【書評】「ひとりで食べたい: わたしの自由のための小さな冒険」野村 麻里
2025/05/20公開 更新

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【私の評価】★★★☆☆(78点)
要約と感想レビュー
お一人様のグルメ
テレビで「孤独のグルメ」を見ていて手にした一冊です。この本では、独り身のグルメな著者が、一人での食生活を語ります。日本では、世帯人員が一人の世帯が2115万世帯(一般世帯の38%)と最も多くなっています。お一人様が標準で、大多数になっているということです。
一人前のおせちとか、一人席のラーメン屋とかありますから、マーケッティング的にも、お一人様が主要なターゲット層となっているのでしょう。昔は、温泉では女性のひとり客はとらないと言われていましたが、今では、普通に女性のひとり客が温泉宿で一人夕食を食べていたりします。
著者も自炊しながら、一人の食事を楽しんでいるのです。
私が結局、捨てた炊飯器の代わりに買ったのは、一合炊きの炊飯用土鍋であった(p28)
自炊の楽しみ
著者は料理が得意なので、すべて自炊しています。鮎ご飯を作ると、「夏だ!」という気分になってワクワクするという。
また、個人的に豚の皮が大好きで、梅菜という漬物と皮つき豚バラ肉を醤油味で甘辛く煮込んだ梅菜扣肉(むちょいかうよつ)が好きだという。このように自炊の良い点は、自分で作ったものなので、気楽に食べられるということです。
逆に他人が作ったものには「おいしい」「まずい」と感じて、もし「まずい」とがっかりして、損をしたような気持ちになってしまうという。だから著者は、気楽に自分が好きなものを作り、ひとりで食事をする時、ああ幸せ、とよく感じるというのです。
一汁一菜・・・「味噌汁」「ご飯」「漬物」・・味噌汁の具は何を入れてもいい。肉やベーコン、昨日の残りの唐揚げを入れたっていい(p57)
一人旅のコツ
著者は一人での食事のハードルが下がったので、最近は一人旅を楽しんでいるという。以前は、一人で食事を取るのが苦痛で、一人旅は避けていたのです。
一人旅のコツは、行きたいお店に、事前に予約を入れておくことです。予約を入れておけば、仮に現地で疲れていても、行かなくてはならなくないからです。逆に言えば、一人旅は孤独なので安易に流されるというか、予約していないと、そこら辺の店でいいか、ということになってしまうのでしょう。
著者は、フランスのリヨン料理のマヨネーズについて説明していますが、旅行で出会った食事と食材は、思い出深いものなのです。
ひとりで過ごす旅をしてこなかったのは、食事の問題が大きかった・・しかし、今ではひとりきりで、レストランで食事をするのは決して憂鬱なことではなく、むしろ愉しみとなっている(p162)
一人生活の現実
一人生活では、自分なりの楽しみを作ってることがわかります。著者の場合、近所のスーパー銭湯へ行って、サウナ、水風呂、寝湯をぐるぐると繰り返し、三、四時間くらい滞在するという。
また、行きつけの好きな店がなくならないように定期的に利用するようにもしているという。お金を使うなら好きな店と好きなことにつぎ込むのが、お一人さまのです。
ただ、ぎっくり腰になって、三日ほど身動きできなくなったときは、年をとり、身体が弱っていったときにどうなるんだろうと心細く思ったという。日本のお一人様社会の実相をちょっと覗いたような気持ちになりました。野村さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・コロナの前、私は近所へ自転車で、散歩を兼ねて買い物に行くのが日課だった・・非常事態宣言下、週に一度くらいしか、外で出ないようになったら、たちまち体重が増えた(p51)
・私はいつも水餃子には黒酢、砂糖、醤油、花椒(中国山椒)の粉、唐辛子などを混ぜたタレにつけて食べる(p61)
・ガイドブック「もっとソバ屋で憩う」・・・ソバ好き連(ソ連)メンバーがそれぞれ、力みのない文章で好きな店、行った店について書いている(p130)
▼引用は、この本からです
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野村 麻里(著)、平凡社
【私の評価】★★★☆☆(78点)
目次
ひとりで食べたい
豚の皮はおいしい
一合土鍋
計らない人生
猫のごはん 41
新型コロナ時代の献立表
三三個の真面目な餃子
そっと一蘭
町に出よ、 中華を食べよう
みんなの立ち食いそば
コンビニエンス・ストア考
森茉莉『私の美の世界』
ウー・ウェン『ウー・ウェンの100gで作る北京小麦粉料理』
『ゆるキャン△』
杉浦日向子とソ連『もっとソバ屋で憩う』
M・F・K・フィッシャー『食の美学』
久住昌之 谷口ジロー『孤独のグルメ』
古波蔵保好『ステーキの焼き加減』
英国ひとり旅
ひとりご飯修行のススメ
ひとり温泉の愉しみ
作らない人
新型コロナとぎっくり腰
ひとりで食べる
著者経歴
野村麻里(のむら まり)・・・1965年東京生まれ。1991年よりフリーライターとして「アサヒグラフ」「サライ」「東京人」などで活動。1996~2002年、香港在住。帰国後は執筆、編集、翻訳を手がける
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