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「リーダーシップ進化論―人類誕生以前からAI時代まで」酒井 穣

2023/01/25公開 更新
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「リーダーシップ進化論―人類誕生以前からAI時代まで」酒井 穣


【私の評価】★★★★★(90点)


要約と感想レビュー

 石器時代から現代社会まで、私たち人類がどうやって組織をつくり、リーダーをつくってきたのか考察した一冊です。膨大な書籍からの引用される時代説明と解釈に圧倒されました。私たち人類は、間氷期がはじまった約1万年前に狩猟採取社会から農耕社会へゆっくりと移行していきました。私たちは一世代20年とすれば500世代しか、農耕社会を経験していないのです。肥満や糖尿病を見れば、人類は食料に困らない飽食の現代の生活へ適応途上にあることがわかるのです。


 著者の仮説は、インディアンのような先住民の生活を観察すれば、狩猟採取社会は比較的「幸福」であったというものです。もちろん食料は少なく平均寿命も短いし、物質的にも豊かではない。しかし、狩猟採取社会は労働時間は獲物を狩るだけで、農耕に比べれば短く、組織の平等と平和が保たれていただろうというのです。


 1万年前にはじまった農耕社会により食料が安定供給され、人口は増加し、人類は一箇所に定住するようになりました。その一方で、長時間労働が必要となり、土地の奪い合いの戦争が起き、貧富の差が大きくなったのです。ある意味、人類は狩猟採取社会の「幸福」を捨てたということなのです。


・私たちは、狩猟採取社会に見られる幸福を捨てている。その代わり、競争に勝つことや物質的に満たされることなど、さまざまな欲望に突き動かされている。それでも、私たちの多くがいまも幸福を求めている(p113)


 現代社会においては国家という単位が、人類の最上位の組織として存在しています。その国家の仕組みとして、民主主義と社会主義が対立する時代もありましたが、社会主義は実際にテストして機能しないことが証明された社会構造であるとしています。


 そして民主主義と資本主義が主流となった現代社会では、世界でもっとも裕福な8人が、世界の下から半分、約36億人分と同等の資産を持っているというほど貧富の差が拡大しています。著者は「新たな封建社会が誕生した」としています。著者は独裁国家について触れていませんが、私も資本主義の王様と、独裁国家の王様が戦っているのが、現代社会なのでしょう。


 資本主義でも独裁国家でも、子どもは学校という仕組みによって、国家に役立つ人間になるよう教育されています。私たちは、国家という公共のために命さえ捨てられるように進化し、教育する仕組みを作っているわけです。そして核をもった資本主義国家と、核を持った独裁国家が対立したとき、核保有国同士が戦争をすれば、どちらも破滅してしまうという状況の中で、狂人が国家のリーダーになるのは、単なる確率の問題であると指摘している点にもまったく同感でした。国家で分断された現代社会では、国家間の戦争のリスクはなくならないのです。


・ある集団に武器を売れば、その集団と敵対する集団もいずれ上客になる・・武器を買った集団は、ヨーロッパ文明に依存するようになり、実質的な傘下に入っていったのである(p280)


 日本人については、戦略的思考がない課題を指摘しています。欧米の圧力によって、明治維新で西欧化した日本では、まだ、個人の精神論が強く、組織を合理的に設計して運営していく視点が弱いのです。著者は日本人の戦略的思考のなさを、弱点としてではなく、伸びしろと表現しているのが唯一の救いでした。


 著者は近代資本主義社会の特徴として、自由と平等を得るためには富裕層にならないと難しいとしています。自分の保身を考えれば、こうした環境の中で他の人と同じように行動するのが正しい選択です。ただ、そうした貧富の差が拡大すると戦乱が起きるという歴史を知っている人がいるとすれば、それを事前に補正しようとするのが、今求められるリーダーではないかと著者は問いかけるのです。グループ全体が悪い方向に進んでいる場合には、空気を読まない人が求められるのです。


 このように圧倒的な量の知恵と新しい視点を提供してくれる素晴らしい一冊でした。一方で、事実と解釈と著者の意見をわけて読んでいく必要があると思いました。なぜなら学会や研究者の間で、ある程度事実とされていることと、一部研究者の推論と、著者の意見とが入り混じっており、その信ぴょう性に大きな差があるからです。特に多くの情報提供があるので、著者の単なる意見がもっともらしく見えることもあるわけです。


 それにしても、リーダーシップというよりは人類という文明について紐解いた内容となっており、引用された未読の本を読んでいくのも楽しいのではないでしょうか。もう少し酒井さんを調査してみたいと思います。酒井さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・リーダーには・・・「限られた資源」と「限られたポスト」を、どうやって平和的に増やし配分するかである(p7)


・職場の仲間との絆がつくれないような人材は、リーダーとして成長していくことは難しい(p359)


・高潔な内面(観察できない)を期待するよりも、真摯な行動(観察できる)に対して具体的なメリットを設定するほうが現実的ではないだろうか(p190)


・火を通した食材は、柔らかくなって、消化の負担が減る・・人間を除いた生物の多くは、食料を確保し、食べて消化するために、1日のほとんどの時間を使っている(p93)


・国家が消え、ボーダレス化の時代になれば、発展途上国から先進国への膨大な人口の流入が起こる。その結果として、先進国の平均年収は4割削減する(p337)


▼引用は、この本からです
「リーダーシップ進化論―人類誕生以前からAI時代まで」酒井 穣
酒井 穣、中央経済社


【私の評価】★★★★★(90点)


目次

第1章 人類以前のリーダーシップ
第2章 旧石器時代以降のリーダーシップ
第3章 農耕以降のリーダーシップ
第4章 四大文明の誕生以降のリーダーシップ
第5章 ルネサンス以降のリーダーシップ
第6章 インターネット以降のリーダーシップ



著者紹介

 酒井 穣(さかい じょう)・・・株式会社リクシス創業者・代表取締役副社長。1972年東京生まれ。慶應義塾大学理工学部卒。TIAS School for Business and Society 経営学修士号(MBA)首席取得。商社にて新規事業開発に従事後、オランダの精密機器メーカーに光学系エンジニアとして転職し、オランダに約9年在住する。帰国後はフリービット株式会社(東証一部)の取締役(人事・長期戦略担当)を経て、2016年、仕事と介護の両立支援サービスや人工知能を用いた高齢者支援サービスを提供する株式会社リクシスを共同創業。


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