【書評】「罪を償うということ: 自ら獄死を選んだ無期懲役囚の覚悟」美達 大和
2021/08/02公開 更新

Tweet
【私の評価】★★★★★(92点)
要約と感想レビュー
犯罪者は反省しない
現役の無期懲役囚が、刑務所の中での経験を綴った一冊です。著者がいるのはLB級刑務所で、L(Long)とは執行刑10年以上の受刑者。Bとは犯罪を繰り返してきた、悪質な犯罪実行者の意味です。
著者が25年の刑務所の中で感じたことは、犯罪者が、自分の犯罪をまったく反省していないということです。著者が刑務所で出会った犯罪者の中で、自分の罪を反省していた犯罪者はたった3人しかいなかったという。
犯罪者は反省しないものという実態は、見た者でなければわからないと実感します。しかし、彼れは裁判ではしおらしく反省の弁を述べます(p116)
犯罪者は常に自分が正しい
なぜ、受刑者が反省しないのかというと、頭の構造がそうなっているからです。常に自分が正しく、他人がやれば罪だが、自分がやると笑ってすませられる人ばかりだという。こうした傾向は、普通の集団にも「いじめ」が存在するようにだれもが持っているものでしょう。ところが犯罪を繰り返すような人間は、それが極端に性格の中に埋め込まれているのです。
ワル仲間の中では、強姦は誰もが通る通過儀礼であり、思ったより抵抗しないので、実は喜んでいるのではなどと考える輩が多かったと著者は言います。それどころか被害者もさほど抵抗しなかったのだから、内心では拒んでいない、喜んでいると考える人間が多かったという。
いくら口で「反省している」と言ったとしても、反省している犯罪者はほどんといません。それは仮釈放後の再犯率の高さが、明確に物語っている、と著者は語るのです。
他の者がやれば盗人でも、自分がやれば「お仕事」なのです(p39)
犯罪者も死刑は怖い
不思議なことに、こうした凶悪犯罪者であっても、死刑だけは避ける傾向にあるという。死刑にならない程度の犯行にしておくのです。
このような背景から、著者は死刑は犯罪の抑止力となっており、刑罰をより厳しくすべきと主張しています。一人殺しても死刑にならないという日本の制度は誤りであり、もっと厳しくし、刑務所内の待遇はもっと苛酷なものにすべきということです。著者は少年法のような、犯罪者を擁護し、すぐに社会復帰させようとする考え方を全面的に否定しています。
再犯を繰り返してきた挙げ句に、長期受刑者となったワルの中のワルなのに、例外なく受刑者たちは死刑だけは嫌がり、そうならないように犯罪を実行します(p138)
犯罪者の更生は空想
訳知り顔に少年や犯罪者の更生のために罪を軽くし、すぐに仮釈放させようとする専門家は、犯罪者の現実を知らない空想家であることがわかりました。社会のためにも、犯罪者が犯罪を実行しない牽制としても、死刑を含む厳罰と厳しい刑務所での待遇が必要なのでしょう。
ただ、自分は悪くないと思う犯罪者の思考は、現実を直接見なければ、普通の人には理解できないであろうとも著者は言います。それは本当なのでしょう。美達さん、良い本をありがとうございました。
無料メルマガ「1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』」(独自配信) 3万人が読んでいる定番書評メルマガ(独自配信)です。「空メール購読」ボタンから空メールを送信してください。「空メール」がうまくいかない人は、「こちら」から登録してください。 |
この本で私が共感した名言
・刑務所にいる受刑者は、知能検査の結果、標準であるIQ100の人は約8%弱しかなく、大半が軽度から中程度の知的障害を抱えている(p58)
・人というのは自分より劣位にある相手にどのように接するかで、大体の人柄はわかるものです(p118)
・ヤクザは強盗、窃盗、詐欺、性犯罪は恥とされ、御法度だったのです・・それが暴対法と警察の締めつけにより何でもありとなって、詐欺がシノギのメインストリームになった(p193)
・刑務所内での受刑者の待遇は苛酷にすべき(p214)
・心ないチンピラヤクザが「じじい」といじめる工場もあり、どんな輩、ヤクザが工場を仕切っているのか、ボスなのかが高齢受刑者の運命を左右します(p56)
【私の評価】★★★★★(92点)
目次
第1章 LB級刑務所の実態
第2章 受刑者たちは本当に反省しているのか
第3章 死刑は犯罪の抑止力となり得る
第4章 ヤクザと少年犯罪者
第5章 罪と罰
第6章 私の贖罪
著者経歴
美達 大和(みたつ やまと)・・・1959年生まれ。無期懲役囚。2件の殺人を犯し、長期刑務所に服役中。現在でも月100冊以上を読む。これまでに8万冊以上を読破。
この記事が参考になったと思った方は、
クリックをお願いいたします。
↓ ↓ ↓
人気ブログランキングへ
メルマガ[1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』] 3万人が読んでいる定番書評メルマガです。 >>バックナンバー |
|
この記事が気に入ったらいいね!
コメントする