「よくがんばりました。」喜多川 泰
2022/10/11公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(87点)
要約と感想レビュー
父は本貸家
中学校教師の主人公は、授業の上手い教師として有名でした。立場上、若手の先生を指導しなければらなくなってしまうのです。最近のオンライン授業は、誰が見ているかわからないという点で授業監視システムに近く、ストレスを感じる先生が多く、主人公も悩んでいたのです。
そんな中、自分の父が亡くなったという連絡が入りました。母が自分を連れて家出のように父と離婚してから、父とは一切連絡を取っていなかったので、身寄りのない父の身辺整理のため、地元に戻ることにしたのです。
地元に帰ってわかったのは、父が昔とまったく同じ生活を続けていたということ。本貸屋も続けていたのです。そして、父から本を借りることで立ち直ることができた人もいるらしい。自分を捨てた父、連絡もよこさなかった父は、何を思いながら生きていたのか。父と同じくらいの年令になった主人公に父の生きざまが見えてきたのです。
・『この本読め』って、本を渡してくれたそうです。それを読み終えるとまた『次はこれ読め』って。それを続けてくれたおかげで、彼は立ち直ることができた(p147)
誰もが苦労のなかで生きている
この本で興味深いのは、誰もが苦労しているということでしょう。転勤に合わせて転校ばかりしている中学生。モンスターペアレントに焦る若手の先生。夫を交通事故で亡くして立ち直れない妻。妻が子どもを連れて出ていかれた夫。誰もが違う環境、違う能力、違う運命の中で必死に生きて落ち込んで、その中でも楽しみ、日々の生活を生きているのです。
そうした人にも、自分にも「よくがんばりました。」と褒めてあげてもいいんじゃないか、というのが、この本のタイトルなのです。誰もがその人にしかわからない苦難や苦労のなかを生きているのです。
・どうやら捨てるに捨てられない執着があるようですが・・・無理に捨てようとする前に、言ってあげるべき言葉は、『よくがんばったね』、だと思いますよ(p230)
人生には祭りが必要だ
著者が愛媛県西条市出身であり、だんじり神輿の西条祭りを紹介しながら「人生には祭りが必要だ」という言葉が印象的でした。また、電車のなかで本を読む主人公にも、「人生には読書が必要だ」というメッセージを感じました。「面白きこともなき世をおもしろく」と同じ意味でしょうか。
悩める社会人に読んでいただきたい一冊になっています。喜多川さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・よく言っていたの。『私ほど運がいい人はいない』って・・・私は恥ずかしくなったの。自分が世界で一番不幸なつもりになって・・(p154)
・ここは貸本屋ですか・・・私は本によって命を救われましたから。きっとここで借りられた本もたくさんの命を救っていると思いますよ(p227)
・不器用な男・・・特に自分の子どもに対してどう振る舞っていいのか、結局いつまでもわからなかったのだ(p189)
【私の評価】★★★★☆(87点)
目次
春の風のようなひかり 1978
パノプティコン 2022
湊哲治 2022
離郷 1984
故郷 2022
祭りの記憶
御旅所 1982
真鍋陽子 2022
ひかりに照らされて
宮出し 2022
人の凄み 2022
御旅所 2022
同行二人 1984on
著者経歴
喜多川 泰(きたがわ やすし)・・・1970年生まれ。愛媛県西条市出身。2005年から作家としての活動を開始。『賢者の書』(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)にてデビュー。2010年に出版された『「また、必ず会おう」と誰もが言った。』(小社刊)は13万部を突破。2013年には映画化され、全国一斉ロードショーとなる。また同作品は2018年に舞台化された。精力的に作品を発表し、これまでの全18作品の国内累計100万部を超える。「喜多川ワールド」と呼ばれる。台湾・韓国・中国・ベトナムでも翻訳出版されている。
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