ですので、
 今の状況が反映されていない可能性を割り引いても、
 ★5つとしました。


─────────────────

■この本で私が共感したところは次のとおりです。


  ・産廃の処理を委託するとき、収運は収運業者に、処理は処理業者に、
   それぞれ個別に契約を締結し、処理費も個別に支払うのが
   原則とされている。しかし、実態は大いに異なっており、
   収運業者が処理まで一括して受託することが通例となっている・・・
   安い処分先を探せば、処理費のピンハネが可能になる。(p91)


  ・中間処理施設は、産廃の減量化やリサイクルを担う 
   産廃処理の主役で、そこが不法投棄の主犯だといったら、
   産廃処理システム自体を否定することになってしまう。
   表向き、中間処理業者が主犯だとは言えない事情がある(p106)


  ・産廃を燃やして灰にすると、重量は10分の1以下になるが、
   燃やさなければできなかった有害物質が発生してしまう。
   効率的な最終処分のための減量化は、産廃を無害化するどころか、
   有害化してしまうのだ(p180)


  ・我が国の行政のずるい点は、システムを作るときには、
   学者を集めて一生懸命にあれこれと議論するが、
   一度システムができてしまうと、問題が生じても
   システムそれ自体の欠陥は決して認めようとせず、
   業界に責任転嫁し、自ら責任を取らないという体質にある(p213)


▼引用は、この本からです。

産廃コネクション―産廃Gメンが告発!不法投棄ビジネスの真相
石渡 正佳
WAVE出版
売り上げランキング: 126349
おすすめ度の平均: 4.5
4 強い意志と逃げを打たない仕事
5 廃棄物担当者は一見の価値
4 不法投棄削減の切り札はリサイクルだ
4 目をそむけてはいけない現実
5 産廃に関心のある人は読まれるといいですよ

【私の評価】★★★★★(92点)


■著者紹介・・・石渡 正佳(いしわた まさよし)

 1958年生まれ。
 1981年千葉県入庁。
 1996年から千葉県環境部産業廃棄物課で、
 産廃行政を担当。
 2001年から監視班のリーダーとして
 短期間に不法投棄ゼロを達成。


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■関連書評■

a. 「環境問題はなぜウソがまかり通るのか」武田 邦彦
【私の評価】★★★★☆

b. 「ごみを燃やす社会」山本節子
【私の評価】★☆☆☆☆

c. 「「法令遵守」が日本を滅ぼす」郷原 伸郎
【私の評価】★★☆☆☆

d. 「正義で地球は救えない」池田 清彦
【私の評価】★★★★☆


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道路の決着 (文春文庫)
【私の評価】★★★★★(93点)


■最近、高速道路のパーキングが
 変化していることに気づきます。

 まず、トイレがきれいになった。
 そして、まずいラーメンがなくなった。
 逆に、パーキング毎に人気メニューをPRするように
 なってきています。


■私は、これは道路公団の民営化がもたらした
 成果だと思っています。

 そして、なんと現在、旧道路公団三社は
 数百億円の税金を払っているそうです。

 道路公団のときには、
 毎年3000億円の税金を使っていたというのに。


  ・旧公団三社(東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、
   西日本高速道路株式会社)は、年間で二、三百億円ほど納税している。
   かつては三千億円の税金が投入されていた(p14)


■道路公団の民営化は、小泉首相官邸、
 そして民営化推進委員の猪瀬直樹が
 協力して推進し、実現しました。

 この本には、その経過がリアルに
 記載されています。

 反対派を批判するところは、表現が醜いですが、
 そこを除けば非常に面白く読めると思います。


  ・全国料金プール制は、いわばドンブリ勘定のシステムである。
   日本道路公団を分割することで、大きなドンブリを小さな茶碗に
   置き換えることで、地域に当事者意識と責任を持たせる(p161)


■一点、知っておかなくてはならないのは、
 猪瀬直樹が脅迫を受けていたということです。

 猪瀬と特殊法人に対する情報公開で協力し合った
 衆議院議員の石井紘基は暴漢に刺殺されています。

 それでも、猪瀬直樹は自分の信じる
 道路公団民営化を主張し、根回し続けたのです。


  ・「近藤さんは、命懸けでやる、と新聞やテレビのマイクの前で
   言いましたね。命懸けでやる、と命を懸けるは違う。僕のところには
   毎日のように殺すぞとか無言電話の脅迫があります。・・・だから
   命を懸けるということでやっていただきたい」(猪瀬)(p102)


