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「"正しい"を疑え」真山 仁

2023/10/04公開 更新
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「正しいを疑え」真山 仁


【私の評価】★★★☆☆(78点)


要約と感想レビュー

常識を疑え

「ハゲタカ」「ベイジン」「マグマ」といったビジネス小説を書いてきた真山さんは、世の中の常識を疑い、その裏にある現実を描きたいと考えてきたという。だから、座右の銘を求められたときは、デビューして七年間は、「常識を疑え」と書いていました。東日本大震災の起きた2011年からは、「正しさを疑え」と書くようになったというのです。


もともと著者は、小学校の頃から、人の提案を素直に聞くタイプではなく、いつも人と違うことを言うやつだとクラスの中で見られていました。多くの人が「正しい」とすることは正しいのか。例えば、芸能人の不倫は良いことではありませんが、「正しい」ことを基準にSNSで不倫を個人攻撃することが正しいことなのか、と著者は問いかけます。著者は小説の中でも「正しい」とは何なのか、ということを説い続けているのです。


会ったこともない人をSNSなどで激しく攻撃する例が、後を絶ちません。典型的なのは、芸能人の不倫騒動でしょうか(p26)

国によって価値観が違う

現実社会では、国によって価値観が違います。例えば、中国人の中には、だますやつは「賢い」、だまされるやつは「バカ」と考えている人がいます。欧米でも、そのように考える人もいるのです。国家紛争であれば、一方から見れば侵略者ですが、その反対から見れば自国民を保護しているということになります。
 

また、世の中には、ウソをつく人もいれば、都合の悪いことを隠して、自分の目指す方向に読者を誘導しようとする人もいます。国家として都合の良い歴史解釈を作るのは、当然のように行われているのです。こうした多くの「正しい」とされる情報があふれる中で、まず「正しい」を疑うことからはじめたいというのが著者の思いなのだと思いました。


発信者は、ウソをつくのではなく、都合の悪い点は隠し自分の主張に有利な事実を積み上げる・・あえて発信していない事実を探す(p115)

推理小説を読もう

著者の提案は、アガサ・クリスティのような推理小説を読むことです。推理小説はウソが書いてあります。推理小説を読むことで、ウソに満ちている世の中の常識を疑う訓練となるというのです。新型コロナへの対策はどうあるべきだったのか、日本のエネルギーはどう確保するのか、自衛隊は必要なのか、拉致被害者は約束どおり北朝鮮に返すべきだったのか、など「正しい」を考えるべき常識は数多くあります。


私たちは、今生きている社会の中で、「曇りなき眼(まなこ)で見定める」ことが求められているのだと思いました。そのために真山さんの小説が、役に立つのでしょう。真山さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・自粛警察・・国の自粛要請通りに営業しているのに厳しく非難された、という例がいくつもありました(p8)


・日本政府は外交下手・・交渉というのは、主張を譲りたくない者同士が、自分に有利な結果を出すために行う戦いです(p31)


・相手を理解することは、同意ではない(p71)


・「日本の平和のために、自衛隊は必要です」と言われたとしたら、どんな印象を持ちますか(p97)


▼引用は、この本からです
「正しいを疑え」真山 仁
真山 仁、岩波書店


【私の評価】★★★☆☆(78点)


目次

1 世の中は、"正しい"に満ちている
2 SNSに影響されすぎてない?
3 不安は、"正しい"を求める
4 "正しい"の正体を暴く
5 コミュニケーション苦手解消法
6 疑う力という武器を持て
7 情報には意図がある
8 小説があなたを鍛える
9 なぜ、クリスティーなのか?
10 歪んだ"正しい"にすがるな



著者経歴

真山仁(まやま じん)・・・1962年大阪府生まれ。同志社大学法学部政治学科卒。新聞記者。フリーライターを経て、2004年、企業買収の壮絶な舞台裏を描いた『ハゲタカ』でデビュー


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