「戦争と平和」百田 尚樹

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戦争と平和 (新潮新書)

【私の評価】★★★★★(91点)


■日本のゼロ戦と特攻隊員の物語
 「永遠の0(ゼロ)」を書くにあたり
 日本軍と大東亜戦争を調査して何がわかったのか、
 百田さんが解説してくれる一冊です。


 百田さんの結論は、
 「日本は戦争に向いていない民族である」
 ということです。


 なぜかといえば、日本の兵器、
 戦略、戦術が「戦争に勝つ」という 
 目的にフォーカスされていない。
 これでは他国との戦争に勝てないと
 実感したのです。


・「日本人は戦争に向いていない民族であった」・・これが日本人の本来の姿なのかもしれないという不思議な安心感を覚えました(p4)


■たくさんの例を挙げていますので、
 一部だけご紹介しましょう。


 ゼロ戦は戦闘力抜群でも防御力がゼロだった。
 貴重なベテランパイロットを使い捨てにした。
 陸軍、海軍、役所が縦割り行政でバラバラ。
 年功序列で能力のない人でも司令官に抜擢される。
 人の技量に頼り自動小銃を開発しない。
 補給の重要性を無視した。
 政府、官僚、マスコミにスパイが浸透。


 完璧な人がいないように、
 完璧な国家も存在しません。
 だが、良くない点については
 明確に自覚し、改善を考えることが 
 大事なのでしょう。


・悪いことは想定しない、考えない・・・ある種、日本人の伝統的ともいえる思考法が、ゼロ戦の設計思想にも表れている・・・なぜ防御力がないのか。それは撃たれることを想定していないからです(p32)


■百田さんが言いたいのは、
 日本人は何も変わっていない、
 ということです。


 最悪を想定しない日本人は、
 他国の攻撃を想定していません。
 憲法も自衛隊もこのままでいい。
 政府、官僚、マスコミにスパイが
 浸透しているのではないか。
 昔も今も状況は変わっていないのです。


 ちょっと暗い気分になる本でしたが、
 それが現実なのでしょう。
 私たちは自分にできることをやるしか
 ないのでしょう。


 百田さん、
 良い本をありがとうございました。


───────────────


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・戦争という極限状況下においては、その民族あるいは国家の持つ長所と短所が最も極端な形で現れる(p12)


・アメリカの戦艦には、必ずダメージコントロールのための要員や士官が搭乗していました・・・ところが、日本海軍の艦艇はそういう要員を一人も乗せていませんでした。その理由はもうおわかりでしょう(p37)


・ゼロ戦と戦って、穴だらけにされてガダルカナル飛行場に戻ってきたグラマンF4Fの写真が残っています。まさに蜂の巣状態です。これを「グラマンF4Fがこてんぱんにやられた証」と見るべきでしょうか。いやむしろ、ここまで穴だらけにされても戻ってきている点に注目すべきでしょう(p24)


・世界の戦争の歴史を見れば、敗軍の将はもちろん兵士も皆殺しとなることのほうが多いのです・・・また戦争では一般市民も虐殺されるケースが珍しくないというか、むしろ普通のことです。しかし、日本ではそういうことはほぼありませんでした。日本人はいつの間には「徹底して守りを固めないと、殺される」という思想を持たなくなったのではないでしょうか(p30)


・日本海軍は搭乗員を使い捨てた・・・神風特攻隊がその最たるものですが・・・日本軍は、ラバウル航空隊を毎日のようにガダルカナルに向けて出撃させました・・・距離は約1000キロもあったのです(p50)


・自動小銃を日本が生産しなかった・・・一度に弾を連発するから無駄遣いが多くなるといった懸念もあったようです。その背景として「そんなものを作るよりも兵士の技量を高めればいいじゃないか」という思考法がありました(p55)


・グラマンF4Fには水上に不時着したことも考えて救命用のゴムボートや救急セット、海水を真水に変える装置・・釣竿まで用意されていました・・無線も積んでいるので、救助を求めることもできます(p57)


・パイロット一人を育成するのに、どれだけのお金と時間がかかっているのかを冷静に見ていました。パイロット一人を失うということは、その養成にかけた時間と費用、すなわちコストを無駄にしてしまうという考え方です。だから、パイロットを助けるのに少々のコストをかけても十分に見合う、というのが彼らの基本思想なのです(p58)


