「小室直樹の中国原論」小室 直樹
2006/11/30公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(78点)
要約と感想レビュー
人間関係がすべて
私は中国で暮らしたことがないので、この本を評価する立場にありませんが、この本に書かれた中国は、私の関係したカザフスタンによく似ているという印象を持ちました。
まず、人脈を大切にするというところ。カザフスタンでは親族が権力のある地位にあると、仕事が非常に進みやすいようです。中国も同じようですが、逆に言うと、人脈がないとなかなか仕事が進まないということになります。
人間関係の深さに応じて、相手はこちらの要求をきいてくれるようになっていく。深い人間関係には大きな要求。浅い人間関係には小さな要求。人間関係がなければ、要求は少しも通らない。(p74)
経済援助よりも経済学援助
そして、会計の知識が乏しいというところ。カザフスタンも中国も元は共産国家ですから、複式簿記の考え方は希薄なはずです。たとえば、減価償却という概念はありませんから、古い設備は、古いまま。カザフスタンでは、新しい設備に更新する資金を内部留保するような考え方をしている人はかなり少ないという印象でした。
中国ではどうなのかわかりませんが、著者はいまの中国には、経済援助よりも 経済学援助が必要と断言しています。つまり中国にとって大切な経済学の道具の一つが 複式簿記なのです。
契約は守られない
最後に、契約は守られない傾向があります。カザフスタンでは、契約書を読まずに、自信満々に交渉する人が多かったように記憶しています。中国でも、契約は簡単に変更可能だと考えているようです。いつ裏切られるのか分からない点では、投資した資金は短期間に回収するようにしないと、夜も寝ることができません。
そして、表面上は欧米資本主義の法律のように見えたとしても、中国の法律は、役人によって勝手な解釈をされるという。なぜなら、法律は王(政治権力)のためにあるので、役人(権力者)は、これをどう解釈してもいいという考え方が根底にあるからだという。
中国では、契約は交渉の始まりである。「これから一緒に仕事をしましょう。そのための交渉を本気になってやりましょう」。そのための意思表示なのである。・・・中国人は「契約が結ばれた直後ですら変更が可能だと思っている」という資本主義の住人にとっては驚倒すべき命題も、まかりとおる。(p352)
日本の常識は世界の非常識
著者は中国人とつきあう場合のタブーを知ることが重要であるとしています。本を読んで、「中国人とのつきあい方」や「中国的交際術」についての情報を得るのはよいのですが、「こうすれば必ず中国人の信頼が得られる」という確実な方法はなく、個別に考える必要があるという。
日本の常識は世界の非常識ですので、海外で仕事をする場合には、その土地の文化を学んでおきたいもの。中国に関係する仕事をされている方にお勧めします。★3つとしました。
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この本で私が共感した名言
・こんなとき、アメリカならどうする科学者を集めて学問的に研究する。第二次世界大戦のとき、アメリカは戦争に勝つために、あらゆる分野の学者を集めて研究させた。このとき日本はどうしていた。(p4)
・アメリカでは政府と企業の争いは裁判所が決定する。日本では、そういった争いは殆ど裁判所には持ち込まれない。行政指導なんて法術の発想なのだ。しかし、その本家は中国だ。だから、中国に進出した日本企業はどんどんやられてしまう。(p209)
【私の評価】★★★☆☆(78点)
目次
第1章 中国人理解の鍵は「〓(ほう)」にあり
第2章 「〓(ほう)」を取り巻く多重世界
第3章 中国共同体のタテ糸「宗族」
第4章 中国人意識の源流に韓非子あり
第5章 中国の最高聖典、それが「歴史」
第6章 中国市場経済はどうなっているか
著者経歴
小室 直樹(こむろ なおき)・・・1932年生まれ。大学卒業後、フルブライト留学生となり渡米。マサチューセッツ工科大学、ミシガン大学、ハーバード大学で、経済学、心理学、社会学、統計学を学ぶ。その後、東京大学大学院法学政治学研究科修了、法学博士。社会、政治、経済について評論家として活躍。著書多数。
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