■こうした事実だけで、
 3000億円の1%は年金として猪瀬さんに
 支払ってもいいような気になってきました。

 逆に考えれば、猪瀬さんのような人がいなければ、
 官僚国家は変わらないということであり、
 恐ろしい気持ちにもなりました。

 いずれ日本の財政は破綻すると思いますが、
 こうした背景があることを知り、
 さらに実際に戦った人のいることを知ることは大事だと思いました。

 そして、自分のできる範囲の中から、
 猪瀬さんと同じ方向で仕事をする人が一人でも増えれば、 
 破綻までの時間を稼げるはずだからです。

 本の評価としては、
 もちろん★5つとしました。


─────────────────

■この本で私が共感したところは次のとおりです。


  ・最終確認は作業部隊の例のJR課長とメールでやりとりする
   ことになっている。届いたメールを開いて驚いた。意見書の
   冒頭の部分に中間整理のとりまとめで書いておいた「改革の意義と目的」
   の項について、一部が買ってに改竄されているではないか。(p67)


  ・超過債務キャンペーンの背後には、税金投入で債務を
   減らしてもらい、身軽になってピカピカの会社に生まれ変わりたいと
   たくらむグループがいた。その中心人物が・・・道路公団事務系の
   片桐幸雄・前民営化委員会事務局次長だった。(p78)


  ・加藤寛千葉商科大学長に「猪瀬さん、なにをおいても分割だけは
   絶対に勝ち取らなくてはいけませんよ」と忠告されていた。「国鉄は
   分割民営化できたが、NTTの場合は壁が厚くてスタートの時での
   分割ができなかった。いまも悔やんでいる」と。(p127)


  ・東日本道路サービスではたらく五十代の収受員は給与明細を送ってきた。
   月給は手取り二十万円。天下りのポスト「現場代理人A」は年収九百万円
   だと書いた。「彼らは仕事もせず毎日だらだらしている。(p195)


  ・業者は生き残りをかけて受注のために必死になる。
   その弱みにつけ込んで公団はOBを送り込むのである。(p250)


  ・国鉄改革では、税金を二十四兆円も投入した。
   それは断じてやらないというのが道路公団民営化の一貫した
   考え方で、小泉さんはこれを実行した。(p313)


▼引用は、この本からです。

道路の決着 (文春文庫)
猪瀬 直樹
文藝春秋
売り上げランキング: 593
おすすめ度の平均: 5.0
5 道路公団民営化について完璧に分かる!

【私の評価】★★★★★(93点)


■著者紹介・・・猪瀬 直樹(いのせ なおき)

 1946年生まれ。作家。
 政界の利権、官僚支配の問題を
 精密な調査を元に著作として発表。
 「ミカドの肖像」「日本国の研究」他著書多数。


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■関連書評■
a. 「一気にわかる!空港の内幕」猪瀬 直樹
【私の評価】★★★★☆

b. 「日本国の研究」猪瀬 直樹
【私の評価】★★★★★


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公務員の給与はなぜ民間より4割高いのか

【私の評価】★★★★★(95点)


■賃金コンサルタントが、公務員の賃金について分析した一冊です。

 著者の分析の結果、わかったことは、
 まず、公務員の退職金が異常に高いこと。


  ・民間企業の従業員がもらった退職金
   総額8兆2056億円÷2048千人=1人あたり401万円
   公務員がもらった退職金
   総額2兆8700億円÷223千人=1人あたり1287万円
   (公的年金財政状況報告 平成17年度)(p40)


 そして、年金も高い。


  ・厚生年金の場合、平均額は16万円だが、
   国家公務員(20万円)は4万円ほど高く、
   地方公務員(22万円)も6万円ほど高くなっている(p49)


■さらに給与については、民間より4割高く、
 これは時給の分析からも同じ結論が出てくるようです。


  ・時給を比較すると、名古屋市役所は中小企業の1.8倍・・・
   名古屋市役所 49万0952円÷157時間=時給3127円(同1.8倍)
   トヨタ自動車 47万1000円÷163時間=時給2890円(中小企業の1.6倍)
   中小企業   31万0000円÷174時間=時給1782円(p110)


 わかりやすい例としては、
 名古屋市職員の給与がトヨタ社員とほぼ同等ということです。
 一度、職場を入れかえてみるとおもしろいかもしれません。


  ・名古屋市職員の給与もトヨタ社員を抜いていた・・・
   住民課の窓口で座っている高卒の50代のヒラ職員の給与が
   まさか49万円もするという事実を市民は知っているのだろうか(p82)


■国家公務員の給与は、人事院が毎年勧告しているではないか、
 と思う方も多いと思いますが、
 この本では、人事院の統計データ操作のからくりまで
 教えてくれます。

 基本的には、民間の給与を調査する場合には、
 給与の安い人を対象から外すようにしているようです。


  ・人事院の民間給与調査・・・からくり その1 調査対象を
   50人以上の事業所に限定する・・・からくり その3 調査対象を
   「事務及び技術関係」に絞る・・いわゆるホワイトカラー(p135)


■国家(公務員)反逆罪となるような一冊でした。

 巻末に、エリート官僚にはそれなりの処遇が必要などと、
 具体的な公務員給与の改革案を提示しており、
 建設的な一冊です。文句なく★5つとしました。


─────────────────

■この本で私が共感したところは次のとおりです。


  ・公務員は上位15%以内の高額所得者・・・
   国家公務員の平均年齢は40歳である。その所定内給与は40万円だ。
   そのほかに平均的に月間20時間程度の時間外手当が付く。その上で
   賞与を加えれば700万円を優に超す。(p103)


