「戦後経済史は嘘ばかり 日本の未来を読み解く正しい視点」髙橋 洋一
2019/03/27公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★★(92点)
要約と感想レビュー
■バブルを退治した平成の鬼平と言われた
三重野日銀総裁が失われた日本の20年、
デフレの20年を作ったと分析する一冊です。
バブルの時代、バブル退治のために
日銀は金融引き締めを行いました。
しかしバブルだったのは
土地と株式だけであり、
消費者物価はほぼ0だったのです。
消費税の導入と金融引き締めにより
日本はデフレ、不況になりました。
・「資産バブル」に対しては、利上げは効果を持ちません・・このトンチンカンな利上げによって叩き潰されたのが、健全な一般物価でした(p21)
■金融引き締めにより円高が進行し、
輸出企業の経営不振から
工場を海外に移す動きが進みます。
不況ですから雇用意欲も減退し、
失業者が増え、大学生の就職率も
低下していきました。
それでもなお日銀は金融引き締めを
継続していました。
著者はそれを理解できない
「ナゾ」としています。
・私がどうしても理解できないのは、日銀が白川方明(まさあき)総裁時代(2008年4月~2013年3月)にデフレ克服のための金融緩和をかたくなに拒んでいたことです・・・日銀の中に金融機関の経営サイドに立って主張する人たちがいたからではないか、と想像しています(p198)
■著者の意見は、マクロ金融政策の目的は
インフレとならない範囲で
失業者を減らすことだとしています。
私は経済に詳しくないので、
この本の真の価値がわかりません。
仮にこの本の内容が正しいとすれば、
ものすごい価値のあるものではないでしょうか。
高橋さん、
良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・「失われた二十年」は、まさに日本が必要以上に金融引き締めを続けたので「円高」で苦しんだ時期と重なります(p117)
・2003年3月の日銀総裁交代時に誰を選任するか・・・日銀は「独立性」を楯にとってデフレ克服のための金融緩和をしませんでした・・・小泉首相の意向を受けて、中川氏が福井氏に「デフレ脱却をやりますか」と尋ねて約束をしてもらいました(p195)
・カネを刷れば円安にできるのに、円高を放置した日銀の責任は大きいのです・・・マクロ経済政策においては「失業者をへらすこと」が一番重要な目的です。そのほかミクロのことに関しては、政府は民間の邪魔をせず、余計なことはしないで、民間の人に知恵を絞ってもらえばいいのです(p228)
・残念ながらバブルの事前の回避策はありません・・「バブルを起こさない」ことばかり考えて、経済を減速させるような手を打ち続けるより、「バブルが起きたら正しく処理すればよい」と考えて、恐れずに適切なマクロ経済政策を展開していくべきなのです(p168)
・FRB議長だったバーナンキ教授はリーマン・ショック後の一般物価指数の急落を見て判断して、金融を緩和しました。日銀のように「資産バブル潰し」と称する引き締めはしませんでした(p166)
・杓子定規なIMFは、アルゼンチンにも、インドネシアにも、韓国にも、経済危機の際に融資と引き替えに超緊縮財政を求めました。その結果、各国の不況を深刻化させることになりました。IMFは2010年になって、ようやくその過ちを認めました(p59)
・高度経済成長を成功させた最大の要因・・当時は1ドル=360円でしたので、有利な為替レートにうまく乗って輸出企業はどんどん成長していきました政府が民間の邪魔をしなかったことで高度成長を達成することができたのです(p70)
・プラザ合意の意味・・・政府の裏の介入でゲタを履かせてもらっていたけれども、プラザ合意以降は実力で勝負しなければならなくなったというのが真相です(p116)
・オリンピックを機に貿易の自由化が進みました・・・1960年に岸政権が「貿易・為替自由化計画大綱」をつくった時点では、貿易自由化率は40%でしたが、東京オリンピックを目前に控えた1963年には、貿易自由化率は92%にまで上昇しています。1964年にはOECD(経済協力関係機構)に加盟して、資本の自由化も進めました(p86)
・マスコミは「金融ビッグバン」とか「銀行・証券の相互参入」と大々的に書き立てました。しかし、実際にはずっと前からやっていることなので、大した話ではなかったのです(p137)
・証券会社は、営業特金とともに時価発行増資も顧客に勧めていました。その裏で他社の営業特金のファンドを使って、その会社の株式を買い上げます。そうすると、その会社の株式が釣り上がって、時価発行増資をするときに莫大な資本がタダ同然で手に入ります・・事実上の利回り保証と損失補填を約束してもらっていますからノーリスクです(p153)
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【私の評価】★★★★★(92点)
目次
プロローグ 経済の歩みを正しく知らねば、未来は見通せない
第1章 「奇跡の成長」の出発点に見るウソの数々
第2章 高度経済成長はなぜ実現したのか?
第3章 奇跡の終焉と「狂乱物価」の正体
第4章 プラザ合意は、日本を貶める罠だったのか?
第5章 「バブル経済」を引き起こした主犯は誰だ?
第6章 不純な「日銀法改正」と、痛恨の「失われた二十年」
終章 TPPも雇用法制も、世間でいわれていることはウソだらけ
著者経歴
高橋洋一(たかはし よういち)・・・1955年、東京都生まれ。東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業。博士(政策研究)。1980年に大蔵省(現・財務省)入省。大蔵省理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員、内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)、内閣参事官(首相官邸)等を歴任。小泉内閣・第一次安倍内閣ではブレーンとして活躍。(株)政策工房代表取締役会長、嘉悦大学教授。『さらば財務省!』(講談社)で第17回山本七平賞受賞