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「ベロニカは死ぬことにした」パウロ・コエーリョ

2023/10/05公開 更新
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「ベロニカは死ぬことにした」パウロ・コエーリョ


【私の評価】★★★★☆(81点)


要約と感想レビュー

ベロニカの余命は1週間

この物語は、睡眠薬を大量に飲んで自殺しようとした女性ベロニカからはじまります。彼女は図書館で働き、普通に生活していました。彼女はなぜ自殺したいと思ったのでしょうか。彼女はピアノが好きで、音楽家の道を進みたかったのに両親からピアノでは食べていくことはできないと言われ、大学へ進学したのです。


彼女は自分のやりたいことをやらず、ただ両親から褒められたいから、そのためだけに生きていたわけです。


ベロニカが自殺をしようと睡眠薬を飲んで、目を覚めると、そこは精神病院でした。そして、精神科の先生から心臓の一部が壊死しているために、余命1週間だろうと告げられるのです。彼女は病院の中で余命1週間を、看護婦や同じ病人と生活することになり、本物の精神病患者や、ただ精神病のふりをしている人たちと、知り合うことになるのです。


彼女は自分の多くの欲求を、両親が子供の頃のように自分を愛してほしいために捨ててきた(p58)

精神病患者とは

興味深いのは、舞台がただの病院ではなく精神病院であるということでしょう。実はパウロ・コエーリョ自身がブラジルで精神病院に入ったことがあるのです。著者のパウロ・コエーリョは、大した理由もないまま、彼を入院させた医者こそが、本当に精神異常だと考えました。


そもそも精神病院にいる患者は、本物の精神病患者ばかりではありません。例えば、うつ病や精神病患者は、戦争や超インフレなど社会が大混乱な時期には減少します。精神病とは、安定した生活をしている人だけが許される贅沢とも考えられるのです。


また周囲の人と違うことをやろうとすると、周囲の人は「こいつは狂っている」と言い始めます。でも、多くの人は本当はやりたいのに、言えないだけの人が多いのではないか。例えば、全ての人が、一度は乱交してみたいと思っているのではないか。自分はどうなんだろう?やりたいことをやっている人は、狂っているんだろうかなどと、精神病院の先生は考えるのです。


人は狂うという贅沢を、そうできる立場にいる時だけ許すものだ(p94)

大切なのは自分に残された時間を楽しむこと

著者はブラジル出身なので、ラテン系の国では誰でも自分の好きなことをしていると思っていたら、日本と同じようにそう自由でもないんだなと感じました。余命1週間を生きる中で、ベロニカは生きたいと思い始めました。常識に従うのでなく、自分の人生、欲望を発見して、冒険してみるということです。一番大切なのは、自分に残された時間を楽しむことなのです。その後のオチは本書を読んでください。


物語の舞台となっているのは、東欧スロベニアのリュブリャナ市です。私は仕事でスロベニアを訪れたことがあったので、頭の中で街をイメージしながら読むことができました。コエーリョさん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・友人たちの間で流行っていた諺の信憑性について考えてみた。「この世界で起きていることに、偶然はない」(p8)


・自分がすぐに死ぬことは知っていたけど、どうして怖がる必要があるのか?・・一番大切な計画は、自分に残された日々や時間を楽しむことだ。今までにやったこともないようなことをして(p124)


▼引用は、この本からです
「ベロニカは死ぬことにした」パウロ・コエーリョ
パウロ・コエーリョ、角川書店


【私の評価】★★★★☆(81点)



著者経歴

パウロ・コエーリョ(Paulo Coelho)・・・1947年ブラジル、リオデジャネイロ生まれ。世界中を旅した後に音楽とジャーナリズムの世界へ入る。1987年、初の著書『星の巡礼』(角川ソフィア文庫)を出版して注目を集め、1988年に発表した『アルケミスト』(角川ソフィア文庫)が世界中で大ベストセラーになる。現在は世界を旅しながら精力的に執筆活動をつづけている


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