  ・リストラ不安のない公務員に、
   民間企業並みの給与は必要ない(p185)


  ・国家公務員は・・「30歳ぐらいまでの給与は民間とあまり変わらない」
   「40歳過ぎからもどんどん上昇するので、50代に入るとビックリする
   くらい高額になる」・・「高卒でもぐんぐん昇給するので、50代に入ると
   民間の大卒をはるかに上回っている(p60)


  ・国及び地方を合計した人件費は実際には合計37兆円ぐらいでは
   ないか・・・国の税収は平成19年度予算で53兆円、地方の税収は
   40兆円で、合計すれば93兆円だった。・・・実に4割が人件費
   で消えていることになる(p177)


  ・独立行政法人に移行させることで、"隠れ公務員"が急増(p166)


▼引用は、この本からです。

公務員の給与はなぜ民間より4割高いのか
北見 昌朗
幻冬舎
売り上げランキング: 10827
おすすめ度の平均: 4.0
5 読んでいて"面白い"賃金本!
2 微妙やし性格まがってる
5 やっぱりなー
5 マスコミ、公務員そして政治家はこの本を読め!!!

【私の評価】★★★★★(95点)

■著者紹介・・・北見 昌朗(きたみ まさお)

 1959年生まれ。
 1995年株式会社北見式賃金研究所を設立。
 オーナー会社を対象にした賃金・人事コンサルを行う。
 著書多数。

─────────────────

■関連書評■
a. 「「社会調査」のウソ」谷岡 一郎
【私の評価】★★★★☆

b. 「官僚とメディア」魚住 昭
【私の評価】★★★☆☆


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反転―闇社会の守護神と呼ばれて
【私の評価】★★★★★(91点)


■現在、詐欺の名目で懲役3年の実刑判決を受け、
 服役中の田中元検事の一冊です。

 著者は、東京特捜部に在籍していた辣腕検事であり、
 その検事を辞めた後、弁護士として裏社会の人々を
 弁護してきました。


■田中さんの生き方にはあまり賛同できませんが、
 社会の裏と、政治家、企業家、高級官僚のつながりが、
 この一冊を読むだけで見えてきます。

 ヤクザ、政治家だけでなく検察を含めた高級官僚の名前が
 ぼろぼろ出てくるのは、
 検察組織から裏切り者として堀の中に入れられ
 失う者のない人間だからできることなのでしょう。


  ・住銀は労せずして、平和相銀の東京の店舗を手に入れ、業務を拡大・・・
   住銀と検察の関係は古く、強い。大阪で検事正が検察庁を退官して
   弁護士になるとき、住銀と読売新聞が責任を持って何十社に及ぶ
   顧問先をつける。(p178)


■この本を読んでから、
 新聞やニュースを見る気がしなくなってしまいました。

 「汚職は国を滅ぼさないが、正義は国を滅ぼす」とは言われますが、
 闇の部分も知っておく必要があるでしょう。

 日本社会の現実を直視するために必読の一冊です。
 本の評価としては、★5つとしました。

─────────────────

■この本で私が共感したところは次のとおりです。


  ・検察の捜査に対して「国策捜査」という呼び方をよく耳にする。
   ・・・そもそも検察の捜査の本質が、権力体制と企業社会を守護する
   ためのものだ。つまりすべて国策捜査である。(p16)


  ・無理やりストーリーをつくり、それを調書にした。・・・
   そうやって被疑者を追い込みながら、調書を取る。そのテクニックに
   最も優れているのが、東京地検や大阪地検の特捜部である。(p152)


  ・警察の捜査を受けて起訴、あるいは不起訴などを決定するのが、
   検察庁の役割である。・・・検事は、警察の捜査段階から刑事たちの
   相談を受ける。・・・いわば検事は、事件における捜査の指揮官の
   ような存在である。・・・だから、地方に赴任すると、大きな顔が
   できるのである。(p77)


  ・たとえば、本部長や大阪の中心地の警察署長が転勤するときには、
   当時で2000万円から3000万円の選別が
   地元の有力業者から贈られる。(p129)


  ・ヤクザは、その大半が、同和部落出身者かあるいは在日韓国・朝鮮人
   だといわれる。そういう差別された人たちが数多く住む大阪は、
   自然とヤクザが幅を利かす。彼らは、行政や経済に深く食い込み、
   事件の裏で暗躍してきた。(p133)


  ・会津小鉄会では、京都府の同和対策事業の工事費用をピンハネ
   していた。建設会社の受注金額の三パーセントを抜くことが、
   半ば習慣化されていた。そうしたカネがなければ、あれだけの
   大組織を維持できないのだろう。(p260)


▼引用は、この本からです。

反転―闇社会の守護神と呼ばれて
田中 森一
幻冬舎
売り上げランキング: 92
おすすめ度の平均: 4.5
5 考えさせられる本
3 バブル紳士たちの横顔
5 いわゆる国策捜査を表と裏から読み解く
5 虐げられた者への共感を基底に持つ作者のハードボイルド世界
5 「裏社会」と「表社会」は密接だった!

