【書評】「日本の敗因―歴史は勝つために学ぶ」小室 直樹
2006/09/25公開 更新

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【私の評価】★★★★☆(85点)
要約と感想レビュー
日本は官僚で負ける
この本の結論は、第二次世界大戦は、物量で負けたのではなく、軍部の腐敗官僚によって負けたと主張しています。つまり、当時の軍部は、日本を支配する官僚だったのです。
そして、現在の経済戦争でも、企業の強さではなく、経済官僚(財務省、経済産業省)の腐敗によって負けるだろうと予想しています。
戦前・戦中の日本は、軍事官僚が日本を支配していた。戦後の日本は経済官僚が日本を支配している。その官僚制があまりにもよく似ているため、同様の「敗戦」に導かれるであろう(p305)
保護すれば弱くなる
確かに、旧大蔵官僚は、護送船団方式で銀行を弱体化させ、「総量規制」により地価、株価の下落を加速させました。デフレの日本で、消費増税を実施しました。
経済産業省も、多くの産業分野において規制を残し、支配力を維持しようとして、産業を弱体化させています。規制によって、民間企業の自立性とやる気を失わせているのです。
マックス・ウェーバーは、「最良の役人は最悪の政治家だ」といったが、まさにその通りである。(p314)
官僚支配を打破するためには
こうした官僚支配を打破するために、著者は、政治家が主導権を持つこと。そして、それを可能にする人材を育成することを提唱しています。
日本軍の官僚化と現在の官僚組織との類似点を明確にし、官僚の恐ろしさを明らかにした名著ということで、★4つとします。
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この本で私が共感した名言
・日本はアメリカの物量に負けたのではない。・・・これは、敗戦責任を逃れるための軍部の口実にすぎない・・あの戦争は無謀な戦争だった・・・腐敗官僚に支配されたまま、戦争という生死の冒険に突入したこと。それが無謀だったのである。(p26)
・外務官僚の宣戦布告は、奇跡的怠慢さをもって行われた・・・井口貞夫参事官と奥村勝蔵書記官とは、飲みすぎて、グデングデン・・・宣戦布告の通告は遅れた。・・・下手人たる井口参事官と奥村書記官とは・・・外務事務次官にまでなった(p120)
・開戦以前に、「パイロット二万人養成計画」というものをぶちあげた人物がいるということだ。すばらしい計画である・・・実行されなかった理由は、・・・戦争が終わったあと、彼らをどうするのか、ということだった。(p200)
▼引用は、この本からです。
講談社
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【私の評価】★★★★☆(85点)
目次
第1章 「敗因」は腐朽官僚制にあり
第2章 真珠湾攻撃に始まった日本の「敗因」
第3章 ヴェンチャーであった「ゼロ戦」
第4章 勝てなかった日本のシステム
第5章 歴史に学ばなかった国の悲劇
第6章 戦後も脈々と続く「敗戦のシステム」
第7章 戦後日本経済に吹いた「神風」の正体
第8章 どうすれば勝ち残れるのか
著者経歴
小室 直樹(こむろ なおき)・・・1932年生まれ。大学卒業後、フルブライト留学生となり渡米。マサチューセッツ工科大学、ミシガン大学、ハーバード大学で、経済学、心理学、社会学、統計学を学ぶ。その後、東京大学大学院法学政治学研究科修了、法学博士。社会、政治、経済について評論家として活躍。著書多数。
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