「日本人のための宗教原論―あなたを宗教はどう助けてくれるのか」小室 直樹
2012/02/16公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★★(93点)
要約と感想レビュー
全能の神が存在する
キリスト教の国、イスラム教の国で仕事をしたことがありますが、あまり宗教の話はしませんでした。しかし、実際には宗教というものが各国の人々の思考・行動に大きな影響を与えているのも事実だと思います。ということで、この本で宗教の基本を学びましょう。
まず、ほとんどの宗教というものは、全能の神が存在するということ。そしてその命令に、人間は従わなくてはならない、という考え方で作られています。つまり、神が殺せといえば殺す。神が隣人を愛せよといえば愛する、ということです。そのため他宗教への許容性は、非常に低いということになります。
アメリカ大陸を発見したヨーロッパ人は、罪もない現地人を殺しました。『旧約聖書』の「ヨシュア記」で神は「異民族は皆殺しにせよ」と答えているのです。神は罪を赦さず、命令にそむけば皆殺しなのです。ところが、日本人には心から悔い改めた者は赦すべきだという一般通念があります。世界的にも歴史的にも常識外れな考え方だというのです。
根本的な感じ方からいうと、日本にはまず人間が先にありき・・・ところが、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教などの啓典宗教においては、まず初めに神が厳然として、ある・・人間は神の被造物であり、生かそうとも殺そうとも神の意思のまま(p106)
求めれば与えられる
『新約聖書』「マルコの福音書」では、「なにごとであれ祈り求めることは、すでにかなえられたと信ぜよ。そうすれば、そのとおりになるであろう」とイエスが発見した真理を伝えています。
つまり、キリスト教は基本的には「イエスを信じる」だけで救われるというものなのです。寄付や儀式などの行動で救われるという考え方は、後の人が作り上げたものなのです。宗教も時代とともに、いろいろな流派ができ、中身も変わってしまうということなのでしょう。
「信仰のみ」(心でキリストを信じさえすればよい)であるべきキリスト教が、外面的行動である善行や修行を重んずるようになっていた。もっと悪いことに、(中世の)カトリック教会は、外面的行動に他ならない秘蹟という儀礼によって、信徒に神の恩恵を与え、救済を保証することにもしていた(p127)
明治政府は天皇を神とした
日本の明治政府は、富国強兵を目指すため天皇を神としました。著者は新たに作った天皇教に改めさせたと表現しています。そして、儒教のは、高級官僚を作るための教養を与える宗教であるとしています。そしてイスラム教、仏教といくのですが、メルマガ発行の時間になってしまいました。
あとは、この本を読んで学んでいただきたいと思います。自分の無見識を再確認したということで、★5つとしました。小室さん、よい本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・キリスト教、仏教、イスラム教、ユダヤ教、儒教、このなかでいわゆる天国と地獄がある宗教をすべて挙げよ。答えは出ましたか?正解は、天国と地獄があるのはイスラム教だけである(p60)
・仏教の場合すべては空である。実体を考えてはいけない。したがって、魂もなければ、地獄も極楽もない(p199)
・官僚制度・・弊害を制御するため・・アメリカでは・・大統領、政権党が変わったときに、原則として高級官僚を全部入れ替える・・・ソ連のスターリンシステム・・・これは高級官僚を大量に粛清する(p345)
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【私の評価】★★★★★(93点)
目次
第1章 宗教は恐ろしいものと知れ
第2章 宗教のアウトラインを知る
第3章 神の命令のみに生きる"キリスト教"
第4章 "仏教"は近代科学の先駆けだった
第5章 "イスラム教"は絶好の宗教の手本
第6章 日本に遺された"儒教"の負の遺産
第7章 日本人と宗教
著者経歴
小室 直樹(こむろ なおき)・・・1932年生まれ。大学卒業後、フルブライト留学生となり渡米。マサチューセッツ工科大学、ミシガン大学、ハーバード大学で、経済学、心理学、社会学、統計学を学ぶ。その後、東京大学大学院法学政治学研究科修了、法学博士。社会、政治、経済について評論家として活躍。著書多数。
読んでいただきありがとうございました!
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