【私の評価】★★★★★(91点)


■著者紹介・・・田中 森一(たなか もりかず

 1943年生まれ。岡山大学在学中に司法試験に合格。
 1971年検事任官。大阪地検を経て、東京地検特捜部。
 撚糸工業組合連合会汚職、平和相互銀行不正融資事件などを担当。
 辣腕検事として名を上げ、1988年退官、弁護士事務所開設。
 2000年石橋産業事件をめぐる詐欺容疑で東京地検に起訴され、
 2008年2月上告棄却、懲役3年が確定する。

─────────────────

■関連書評■
a. 「国家の罠」佐藤 優、新潮社
【私の評価】★★★★★

b. 「警察裏物語」北芝 健、バジリコ
【私の評価】★★★★☆


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小泉官邸秘録
【私の評価】★★★★★(94点)


■小泉劇場、刺客、丸投げ・・・
 多くの名言を残した小泉元首相。
 その秘書官から小泉政治の裏側を解説した一冊です。


■こうして読んでみると、
 小泉改革の内容は、当たり前のことを
 当たり前にするということであったと思います。

 例えば、予算編成は財務省が行なうのではなく
 首相の方針の下に編成されるのが当然でしょう。

 ・諮問会議の「骨太の方針」は、この「概算要求基準」に先立って
  決定される。・・・重要なことは総理自身が主導し議長を務める諮問会議で
  決定し、それに従った予算編成を財務省が行なっていく、という、
  考えてみれば当たり前の仕組み、ルールを作ったのである。
  これは言ってしまえば簡単だが、霞が関(とそれにつながっている
  族議員や業界)にとっては驚天動地の大事だったのである。(p23)


■小泉改革がうまくいったのは、
 問題点を正しく把握していただけでなく、
 その対応策があり、そして、その対応策を実現するための
 諮問会議、人事などの方法論があったことだと感じました。


 ・昼は主に新聞を念頭に置いたカメラなしのぶら下がり取材とし、
  夕方はテレビで映像が流れることを念頭に置いたカメラ入りの
  ぶら下がり取材とした(p34)


■そして、最後は首相の命をかけた信念です。

 ・医療制度改革・・・先送りにしたいというのが党の強硬派の固い主張
  のようであったが、総理は「三割は断固やるぞ。下でどんな議論に
  なろうと最後は自分のところできちんとやるから」と言って全く
  揺らぐことはなかった。(p91)


■一瞬、政治家になりたくなってしまった一冊でした。

 しかし、当たり前のことを当たり前にすることが
 これほどの困難を伴う国家に未来はあるのだろうか?
 と疑問を持ちました。

 テレビではこうした内容が伝わらないことを不思議に思いながら、
 ★5つとします。

─────────────────

■この本で私が共感したところは次のとおりです。


 ・ときどき大臣が役所の人事に口出しをして大騒ぎになる、という話が
  新聞を賑わすことがある・・・大臣であっても長年の霞が関の人事慣行
  に口を出すことそれ自体が官僚機構の反発を招くのである。・・・
  総理は・・・昔から官僚機構が自らの組織利害のために人事や組織を
  壟断することを非常に嫌い、常に厳しい態度で臨んでいた。(p26)


 ・モンゴルやウズベキスタン、カザフスタンなど、総理就任直後から
  行きたいと思っていた国でも、結局訪問したのは退任直前の
  2006年夏である。(p38)


 ・「切られるところは反発するぞ。でもその方がいいんだ、反発がある
  方が分かりやすい。中曽根さんがそう言っていたよ」とも語っていた。
  (p59)


 ・特殊法人なんてひどいもんだ。隠れ借金の塊だ。
  こういうことをみんなに分かるようにしないといけないんだ。
  そうしたら深刻さが分かるぞ(p62)


 ・「無駄な部門を五兆円削って必要な部門に二兆円回す。
  これで三兆円を削減する。後の細かい手順・内容は君たちで
  考えてくれ」。翌日官邸に来た財務省の幹部に、総理はそう言い渡した。
  大げさではなく、予算編成の主導権が財務省から官邸に移った歴史的
  瞬間だ、と私は思った。(p67)


 ・防衛庁には、いわゆる背広組の内局と征服組の陸・海・空の自衛隊
  という異なる組織原理を有する複数のグループが存在し、なかなか
  考え方が一致しない。そのため、お互いに自分に有利な情報をリーク
  しようとする傾向がある。(p129)


