「日本国民に告ぐ 誇りなき国家は滅亡する」小室 直樹
2018/12/31公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★★(90点)
要約と感想レビュー
従軍慰安婦は作り話
平成8(1996)年に出版された一冊です。平成8年といえば、平成5年に河野洋平の内閣官房長官の従軍慰安婦談話が発表され、平成9(1997)年度から歴史教科書に「従軍慰安婦」が記載されることが決まった時期です。朝日新聞は平成26(2014)年に慰安婦報道の記事を訂正していますが、平成8(1996)年の時点で著者は「従軍慰安婦」は根も葉もない作り話と断言しています。どうしてこうした作り話が、歴史教科書に記載されることになってしまったのか、平成8(1996)年の時点で批判・解説しているのです。
特に平成5(1993)年に河野洋平が、根拠が見つからなかったにもかかわらず慰安婦を認めた内閣官房長官談話については、韓国とすり合わせをしたものと言われていますが、その後の慰安婦問題を事実と他国が考えることになった重要な転換点であったと憤りを隠していません。特に問題としているのは、平成元(1989)年「朝日ジャーナル」に、日本国は朝鮮と朝鮮人に公式陳謝せよ」との意見広告が、半年間にわたって掲載されたことです。根も葉もない作り話である「従軍慰安婦」問題が論じること自体がタブーとなったことが、著者には許せなかったのです。
さらに言えば、昭和57(1982)年には宮澤長官は、「政府の責任において(教科書の記述を)是正する」との談話を発表しています。著者はこれもまってく必要ないことであるだけでなく、これ以上の失政はありえないと表現しています。ビスマルクは「外国の要請で国内政治を麻痺されることは愚の骨頂である」と言っており、外国の圧力によって教科書の検定基準を改めるなどありえない話なのです。
「従軍慰安婦」問題が全教科書に登場することになった最大の原因は、この平成5年8月4日、当時の内閣官房長官・河野洋平が、まったく根拠がないのに「慰安婦関係調査結果発表に関する内閣官房長官談話」を発表したことに始まる(p24)
福島瑞穂が元慰安婦を募集
日本という国家を滅亡させようという勢力の組織が、次のパターンで工作活動を行っているというのが著者の分析です。まず、その組織の日本人がネタを探し、体制構築とPR活動を行います。例えば、韓国での慰安婦問題では、福島瑞穂や高木健一などの弁護士が原告になる元慰安婦を募集しました。そして朝日新聞や共同通信などが慰安婦についての記事や、歴史教科書の書き替えなどの捏造報道で世論を動かしていったのです。
こうしたマスコミ騒動を根拠として中国、韓国政府が日本政府を批判し、日本国政府内に浸透した政治家が妥協的な判断を強制するという一つの成功パターンが形成されているように見えるのです。歴史教科書問題をめぐっては人身攻撃が盛んに行われ、反対言論が封殺されました。さらに日本のマスコミが、実証的検証を怠っているのはジャーナリストとして失格と著者は憤るのです。
平成に入り、「戦後50年」となる平成7年頃から、日本の「侵略戦争」を非難したり、日本はアジアに謝罪すべきだとするマスコミの論調が活発になりました。こうした論調を掲げるようになったのは、社会主義者であったり、いわゆる「進歩的文化人」を自称してきた「連中」(原文まま)なのです。社会主義が否定されたため、「革命」「資本主義こそ格差の根源」などの社会主義者のスローガンがもはや通用しない時代となり、生き延びるために、どうするか考えた末に「日本は侵略国家である」「日本は過去に悪いことばかりしてきた」という新しいスローガンを作り出したというのが著者の見立てなのです。
そのパターンとは・・反日的日本人が騒ぐ→マスコミが騒ぎを拡大する→それを奇貨として外国が干渉してくる→日本政府が内政干渉に屈する(p47)
嘘が書かれた教科書は危機
これらの社会主義活動家は、ソ連が崩壊し、社会主義・マルクス主義の正当性がなくなったことにより、方針を転換したかのように装い、リベラルと称して日本の歴史問題を攻撃することに焦点を移してきたのです。つまり、社会主義、共産主義を信奉してきた人たちが、体制転覆を行う手法として歴史問題に注力し、これが成功してきたといえるのでしょう。
そして愛国心を主張する人に対しては、右翼、軍国主義者、ファシスト、差別主義者と批判していくという方針を、中韓政府とも連携を取って活動しているのです。そうした活動家が、大学やマスコミや政治家の中に浸透していることが、著者の危機感なのだと感じました。
著者には、このまま日本に誇りを持てない嘘が書かれた教科書で教育が行われれば「日本滅亡」という活動家の目標が達成されてしまうという危機感があります。教科書問題については今後もフォローしていきたいと思います。小室さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・藤岡教授は論断する。「たとえば、自民党の奥野誠亮元法務大臣が『慰安婦は商行為ではないか』というごく当たり前のことを述べたのに対する朝日新聞の報道は、本当に『商行為』であったのかどうかという事実の検証ではなく、そういうことを言うこと自体をアジアの女性を侮辱するものだとして断罪(p52)
・学校教育で教えるべきは、自国への忠誠と敬愛である。つまり愛国心である「愛国」教育はアメリカに限らず、世界中の学校教育に共通のものである・・オーストラリアの学校では、生徒は機会あるごとに、「私は神とわが祖国とを愛する・・イタリアの教科書(小学二年生用)には「偉大なる国旗のもとに、われわれは・・(p285)
・なぜ、大東亜戦争に感謝するアジアの声を伝えないのか・・・たとえば、タイの元副首相・元外相タナコット・コーマン氏は言う。「あの戦争によって、世界のいたるところで植民地支配が打破されました・・・また、マレーシア・マラヤ大学のサイド・フセイン・アラタス副学長も言う。「先の戦争にあたって、日本の皆様が私たちの独立を大きく助けてくださいました・・(p265)
・戦後、日本人はGHQによって、日本人としての誇りを奪われた。しかし、戦前の日本はそうではなかった。学校でも家庭でも日本人であることに誇りを持てと、繰り返し教育した。誇りは規範や倫理の根本である。特に、軍人は「お前らは日本人の鑑になれ、手本になれ」と教えられた。一般の日本人も、「兵隊さんだったら悪いことはしない」と当然のように思っていた(p296)
ワック (2018-09-18)
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【私の評価】★★★★★(90点)
目次
第1章 誇りなき国家は滅亡する・・
・・謝罪外交、自虐教科書は日本国の致命傷
第2章 「従軍慰安婦」問題の核心は挙証責任
・・なぜ、日本のマスコミは本質を無視する
第3章 はたして、日本は近代国家なのか
・・明治維新に内包された宿痾が今も胎動する
第4章 なぜ、天皇は「神」となったのか
・・近代国家の成立には、絶対神との契約が不可欠
第5章 日本国民に告ぐ
・・今も支配するマッカーサーの「日本人洗脳計画」
第6章 日本人の正統性、復活のために
・・事実に基づく歴史の再検証が不可欠なとき
附録 東京裁判とは何であったか
著者経歴
小室 直樹(こむろ なおき)・・・1932年生まれ。大学卒業後、フルブライト留学生となり渡米。マサチューセッツ工科大学、ミシガン大学、ハーバード大学で、経済学、心理学、社会学、統計学を学ぶ。その後、東京大学大学院法学政治学研究科修了、法学博士。社会、政治、経済について評論家として活躍。著書多数。
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