・戦争末期になると・・・ゼロ戦を運ぶ牛を手に入れるのが困難になりました。困った三菱重工の社員は、仕方なく闇市で牛を手に入れますが、ある日、その牛で荷車を動かしている時に、地元の警察に捕まってしまいました。そして起訴までされてしまったのです・・(p69)


・日本国憲法の中には「緊急事態条項」がありません。緊急事態条項とは、戦争や大災害のように国家存亡の危機が発生した場合に、憲法や法律の平時通りの運用を一時的に停止するというものです。世界各国の中でこうした緊急事態に関する条項がない国などほとんどありません(p34)


・2015年秋の安保法案が国会で話題になっている時に、SEALsの集会に参加した若者が「もし中国が戦争を仕掛けてくるというのであれば、僕は彼らと酒を飲んで遊んで仲良くなり、戦争の抑止力になってやります」というようなことを発言し、話題になりました(p142)


・実際に戦争になって、他国軍の兵士が日本の民間人を撃とうとしているのを見た自衛隊員が、その兵士を射殺した場合、彼は間違いなく日本の人権はの弁護士によって、殺人罪で告発されるでしょう(p170)


・現在、尖閣諸島周辺に自衛隊機が毎日のようにスクランブル発進していますが、2017年から、それまで二機一組だったのが四機一組になりました。理由は、一機が撃墜された場合、残る三機が反撃できるようにするためです。つまりまず日本の自衛隊機が撃たれることが前提になっているようなものです(p170)


・20世紀後半以降、軍事力の恫喝でもって領土を増やしているのは中国だけです(2014年、ロシアのクリミア編入という例もありますが)。世界のほとんどの国の軍隊は自国を守るためのものです。しかしいかに軍隊を持っていても、小国では大国に対抗できません。そのために考え出されたのが、「集団安全保障」という概念です(p180)


・日本には、「軍隊を持てば戦争になる」という人がいます。自衛隊を軍隊として認めようという発言に対して、「極右だ」「軍国主義だ」と非難する人がいます・・(p179)


・テレビ朝日の「TVタックル」という番組に出て、朝日新聞の菅沼栄一郎氏と議論を交わしたことがあります・・・「丈夫な鍵を付けると、相手はそれを壊すために、もっと強い武器を用意する(だから、鍵は弱い方がいい)」と言ったのです(p202)


・2015年、日本は「平和安全法制整備法案」を国会で可決しましたが、これによって、有事の際にアメリカとの間で「集団的自衛権」を限定的ながらも行使できるようになりました・・これに反対した国が世界で二つありました。それは中国と韓国です・・・まったくもって理解不能なのは、日本の多くのメディアが反対したことです。また少なくないジャーナリスト、学者、文化人、タレント、市民団体たちも反対しました・・・しかし当時いくつかの報道機関が行った世論調査では、過半数の人々が「賛成」でした・・テレビ報道においては、ほぼ「反対一色」(p183)


・国を守る力のない国家は、どんな運命を辿ったのか、アジアやアフリカの歴史が証明しています。多くの国がヨーロッパの列強に、国土を奪われ、虐殺され、奴隷にされたのです。南北アメリカ大陸でもインディアンたちは大量に虐殺され、同じ目に遭いました。また現在でも、チベットやウイグルは国土と主権を奪われ、多数の民衆が虐殺されています(p188)


・彼(やくみつる)は別の番組で、「中国領になってもいいから、戦いたくない。中国領で生きていく」という発言をしました・・・テレビに出ている文化人は、こういう空疎な(そして本人は美しいと思っている)言葉を平気で吐きます。経済評論家の森永卓郎氏はテレビで「とんでもない奴が攻めてきたら、黙って殺されちぇばいいんだと思うんです。世界の歴史の中で、昔は日本という国があって、戦争をしなくて制度を守るんだって言い続けて、ああそんな良い民族が居たんだなあと思えばいいじゃないですか」というような発言をしていました(p203)


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■目次

第一章 ゼロ戦とグラマン
第二章 『永遠の0』は戦争賛美小説か
第三章 護憲派に告ぐ



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