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「香港風味: 懐かしの西多士(フレンチトースト) 」野村 麻里

2022/10/10公開 更新
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「香港風味: 懐かしの西多士(フレンチトースト) 」野村 麻里


【私の評価】★★★☆☆(79点)


要約と感想レビュー

 著者はゲーム会社の社員として、香港で1996年から6年半過ごしました。「なぜ香港に住んでいるの?」という質問には「食べ物が美味しいから」と答えていたという。住んでみなければわからないことがあるように、食べてみなければ美味しいものはわからないのです。


 著者が最初に感動したのは香港移住前に食べた小籠包でしたが、香港に住んでみても同じ小籠包に出会えなかったというのです。よくよく調べてみると、最初に食べたのは「蟹粉小籠包」だったのです。具に上海蟹のミソと身を使った「蟹粉小籠包」は価格も味も別格だったということです。


・私が香港で最初に感激した料理は、飲茶でも雲呑麺(わんたんみん)でもなく小籠包(しょうろんぽう)だった(p7)


 香港の料理といえば、飲茶とマンゴープリン、そして雲呑麺(わんたんみん)でしょう。しかし、著者の教えてくれる料理は、地元の人が食べている炸子鶏(じゃーちーがい)(鶏の丸揚げ)や、排骨ちゅん飯(ばいくわっちゃんふぁん)(スペアリブのせ蒸しごはん)、蒸牛肉球(じんあうよっかう)(牛のひき肉の蒸し団子)とググッてみないとわからないものばかりなのです。


 その他にも、肉、魚、野菜、乾物などなんでも煮込んだスープ「老火湯」(ろうふぉーとん)。目玉焼きが乗った「叉焼(チャーシュウ)」も美味しそうではないですか!ちなみに日本のチャーシュウは煮豚です。



 この本を読むと、香港人の食へのこだわりがよくわかります。冷凍の魚はどうしても固くなってしまいますが、香港人には我慢できないという。こうした香港人の職へのこだわりが、香港の食のレベルの高さの源泉のように感じました。
 

・彼らに、僕たち香港人の食に対するメンタリティはわからないんだよ(p190)


 1997年に香港の中国の返還が合意され、50年間は一国二制度のもと高度な自治が約束されていまいたが、それは反故にされました。当時から、香港人の多くは共産党に対して不信感を持っており英国のほうが中国よりましだと多くの人々が思っていたと著者は記しています。同じ中国人だからこそ中国共産党の本質を理解していたのでしょう。


 地元の美味しいものを教えてくれるこの本を片手に持ちながら、香港を旅行したいと思わせてくれるのですが、もう自由のない香港にあえて行くことはないでしょう。残念なことです。野村さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・香港では旧暦8月15日の中秋節(ちょんちゃうちつ)には月餅(ゆっぺん)を食べるのが慣わしだ(p20)


・香港人の「スープ好き」・・前菜やスープか選べるとしたら、香港人なら十中八九、「スープ」を頼む(p38)


・日本と香港では豆乳の味が違う。日本の豆乳は大豆の味が強い。一方、香港の豆乳はさっぱりしていて甘く・・(p144)


・飲茶の時、人に茶を注がれたら、拳の中指辺りでテーブルをトントンと二、三回、叩いてお礼の気持ちを表す(p212)


・香港ではトイレの水は「鹹水(はむそい)」といい、海水を処理しているものを使っていると聞く・・・そのせいだろうか、香港のトイレはすぐに壊れる(p32)


・1995年に行われた調査によると、自分は仏教徒と答えた人は全体の11.6%。一番多かった答えが無宗教で60.2%。道教は15.3%、キリスト教は12.9%だ(p48)


▼引用は、この本からです
「香港風味: 懐かしの西多士(フレンチトースト) 」野村 麻里
野村 麻里 、平凡社


【私の評価】★★★☆☆(79点)


目次

はじまりは小篭包
蛋のはなし
アリスのスープ
ベジタリアンの来訪
懐かしの西多士
雲呑麺と南乳
黒草羊の冒険
叉燒の愉しみ
師父の息子
貧乏人のナイトクラブ
香港的鍋世界
大墺の恋人
長生きの秘訣と市場
豆腐と街坊食堂
レトロ食堂の午後
香港麺事情
炸子鶏の夜
一百米養一百人(人はそれぞれ)
愛と憎しみのスティーム・フィッシュ
病気の時に食べるもの
ジビエの周辺
飲茶の湯気
別れのカレー麺



著者経歴

 野村麻里(のむら まり)・・・1965年東京生まれ。91年よりフリーライターとして「アサヒグラフ」「サライ」「東京人」などで活動。1996~2002年、香港在住。帰国後は執筆、編集、翻訳を手がける


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