 ・郵政民営化準備室の室長は、大事な人事だった。誰にするかによって
  作業が滞る可能性もある。総理の意図をよく理解している人物で、
  行政経験にも長け、中立的にてきぱきと整理していく人物でなれば
  ならない。また、各省の事務方に対し重みを感じさせる人物でなければ
  ならない。(p239)


▼引用は、この本からです。

小泉官邸秘録
小泉官邸秘録
posted with amazlet on 08.03.01
飯島 勲
日本経済新聞社 (2006/12)
売り上げランキング: 2505
おすすめ度の平均: 4.0
2 本当の秘録かと思ったが
2 まずいことは墓場までもっていくんだよね、多分
1 小泉政治を意味づける巧妙な仕掛けとしての一冊

【私の評価】★★★★★(94点)


■著者紹介・・・飯島 勲(いいじま いさお)

 1945年生まれ。小泉純一郎の初当選から議員秘書。
 小泉の内閣総理大臣在任中は、内閣総理大臣秘書官。

─────────────────

■関連書評■
a. 「構造改革の真実」竹中 平蔵、日本経済新聞社
【私の評価】★★★☆☆

b. 「国家の罠」佐藤 優、新潮社
【私の評価】★★★★★


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本のソムリエ公式サイト発行者の日記

夢の百姓―「正しい野菜づくり」で大儲けした男
【私の評価】★★★★★(96点)


■横森さんは、農家に生まれ、若くしてアメリカで大規模農業の研修を受け、
 その後しばらく電気部品を作っていた変わり者です。

 ちょうどオイルショックで仕事が減ったのを機会に、
 やりたかった農業を始めました。


■昔ながらの、牛糞、稲わら、落ち葉の堆肥を使い、
 木酢液、蠣殻(かきがら)、木炭などの資材を使って
 「土づくり」に力を入れています。

 手間を嫌って、化学肥料を多く使うと、
 栄養のバランスが崩れ、硬い土になってしまうそうです。

 ・「栄養が吸収できる状態」の土とはどんなものかというと、
  実は、土壌微生物がたくさん繁殖し、活発に活動できるような
  状態のことなのである。(p28)


■農業のコツは、こうした「土づくり」に加え、
 商売としての努力が必要です。

 横森さんは、仕事の合間に卸売市場に足を運び、
 流通と販売店の情報を集め、市場が求める
 安く安全な野菜を作る努力をしています。

 ・農業経営に最も大事なポイントは次の四つではないかと思う。
  1 土づくりに投資する。
  2 販売の努力をする。
  3 企業的感覚を養う。
  4 コスト削減の限界まで取り組む。(p173)


■こうした努力で、スーパーとの直接取引、
 ブランド野菜の出荷を始めますが、
 やはり壁となるのが「農協」です。

 すでに「農協」は農家のためにというよりは、
 現状の組織を維持するために活動しているのが、
 実体というのです。

 ・スーパーとの直接取引も始まった。・・・農協の職員に「末端では
  差別化販売を求めている。農協も品質によって価格を別にするなど、
  臨機応変な対応をしていくべきではないか」と提案した。ところが、
  農協の返事はたったひと言-「組織を乱すことになるのでやるつもりは
  ない」だった。(p127)


■「農協」も「農水省」も期待できない。そうしたなかで、
 横森さんは、「農協」にかわる農家を支援する組織として、
 「信州がんこ村」という会社を作ったのです。

 役所と農協には、これ以上、民間の努力を邪魔しないでほしいと
 と感じました。

 横森さんの農業への思いに圧倒されました。
 ★5つとします。

─────────────────

■この本で私が共感したところは次のとおりです。


 ・大根が一本100円だとすると、農家の手取りは30円しかない。
  残りの70円は、流通業者の利益、そして物流経費や梱包に必要な
  資材費用に消えてしまっている。(p39)


 ・農協は、農家を完全に見捨てている。・・・多くの農協は、
  農家の指導や農産物の販売といった「営農」には全く力を
  入れていない。やっていることは「共済」や「金融」。
  そして最近では、「葬祭事業」。(p190)


 ・国の農業政策もひどい。こんな例がある。私の近くの川上村で、
  国の補助金で個々の堆肥場がつくられた。このような施設は常に
  利用されているわけではないので、空いている冬に農業機械が置かれた。
  すると会計検査院の監査で、本来の目的以外に使われているという理由で、
  問題になったのである。この話は、いかに税金の有効利用が妨げられている
  かを示すよい例である。(p239)


▼引用は、この本からです。

夢の百姓―「正しい野菜づくり」で大儲けした男
横森 正樹
白日社 (2002/04)
売り上げランキング: 131
おすすめ度の平均: 4.5
5 手を取り合って
5 豊富な経験にもとづく農業経営物語
5 優れたビジネス本!

