人生を変えるほど感動する本を紹介するサイトです
本ナビ > 書評一覧 >

「絶望名人カフカ×希望名人ゲーテ: 文豪の名言対決」頭木 弘樹

2023/01/14公開 更新
本のソムリエ
本のソムリエ メルマガ登録[PR]

「絶望名人カフカ×希望名人ゲーテ: 文豪の名言対決」頭木 弘樹


【私の評価】★★★☆☆(73点)


要約と感想レビュー

自己重要感の低いカフカ

カフカといえば、朝起きたら虫になっていたという小説「変身」を書いた人です。カフカはドイツの「労働者災害保険協会」に勤める普通のサラリーマンで、「絶望名人」というように非常に自己重要感が低い人だったようです。自己重要感が低いためかカフカは、誰に対しても相手が優れていると感じるようで、他人の長所を見つけ出す名人だったというのです。そのため、話を丁寧によく聞いてくれるカフカを好きな人は多かったという。


ところがカフカは相手と自分を比較して、自分に絶望してしまうのです。何があってもダメなのは自分のほうで、他人を責めることはなかったのです。よく美形の女性で、自分は今のままではダメだ、もっと痩せないと、もっと肌を手入れしないと、などと思い込んでいる人がいますが、自分を客観的に見ることができないという点では似ているように感じました。


・カフカは・・誰に対しても、その人の長所を見いだすことができた。ただ、自分自身に対してだけは容赦なかった(p174)


カフカが安全ヘルメットを発明

カフカは2回婚約し、2回とも婚約を破棄しています。結婚を約束するほどなので、女性から嫌われているわけではないのです。しかしカフカは、「結婚の幸福は、最もうまくいった場合でも、おそらくぼくを絶望させるだろう」と、結婚もしていないのに、マイナス思考です。根拠もなく未来に不安を持つ人がいますが、カフカも極度の不安症だったのです。


ただ、「労働者災害保険協会」でカフカが安全ヘルメットを発明し、製鉄所での労災死亡者が減ったとの逸話もあり、マイナス思考も最悪を想定するという意味ではプラスに作用することもあるのです。そうした不安からカフカは家にひきこもることが多かったという。だから小説の「虫」とは、家の外に出たくない自分であり、「虫」になれば会社に行かなくてよいので「虫」になってしまったのでしょう。


・家にひきこもることは、いちばん面倒がないし、なんの勇気もいらない。それ以外のことをやろうとすると、どうしてもおかしなことになってしまうのだ(カフカ)(p120)


カフカが安全ヘルメットを発明

ゲーテの言葉は、現代社会のプラス思考につながるもので違和感はありませんでした。努力は裏切らない、失敗も自分を成長させてくれる、人の劣る部分は欠点ではなく魅力であるといった考え方は、前向きに生きていくために必要だと思うのです。ゲーテは「あやまちこそが、人を愛すべきものにする」などと言っているのです。


ただ、自然と湧き上がってくる不安に適切に対処できないと、カフカのようになってしまう人も中にはいるのだと思います。他人と自分を比較して、自分を否定してしまいがちな人も多いのです。この本でプラス思考とマイナス思考を並べてみると、その両極端さに笑えてきました。どうせなら、楽しく生きればいいのにと思いつつ、そう思えないんだよね、とも思えるのです。


カフカが落ち込んだときには、旅行や日記が気分を変えるのに役立っていたそうです。参考にしたいと思います。頭木さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・本当につらいときには、ポジティブな言葉はかえってつらさを増してしまい、絶望の言葉のほうが、救いになることもある(p12)


・カフカは生涯を通じて、女性たちの心をひきつける存在だった・・彼自身は自分のそうした影響力を信じなかったが(p189)


・喜んで行い、行ったことを喜べる人は、幸福である(ゲーテ)(p106)


▼引用は、この本からです
「絶望名人カフカ×希望名人ゲーテ: 文豪の名言対決」頭木 弘樹
頭木弘樹、草思社


【私の評価】★★★☆☆(73点)


目次

はじめに  なぜゲーテとカフカなのか?
対話1 前向き×後ろ向き
対話2 強さ×弱さ
対話3 自分はOK×自分はNG
対話4 チャンスをつかむ×チャンスに背を向ける
対話5 行動する×ひきこもる
対話6 生きる喜び×生きづらさ
対話7 仕事にやりがい×仕事が苦痛
対話8 人を動かす×人を怖れる
対話9 恋を楽しむ×恋に苦しむ
対話10 結婚し子供をつくる×生涯独身
対話11 親を超える×親に圧迫される
対話12 病から健康へ×健康から病へ
対話13 ゲーテ¬=カフカ
対話14 ゲーテの絶望×カフカの希望



著者経歴

頭木 弘樹(かしらぎ ひろき)・・・文学紹介者。筑波大学卒業。大学3年の20歳のときに難病になり、13年間の闘病生活を送る。そのときにカフカの言葉が救いとなった経験から、『絶望名人カフカの人生論』を編訳。NHK「ラジオ深夜便」の「絶望名言」のコーナーに出演中。


鉄塔文庫関係書籍

「八日目の蝉」角田 光代
「絶望名人カフカ×希望名人ゲーテ: 文豪の名言対決」頭木 弘樹
「囚人服のメロスたち 関東大震災と二十四時間の解放」坂本 敏夫
「コルシア書店の仲間たち」須賀 敦子
「掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集」ルシア・ベルリン
「春にして君を離れ」アガサ・クリスティー
「目の見えない人は世界をどう見ているのか」伊藤亜紗
「珠玉」開高健
「滅私」羽田 圭介
「へろへろ」鹿子 裕文


この記事が参考になったと思った方は、クリックをお願いいたします。
↓ ↓ ↓ 
 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ


ブログランキングにほんブログ村


無料メルマガ「1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』」(独自配信)
3万人が読んでいる定番書評メルマガ(独自配信)です。「空メール購読」ボタンから空メールを送信してください。「空メール」がうまくいかない人は、「こちら」から登録してください。

<< 前の記事 | 次の記事 >>

この記事が気に入ったらいいね!

この記事が気に入ったらシェアをお願いします

この著者の本


コメントする


同じカテゴリーの書籍: