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「黒魔術がひそむ国 ミャンマー政治の舞台裏」春日孝之

2023/01/24公開 更新
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「黒魔術がひそむ国 ミャンマー政治の舞台裏」春日孝之


【私の評価】★★★☆☆(72点)

要約と感想レビュー

 ミャンマーといえば、2021年のクーデターでアウンサンスーチー氏が拘束されたこと、ミャンマー軍がイスラム教徒のロヒンギャを、不法移民としてバングラディッシュへ追い出していることなどが思い出されます。この本では、ミャンマー人を支配する仏教の僧侶、占星術師に焦点を当ててミャンマーという不思議の国の雰囲気を教えてもらいましょう。


 ミャンマー人の9割は仏教徒のビルマ族です。仏教徒といっても日本の先祖を礼拝する「大乗仏教」とは違って、ミャンマーは「上座部仏教」で輪廻転生を信じ、来世を強く意識しているという。そして、135の少数民族があり、そのうち16の少数民族武装組織が武力闘争を行っているのです。ロヒンギャにも武装組織があり、活動しているのです。


・ミャンマー人の約九割は仏教徒である・・・「上座部仏教」だ・・輪廻転生を信じ、来世を強く意識して自己の魂の救済を求める(p12)


 驚くべきことは、仏教徒のミャンマー人にはたいてい崇拝する僧侶がいて、政治家の場合は偉くなるほど占星術師にも頼るようになるということです。著者が最初に違和感を持ったのは、大統領の生年月日がわからないということ。なぜわからないのかといえば、生年月日を知られると黒魔術で呪われる恐れが出るからだというのです。


 ミャンマー人は占星術師の占いを重要視しています。それも「一つでも二つでも当たれば凄いじゃないですか」というのです。日本人の著者は、「いくつかでも的中すれば凄い」という感覚がまったく理解できないのです。日本でも政治家が占い師に相談するといった話を聞きますが、ミャンマーは普通の人も含めて占星術師を重要視しているというのです。素直には信じられませんが、事実なのでしょう。


・ミャンマーの仏教には占星術・・・ナッ(精霊)信仰、ウェイザー(超能力者)信仰・・さらに呪術といった要素も混然一体(p12)


 ミャンマーは1948年に独立、1962年にネウィンが軍事クーデターで政権を掌握すると、社会主義を推進したため、経済が停滞。ミャンマーは世界の最貧国となってしまいました。ネウィンは魔術師の助言で道路を右側通行に変更したり、占星術師の助言で高額紙幣を使えなくする処置を行ったというのです。


 日本でも仏滅の日には、葬式や引っ越し、結婚式などしないと考える人が多いのですが、ミャンマーではそれ以上に占いを信じて行動する人が多いのですね。ミャンマーについては興味を持っているので、北朝鮮に続くアジアの最後の秘境として注目していきたいと思います。春日さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・ミャンマー仏教を構成する「表の世界」は僧侶が取り仕切り、「裏の世界」は占星術師が中心的な役割を担う(p40)


・仏教徒の彼女が不意に床にひれ伏した。頭を垂れて床をはうようにしてペニャン師にすり寄り、法衣からはみ出た素足を有難そうに触る(p69)


・ミャンマー独立以来続く多くの少数民族武装組織との内戦・・少数民族は「広範な自治」を求めて・・「国家の統合」という国是を揺るがすことになりかねない(p80)


・ロヒンギャ問題は、イスラム教徒に対する仏教徒の迫害という文脈で語られるが、より本質的には歴史的な土地・領土の奪い合いという側面が強い(p152)


▼引用は、この本からです
「黒魔術がひそむ国 ミャンマー政治の舞台裏」春日孝之
春日孝之、河出書房新社


【私の評価】★★★☆☆(72点)


目次

1 誕生日は国家機密
2 アウンサンスーチーと占星術
3 ネピドー遷都の謎
4 「呪いの人形」とクーデター



著者経歴

 春日孝之(かすが たかゆき)・・・1961年生まれ。ジャーナリスト、元毎日新聞編集委員。1985年に毎日新聞社入社。1995~1996年、米国フリーダムフォーラム財団特別研究員としてハワイ大学大学院(アジア・中東史)に留学。ニューデリー、イスラマバード、テヘラン支局などを経て2012年よりアジア総局長。翌年ヤンゴン支局長を兼務。2018年退職。


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