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「政治家も官僚も国民に伝えようとしない増税の真実」髙橋洋一

2019/05/10公開 更新
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政治家も官僚も国民に伝えようとしない増税の真実 (SB新書)


【私の評価】★★★★★(93点)


要約と感想レビュー

 消費税10%への増税が、半年後となりました。元財務省官僚の著者は、今のタイミングで消費税増税は必要ないと主張し続けています。そもそも消費税増税は民主党政権時代に決定されたことです。野党時代は当然消費税に反対していたのに、民主党は大蔵省に簡単に丸め込まれたのです。そういえば、前回の消費税増税も社会党政権時代に決まったものでした。


 消費税は「社会保障財源」とされていますが、本来消費税は安定した一般財源とすべきもので、国民の理解が得やすいから「社会保障財源」と理論武装しているだけと,高橋さんは解説しています。財源を増やすためには徴収漏れを減らす、保険料を上げるという方法もありますが、現在の体制とやる気を変更せずに簡単に財源を増やす方法が、消費税増税なのだ,ということです。


・財務省も年金の財源を消費税でまかなうという建前があるほうが、国民の理解が得やすい・・年金が保険であるという本当のことがバレてしまうと、「年金財源が不足しているのなら保険料を上げればいいだろう」と反論されてしまう・・厚生労働省にとっては、財源としての税金を財務省=国税庁に徴収してもらったほうがラク、という事情もある(p97)


 そもそも、消費税増税は国の財源を増やし、国債発行を減らすためですが、消費税増税の前に国の資産を売却したり、税金や年金保険料の徴収漏れを減らす努力が必要である,というのが著者の主張です。


 著者が現役時代に政府のバランスシートを作成し,資産の売却の可能性を指摘すると、天下り先がなくなる可能性があり却下されました。イギリスで歳入庁ができたのを報告すると国税庁を手放しくたくないので、上司から口外しないように注意されたりもしました。


 つまり、財務相にとっては消費税増税だけが最も簡単に現状の権益を維持しつつ、財源を確保できる方法ということなのです。結論が先にあって、その結論を実現化するための理論を考え出すのが財務官僚時代の仕事だったのです。


・当時の上司に「・・政府のバランスシートはそれほど悪くないことが判明した。もし、政府の借金を返済する必要があるというのなら、まずは資産を売却すればいいと思う」と報告をしたら、「それでは天下りができなくなってしまう。資産を温存した上で、増税で借金を返済する理論武装をしろと言われた」そして、「このバランスシートは公表しない。"お蔵入り"にする」とはっきり言われたことを覚えている(p177)


 著者の主張に説得力があるのは、国税庁と日本年金機構を統合して歳入庁を作るという対案があるからでしょう。元大蔵省官僚であり、キャリアとして地方税務署長の経験のある著者は、税と社会保険の二重行政の非効率をよくわかっているのです。


 高橋さん、良い本をありがとうございました。



この本で私が共感した名言

・消費税が持つ逆進性は、所得の低い人により強く影響が出る。所得が低い人に対して給付する年金の財源に、所得が低い人からの税収を充てるというのは、明らかに矛盾している(p88)


・日本の年金は賦課方式であり「積立方式」ではない・・ある一定の前提の下で必要な資金が不足している「未積立債務額」というのは計算することができるが、もともと積立はないので、積立が不足するという事態はない仕組みだ(p81)


・年金保険料は、国が徴収する際、税金と同じに扱うことが法律で定められている。したがって、年金保険料を滞納すると、税金を滞納した場合と同じく、法律的には強制徴収することが正しいのだ・・・以前は、年金保険料の未納(=実質的には"滞納")について、税金の滞納ほど厳しく追求されることはほとんどなかった・・日本年金機構に、未納者からの徴収を行う人員やデータが不足していたことに加え、きちんと徴収しようという"ヤル気"が欠如していたせいである(p106)


・国税庁がつかんでいる法人(=企業)の数は約280万件あるといわれ、この法人はすべて税金を払っている。一方、日本年金機構が把握している法人は約200万件で、国税庁より80万件ほど少ない(p108)


・(年金の)積立金を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人」(GPIF)は、株式投資などを行っている。筆者は、積立金を運用する必要はまったくないと考えている・・・賦課方式で運営されている以上、インフレが起きても、つねに現役世代からの保険料が給付に回されるため、年金額の実質的な目減りは避けられることになる(p145)


・法人が得た所得は、経営者や従業員への給与と、株主に対する配当金になる。したがって、個人の給与所得への課税と、株の配当金に対する課税をきちんと行えば、わざわざ法人に課税しなくても済むことになる・・・完全に個人の所得を捕捉することは技術的には難しいので、法人税をなくすことは現実的には困難だが、所得税の捕捉率が上がれば法人税を減らしていくのが、基本的な税の理論からすると正しいのである(p184)


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▼引用は下記の書籍からです。
政治家も官僚も国民に伝えようとしない増税の真実 (SB新書)
髙橋洋一
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【私の評価】★★★★★(93点)


目次

第1章 「消費税増税」はデタラメばかり!
第2章 「年金財源」に消費税なんて必要ない!
第3章 消費増税の前に、「歳入庁」の設立が先だ!
第4章 「少子高齢化」でも年金制度は維持できる!
第5章 財政再建が完了した今、消費増税の必要はない!
第6章 こうすれば、消費税は要らない!



著者経歴

 高橋洋一(たかはし よういち)・・・1955年、東京都生まれ。東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業。博士(政策研究)。1980年に大蔵省(現・財務省)入省。大蔵省理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員、内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)、内閣参事官(首相官邸)等を歴任。小泉内閣・第一次安倍内閣ではブレーンとして活躍。(株)政策工房代表取締役会長、嘉悦大学教授。『さらば財務省!』(講談社)で第17回山本七平賞受賞


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