【私の評価】★★★★★(96点)


■著者紹介・・・横森 正樹

 1940年生まれ。63年から65年までアメリカで農業研修。
 67年に結婚。電気部品を製造する。
 農業への思いやみがたく75年に専業農家となる。
 現在、「土づくり」を基本とした農業を展開し、
 研修生の受け入れなど農家の育成に尽力。

─────────────────

■関連書評■
a. 「食品の裏側」安倍 司、東洋経済新報社
【私の評価】★★★★★

b. 「ニンジンから宇宙へ」赤峰 勝人、なずな出版部
【私の評価】★★★★☆


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日本軍のインテリジェンス なぜ情報が活かされないのか (講談社選書メチエ 386)

【私の評価】★★★★★(93点)


■著者紹介・・・小谷 賢(こたに けん)

 1973年生まれ。
 大学卒業後、ロンドン大学キングス・カレッジ大学院修士課程修了。
 京都大学大学院博士課程修了。
 防衛省防衛研究所戦史部教官。
 専門はイギリス政治外交史、インテリジェンス研究。


─────────────────

●これは、本ではなく、論文です。
 史実を調査し、日本の諜報のあるべき姿を提言しています。

 著者は、日本における諜報組織の弱さを過去にさかのぼって明らかにし、
 現在の日本が取るべき対策を提示しています。

 この本の内容こそが、日本が諸外国に知られてはならない
 最大の秘密ではないかと赤面しました。

 ・情報部の地位の低さというのも日本特有のものである。・・・英米、
  特にイギリスでは・・・優秀な人材がインテリジェンスに集まる・・・
  戦前の日本では・・・作戦部に優秀な人材が集められた(p207)


●日本の欠点は、情報部の地位が低いこと。
 さらに、情報を戦略的に考え、政策に反映する
 組織、仕組みとなっていないことです。

 日本では、実務者レベルが政策を作成し、
 各部署を調整して決定するというプロセスですが、
 その中で情報に基づく客観的な判断は埋もれていくのです。

 ・陸軍内の政策決定過程だけでも、まず課長級が中心となって部内の意見を
  取りまとめ、そこから参謀本部作戦部長、陸軍省軍務局長、陸軍省次官、
  参謀本部次長、陸軍大臣、参謀本部総長の決裁を経て陸軍の試案が生み
  出される。・・・その結果・・・情報に基づいた合理的な案ではなく、
  各組織の「合意」を形成できるような玉虫色の案と・・・(p182)


●また、情報部門の予算の少なさ、人員の少なさも問題です。

 これは、昔も今もあまり変わりはないようです。

【昔】
 ・優秀なエージェントを雇うための条件の一つは十分な報酬であったが、
  各特務機関はそこまでの潤沢な資金を手にしていなかった。例えば、
  憲兵隊に逮捕されたソ連側スパイは、当時最高級のライカのカメラと
  現金5000円(現在約400万円)を持っていたというが、日本側
  では一人のスパイにそこまで金をかけることができなかった。(p52)

【今】
 ・現在日本のインテリジェンス・コミュニティー全体で使われる予算は
  推定で1000億円以内と考えられる。アメリカの・・・予算が年間
  3兆円強、イギリスが3000億円程度と言われるのに比べると、
  いかに細々と行われているかがわかるであろう。(p206)


●著者の提案は、情報と分析を行う独立組織の設立です。

 実行部隊とは別に、情報組織をつくることで、
 客観的な情報収集・分析ができるようになるわけです。

 ・行動しようとする人間が情報を扱い出すと、手段と目的が入り混じるために
  客観的な情勢判断が難しくなってしまう現象である。これに対する処方箋と
  して・・・「実行するスタッフと調査するスタッフをできる限り厳密に分離
  しておくしかない(p195)


●本として評価するのは難しい本でした。
 国家のあるべき姿を考えたい方にお薦めします。

 日本の情報組織のあるべき姿を提言するものとして、
 ★5つとしました。


─────────────────

■この本で私が共感したところは次のとおりです。


 ・ハルは米側の通信情報(マジック)によって、日本との交渉決裂が
  戦争を意味することをすでに知っていたため、妥協的な暫定協定案を
  用意していた。・・・中国にとっては日米間の妥協成立は好ましくなかった。
  ・・・ロンドンの中国大使館はUPに(暫定協定案の)情報を漏らしてしまった
  ・・・ハルは一夜の内に考えを変え、26日には強硬なハル・ノートを日本側に
  提示することになった。(p186)


 ・1941年9月、陸軍省軍務課の戦争経済研究班も、対米戦の見通しに
  ついて、日本の生産能力は限界に近く・・・米英の生産力は上昇を続ける。
  ・・・持久戦には堪えがたい、という主旨の報告を行っている。杉山元参謀総長は
  報告の調査は完璧で議論の余地はないが、研究班の結論は国策に
  反するとして報告書の焼却を命じた(p192)


 ・奇襲攻撃が成功した後に海軍が頼りにしたのは、アメリカの世論が厭戦
  気分に支配されることと、ドイツの欧州制覇であった。・・・まったく
  逆であった・・・米世論に対するプロパガンダ工作も、ドイツ軍に対する
  客観的な研究の実施も不十分なままであった。(p167)


▼引用は、この本からです。

日本軍のインテリジェンス なぜ情報が活かされないのか (講談社選書メチエ 386)
小谷 賢
講談社
売り上げランキング: 45601
おすすめ度の平均: 4.5
5 「歴史学とは現在に生かしてこそ意味がある」、まさにその通りの書籍
4 「知の集積地」としての日本軍
4 インテリジェントサイクルの重要性
5 名前負けしない奥の深い本
5 現代的視点から評価した日本軍の「情報感度」

【私の評価】★★★★★(93点)


■関連書評■
a. 「CIAは何をしていた?」ロバート・ベア
【私の評価】★★★☆☆

b. 「戦争広告代理店」高木 徹、講談社
【私の評価】★★★☆☆


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台湾人と日本精神(リップンチェンシン)―日本人よ胸をはりなさい
蔡 焜燦
小学館 (2001/08)
売り上げランキング: 3,249
おすすめ度の平均: 4.78
5 かつて日本はこんなにも美しかったのか。
5 この本を読み終えて…
5 日台関係の歴史の基礎となるべき本
【私の評価】 ★★★★★:絶対お薦めです!家宝となるでしょう(91点)


■著者紹介・・・蔡 焜燦

 1927年台湾生まれ。台中州立彰化商業学校卒業。
 45年岐阜陸軍整備学校奈良教育隊入校。
 終戦後、台湾で体育教師となるが、後に起業。
 現在、半導体デザイン会社「偉詮電子」会長。


●私はこの本を読んで、ドラえもんをイメージしました。

 のび太は、スネ夫とジャイアンにいじめられます。
 「50年前、お前のおじいさんと親父に、家族がいじめられたんだ
  謝れ!金よこせ!謝り方がなってない!」

 そこにドラえもんがやってきて、のび太に言うのです。

 「確かに50年前、のび太の家族は、ジャイアンの家を所有していた。
  そして確かにジャイアンの家族を差別したところはあった。
  でも、お金を使って、家を修理したり、奨学金を出して良いこともしたんだよ。
  他の家では、そこに住む人からお金を取れるだけ取る所有者もいたんだ」

 それまで、そんなことを言われたことのなかったのび太は号泣するのです・・・


●著者は、台湾で日本の教育を受け、日本人として戦争を戦った
 世代です。

 著者によれば、確かに日本人と現地人の差別はあったようです。


●しかし、それ以上に、他の欧米諸国とは違い、搾取する対象としてではなく、
 あくまでも日本国の一部と考え、日本と同じレベルまで引き揚げるため多くの
 投資を行ったのは事実のようです。

 ・台湾の上下水道はこの時代に整備され、その結果、世界有数の
  伝染病根源地だった台湾から、マラリア、ペストをはじめ、
  あらゆる伝染病が消えていった。(p58)


●日本が引き揚げてからの台湾には、
 中華民国政府がやってきましたが、
 その人間性の低さにはひどいものがありました。

 ・中華民国政府による台湾統治が全島にゆき届きはじめ、それと
  同時に役人や警察がその権力を傘に威張り散らし、日本統治時代
  には考えられなかった不正がはびこり、賄賂が横行しはじめて
  いた。(p152)


●著者は、体育教師であったこともあり、
 賄賂により成績も、進級もどうにでもなる中国人の思考に
 ガマンがならなかったようです。

 ・中国の教育というのは“商売”でしかなかった。彼らは、
  生徒を進級させるにも、よい成績を取らせるためにも、あらゆる
  場面で父兄に賄賂を要求し、教育など二の次だったのである。
  “雲泥の差”とはまさしくこのことをいうのだろう。(p83)


●さらには、虐殺も発生しており、中国人の支配する国家では、
 そのようなことが普通に起こることに私は恐怖を覚えました。

 ・蒋介石はためらわなかった。彼は、「格殺無論(皆殺しだ)・・・と
  返電した。・・・陳儀は「清郷工作」を断行する。・・・意志、弁護士、
  学者、教師などの知識層が無実のまま次々と逮捕され、そして裁判もなく
  虫けらのように処刑されていったのである。(p178)


●台湾においても中華民国政府は反日教育を行っていましたが、
 著者のように「それは間違っている」と主張してくれる人が
 いるからこそ、台湾では親日家が多いのでしょう。

 ・私は、台湾にやってくる日本人に説く。
  「自分の国を愛しなさい」と。
  自分の国をも愛せない人が、どうして他人や他の国の人々を
  愛せるだろうか。(p261)


●今、ジャイアンは、ドラえもんの家は自分のものであると
 主張しています。

 また、「反国家分裂法」という武力で、
 ドラえもんの家を奪うことのできる法律も作りました。

 台湾の次は日本か・・・、と恐ろしく思うのは私だけでしょうか。


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


 ・日本統治時代の輝かしい業績でも、とりわけ私が評価したいのは
  「教育」である。(p80)


 ・台湾では、いまでも「日本精神」=リップンチェンシンという
  言葉が、「勤勉で正直で約束を守る」という褒め言葉として
  使われている。まさしくそれは日本統治時代の教育の成果である。
  (p86)


 ・現代の日本人は、日本がかつて植民地で皇民化教育を行っていた
  ことを非難するが、それは、「内地でやっていた教育を、同じ
  日本領土である台湾でもやっていた」だけのことだと私は納得
  している。(p93)


 ・中国人は、なにをするにも現金を要求し、現金を差し出さなければ
  動こうとはしない。これを日本人と中国人の国民性の違いと片付ける
  にはあまりに大きな格差である。否、これこそが、「近代国家」と
  「前近代国家」の違いだったのだろう。(p165)


 ・人々は、「犬(日本人)が去って豚(中国人)来たり」と吐いた。
  犬はうるさいが守ってくれる、しかし豚は働かずにただむさぼる
  だけだという喩えだ(p167)


台湾人と日本精神(リップンチェンシン)―日本人よ胸をはりなさい
」蔡 焜燦、小学館(2001/9)¥650
【私の評価】 ★★★★★:絶対お薦めです!家宝となるでしょう(91点)


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りんごは赤じゃない―正しいプライドの育て方
山本 美芽
新潮社 (2005/06)
売り上げランキング: 5,002
おすすめ度の平均: 4.8
5 かつて生徒だった全ての大人たちへ
5 地道な実践の記録
5 新任教師に差し上げたいものです。
「りんごは赤じゃない」山本 美芽、新潮社(2005/06) ¥500 (私の評価:★★★★★:絶対お薦めです!家宝となるでしょう)91点 (Amazon: http://mo-v.jp/?2152 )←(Amazonでの評価)


●著者紹介・・・山本 美芽(やまもと みめ)

 1971年生まれ。大学卒業後、中学校の臨時教諭、養護学校教諭を
 経て、執筆活動を始める。現在は主に音楽雑誌に寄稿している。


●かつて神奈川県の中学校に、美術のコンクールで入賞者を大量
 排出した太田さんという教師がいました。


●しかも、生徒が荒れているような中学校でしたが、美術の授業だけは、
 生徒が姿勢を正して集中して授業を受けていたそうです。

 ・太田は「ふざけ半分」の態度を、絶対に許さない。そのような態度が
  見られるあいだは、授業をしないし、大事なことも話さない。(p24)


●授業では、草をスケッチするならば、外に出てよく観察させる。
 「草の気持ちになってみて」とアドバイスする。
 そうした授業の中から、子どもは草と対話をして、考えていったそうです。

 ・草が一本一本すべて違うように、人間もひとりひとり違っている。
  みんなだってそうだよね。違うことって、なんて
  すばらしいんだろうね。(p41)


●また、美術なのに「調査研究」を取り入れていました。
 ・・・すばらしい。

 ・何を調べなさい、どこまで調べなさい、先生はそういうことをいっさい
  言いません。それはあなたたちが自己決断することなの。自分が必要
  だと思ったところで決断するのよ。・・・「調査研究」(p57)


●しかし、太田さんは2001年に退職し、教育システムの外に道を求めました。

 ・コンクールといった、目に見える形で優れた指導力を残しても、
  教師社会の中で評価してもらえることはなかったのだ。太田は、
  次第に教師社会に絶望感を感じるようになっていた。(p192)


●そういえば社会人校長で、すぐに自殺なさった人もいましたね。

 良いものが淘汰され、外にはじきだされるのであれば、
 教育は学校の外に求めるしかないのかもしれません。


●教育議論は別にして、私も教わりたかったなとおもう美術の授業の
 秘密が書かれた本として★5つとしました。


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


 ・「あなたたちには心がありますね。それと同じように、先生にも、美術室
  にも、心がある。それなのに、その態度は・・・!あなたたちは、美術
  室で待っている先生の心を踏みにじったんですよ」(p19)


 ・生徒がいい加減な態度を見せたときに教師が「だめ、やり直し」と
  命じるのは、よくあることだ。しかし太田はそんなとき「だめ」では
  なく「イヤだ」という。(p22)


 ・二学期、三学期になっても、太田はいつも授業の前には
  顔写真入りの名簿を確認して、子どもの顔と名前がスラスラ
  出てくるように努力する。(p181)


 ・太田は、美術でプロセスに没頭する体験をさせて、結果だけを
  追い求めていては決して到達できない領域まで、
  生徒を踏み込ませるのだ。(p144)


りんごは赤じゃない」山本 美芽、新潮社(2005/06) ¥500
(私の評価:★★★★★:絶対お薦めです!家宝となるでしょう)91点


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42,000名が読んでいる定番書評メルマガです。購読して読書好きになった人が続出中。
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